三層世界カランコーレル~目覚めたら隣にいた女の子は神仙なのか魔族なのか?~

NO*NO(ののはな)

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嘘からの実

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「あー、うん。それは嘘だ。弟ではない」

俊英シュンエイは、とりあえず事実を言った。

「え…?では、あの少年は誰なのですか?それに、見張られていたはずなのにいつの間にあのアパートに入ったのですか?」

秀清シュウシンはたたみ掛けるように言いつのった。

俊英シュンエイは迷った。
雲嵐ウンランの動向が掴めないことも迷いを深めた。

沈黙を貫くか、知っている全てを共有するか。

迷った時はどうするべきか。

「俺は正直、雲嵐ウンランと腹を割って話したことがある訳じゃないし、今だってどこで何をしているか分からん。でも師匠が曾孫を信頼していることは分かるし、俺は師匠を信頼している。明確な敵が判明した今、俺は秀清シュウシンのことを信頼したい。お前がそれに応える気が無いなら俺は話さない。施設長にすがるなり、季明リメイの元に戻るなり好きにすればいい」

「………施設長には二度捨てられました。命を宿した時と今と。私は私が自分の足で立って歩くために真実が知りたいです。信頼に応えられるかどうかは分かりませんが、裏切ることはしません。それは誓います」

俊英シュンエイ秀清シュウシンの瞳をじっと見つめた。
チラッと師匠を見やると、師匠は顎で促した。

「あの子は朱里シュリという名で、女の子だ。“渡り”に乗じてアパートに入った」

「え…っと、それは…神仙だということですか?なぜ人間界に留まっているのですか?」

「厳密には神仙ではないそうだ。魔界もおかしくなっているが、神仙界も尋常ではないらしい。ことの発端は宇然ユーランなんだが…長いぞ、この話は」

俊英シュンエイは、自分の知っていることを話した。

宇然ユーランの生い立ちからの葛藤。
その果てに空を飛べるようになって産場を抜けて神仙界へ行き、万里バンリと出会い恋に落ちたこと。
万里バンリを人間界に渡らせることが嫌で、連れて逃げた時に傷を負って雲嵐ウンランに助けられたこと。
普通ではない状態ではあったが、朱里シュリが神仙界の産場で産まれたこと。
だが、神仙ではなかったこと。

朱里シュリ宇然ユーラン万里バンリの子で、神仙でも魔族でもないのだと、朱里シュリの中に入り込んでいる神仙が言っていた。現状の神仙界が調わないのは万里バンリが幸せではないからで、それを何とかするために来たのだ、と」

「なるほど…“渡り”でしたか。あれは実態が分からないですから…。では季明リメイ様が一龍イーロン様と朱里シュリ様を魔界へ連れ去ったのは結果的には良かったのですね」

「その三人は魔界へは行っていない。どこに居るのか分からん」

「え?」

白英ハクエイにも雲嵐ウンランにも一龍イーロンにも連絡ツールは付けてあったんだが、白英ハクエイしか居場所が分からない」

俊英シュンエイが言葉を切ると、師匠が口を挟んだ。

「魔界にも人間界にもいないのなら、産場か神仙界だろうな。わしの知り合いに、酔っ払った人間の女性の中に入れるという変わった神仙がいたんだが、どうやら其奴のようだな」

「仲良くなった魔族とか半魔がいた話もしてましたね。それが師匠だったとは。しかし、20年後の“渡り”まで戻れないと言っていましたが?」

「イレギュラーだろう。思うようにはいかんものだ。雲嵐ウンランは、中心部ということは多分宇然ユーランのいる塔に向かっているだろうな。宇然ユーランたちを匿っていた時に何らかの約束事でもあったのかもしれん。こちらはどう動くつもりだ?俊英シュンエイ

「当てというか、目印は分かっているので、魔界に潜入している半魔を探ろうと思います。秀清シュウシンと共に。彼らは谷底には長居出来ませんから、施設長とは別で動いていると思います」

「それがいいだろうな。わしは谷底に行く」

「ありがとうございます。白英ハクエイも谷底に向かっているようですので、よろしくお願いします」

「それでは私は魔界の塔に向かいます。雲嵐ウンランは母親がクォーターなので半魔よりも魔族よりだし、いろんな道具も仕込んでありますが…心配なので。爺さんとしてはね」

雲嵐ウンランの祖父が苦笑いしながら言うと、曾祖父である師匠は微笑んだ。




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