恋を求めて

日陰

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プロローグ

恋したい

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「いってきまーす」

十一月上旬。彼女___黒川くろかわ  椎名しいなはいつも通り、六時に起床し、朝ごはんを食べ、身支度を整えて、自分が通っている中学校に向かうため、家を出た。

椎名は中学三年生。三年生用の下駄箱が置いてある場所に向かう。下駄箱には、今月三度目になる手紙が入っていた。内容は昼休み体育館裏に来てほしい、との事だった。
大方、告白でもされるのだろう。
めんどくさいので、すっぽかしてやろうかと考えたが、流石に相手に失礼だと思い行く事にした。

そして時は周り、昼休み。体育館裏に行くと既に手紙を書いてくれた相手だと思われる男子生徒が緊張した面持ちで待っていた。

「あなたが手紙をくれたの?」

「あ、う、うん!………あ、あ、あの、さ!ぼ、ぼぼ僕と付き合ってください!!」

椎名は疑問に思った。何故、面積もないのに告白をしてきたのか。告白するなら、するで、その前にある程度関係を作るべきではないのか。

「ごめんなさい。」

勿論、椎名の答えはNOである。知らない人に告白されたのだ。断るのは当たり前だろう。

「あー、やっぱり、そうだよね……。あの、聞いてくれてありがとう。じゃ、あ、僕、もう行くね……」

椎名は思う。自分も彼氏が欲しい、と。
なら、さっきの男と付き合えばよかったのに、と思う人もいるかもしれない。
だが、違うのだ。椎名は恋人が欲しい訳ではなく、『恋』が出来る恋人が欲しいのだ。 
そう、少女漫画のような『恋』が。例えば、漫画の中では主人公が、恋の相手である男性と接し、『ドキッ』などの表現が描かれていると思う。
まさにそれ。椎名は『ドキッ』としたいのだ。勿論、『ドキッ』とする為に努力はした。
この間は、そこそこイケメンの男友達に壁ドンをしてもらった。してもらったは良いが、まったく『ドキッ』としなかった。むしろ、顔に相手の息がかかり、気持ち悪いとさえ思ったほどだ。

いつまでも此処にいるのは寒いので椎名は自分の教室に帰った。教室の中は暖房が惜しみなく使われていて暖かい。

「しーなー!ねぇねぇ、どうだった!?どうだった!?」

この、自分の近くでギャーギャー騒いでいるのは椎名の数少ない友人の一人、長谷川はせがわ  まい。椎名と舞はほとんどの行動を共にしており、親友と言っても過言ではない。
彼女が自分に何を聞いているのか一瞬分からなかった椎名は、少し考え、先程の告白の事か、と思った。

「………あぁ、さっきのか。」

「さっきのかって、シーナ興味無さすぎぃ!で、どうだったの!?告白だった!?OKした!?」

「告白だったよ。勿論断った。」

「えぇ~~また断ったの~?!学校一の美女とか言われてる癖に!!ずるい!シーナずるいぃぃ!」

そしてまた騒ぎ出す友人。流石に五月蝿いと思ったので、頭にチョップを御見舞してやった。

「いだっ!」

「五月蝿い」

「いや、チョップする前に先に言おう!?何でチョップが先なのかな!?」

「めんご」

謝ってやったのに、絶対思ってないよね!?などと失礼極まりない事をいつまでもブツブツ言っている友人を置いて、椎名は自分の席に座った。

「シーナは進路決めた?」

いつの間にこちらに来たのか。目の前には舞が立っていた。

「んーん、決めてない。舞は?決めた?」

「もっちろーん!私は神楽坂高校に行く!」

舞は、椎名の目の前で仁王立ちし、いいだろー!的なドヤ顔で立っていた。
神楽坂高校はそこそこ有名な高校だ。ほかの高校と違い、珍しいところは寮生である事と、中学校から大学までエスカレーター式の高校だということころだ。
そして椎名は疑問に思った。神楽坂高校は男子校だったような、と。

「神楽坂って男子校じゃないの?」

「実はねー神楽坂は来年から共学になるの!そこで私は彼氏作る!チヤホヤされたい!!」

人間の欲望丸出しな友人に、椎名は呆れを通り越して感心さえ覚えた。
そもそも、椎名と同等の美少女である舞が何故彼氏が出来ないのか、いや、何故彼氏がいないのか、それは舞の性格故である。舞は基本、テンションが高く、何事にも楽観的だ。その為歴代彼氏達からは君のテンションについていけない、と言われ振られるのだ。
椎名は少しでも落ち着きを持てば彼氏と長く続くのでは?と思ったが、舞がそれは無理、と断言していたので諦めた。
椎名は考えた。その、高校には男子が沢山いる。ならば、私が惚れるような、ドキッとさせてくれるような男子が現れるのでは?と。

「私もそこに行く。」

「ほんと!?やったー!!またシーナと一緒にいられる!………ん?待って!やっぱ来ないで!」

「え、なんで?」

椎名は舞の言葉にショックを受けた。椎名は舞の扱いに関して極めて雑だが、それは信頼の裏返し。こんな扱いをしても自分の友達でいてくれると思うからこそ出来る行為だ。
もしかしたら、それが嫌だったのかもしれない。そう考えた椎名は咄嗟に謝ろうとした。

「ご、ごめ___」

「だって、椎名が来たら、男子全員が椎名好きになっちゃうでしょ!そんなんじゃ私彼氏出来ないじゃん!!って、なんか言った?」

結構、どうでも良かった。

「いでっ!ちょ、何故デコピン!!」

「あ、ごめん、ついイラッとして、ね?あ、高校では私と一緒にいたら男子に積極的に話しかけてもらえると思う。」

「よっし、シーナ、二人で一緒の高校行こーね!!私らズッ友!」

チョロい。
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