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山の記憶を持つ者
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目を覚ました一龍は様子がおかしかった。
「は……ここは…まさか?いや、そうだ、神仙界だ!!…?…なんだ?この手は…」
「大きいわよね、あなたの息子の手は」
「え…?」
目が覚めた一龍の中には王龍の精神が入っていた。
「あなた、一龍の記憶と一緒に大事な物も封印したでしょう?わたしの瞳を見て記憶は戻ったけれど、魔族としての大事な何かが目覚めないままなのよ。だからこんなに成長してしまっているの」
一龍は自分の手をジッと見てから、肩を触り、太ももを擦った。
そしてしばらく考え込んでから口を開いた。
「王妃が亡くなったのは一龍のせいではないと私は知っていた。王妃の命の火が消える時に結界が破れるようにしてあったのだから。魔王でなければ…こんな瞳でさえなければ…そう思った私は一龍から『滅』の力を滅した。これは封印ではない。それでも瞳に光は戻らなかった。私は息子の命を奪えず、かと言ってそのままにも出来ず、記憶を封印した」
「そして自分だけ逃げたのね?宇然は一龍を放っておけなくて人間界に預けたのよ。自分の二の舞にはさせたくなくて」
「知っている。私は私の体を滅して精神だけになったから何でも知ることが出来たし何処へでも行けた。それから私はただただ考え続けている。命とは何処から来て何処へ行くのか。愛とは何だろうかと。…私が生まれた意味はあるのか。私が妻を愛したのは間違いだったのか…」
「傍迷惑な精神論者ね。あなた考え過ぎなのよ。こんな何もかもめちゃくちゃにするぐらいなら全部捨てれば良かったのよ。結局放り出してるんだし。俊英さんを産場の底に引きずり込んだのはなぜ?」
「それは違う!私を追いかけていて落ちたんだ。助けようとしたけど私には体が無くて…冥いところだった。でもなぜか落ち着けるところで、私は俊英を見守りながらその場所で落ち着くことにしたんだ。地面にはいくつも竜巻の跡みたいなものがあったから、定期的に渦を巻いているのが分かった。その竜巻が起こるのを待ちながら、私を探す俊英を見ていたら…そんな資格は無いのに悲しくなった。私のことなど忘れてほしかった」
「ホントに勝手ね。あなたが納得させなかったからでしょう?自己完結していないで話ってものをしなさいよ。今がチャンスなんだからみんな吐き出しなさい」
「春鈴?…今の言い方は妻に似ていた…。私は彼女を不幸にしただけだった。大事にしたかったのに。どうすれば良かったんだ?」
「一龍は、母は綺麗で優しくていつも笑っていたと言っていたわ。あなた、大事にする仕方を間違えたのよ。『滅』も黒い瞳の意味も全部間違えてる」
呆然とやり取りを聞いていた季明は、慌てて口を挟んだ。
「あなたは誰ですか?何を知っているんですか?」
「言ったでしょう。わたしは魔王と神仙の娘。まだその時は魔王ではなかったけど一族だから同等ね。魔王と神仙が神仙界から山の気を貫いて落ちた時に山がわたしを身籠もったのよ。そして神仙界の産場に浮かばずに、山裾の産場の底で産まれたの。魔界の羊水に包まれて、神仙の卵を持って。だから男になる素で満ちた羊水の中にいても女のままだった。わたしは半神半魔で、山の記憶を持つ者よ」
「は……ここは…まさか?いや、そうだ、神仙界だ!!…?…なんだ?この手は…」
「大きいわよね、あなたの息子の手は」
「え…?」
目が覚めた一龍の中には王龍の精神が入っていた。
「あなた、一龍の記憶と一緒に大事な物も封印したでしょう?わたしの瞳を見て記憶は戻ったけれど、魔族としての大事な何かが目覚めないままなのよ。だからこんなに成長してしまっているの」
一龍は自分の手をジッと見てから、肩を触り、太ももを擦った。
そしてしばらく考え込んでから口を開いた。
「王妃が亡くなったのは一龍のせいではないと私は知っていた。王妃の命の火が消える時に結界が破れるようにしてあったのだから。魔王でなければ…こんな瞳でさえなければ…そう思った私は一龍から『滅』の力を滅した。これは封印ではない。それでも瞳に光は戻らなかった。私は息子の命を奪えず、かと言ってそのままにも出来ず、記憶を封印した」
「そして自分だけ逃げたのね?宇然は一龍を放っておけなくて人間界に預けたのよ。自分の二の舞にはさせたくなくて」
「知っている。私は私の体を滅して精神だけになったから何でも知ることが出来たし何処へでも行けた。それから私はただただ考え続けている。命とは何処から来て何処へ行くのか。愛とは何だろうかと。…私が生まれた意味はあるのか。私が妻を愛したのは間違いだったのか…」
「傍迷惑な精神論者ね。あなた考え過ぎなのよ。こんな何もかもめちゃくちゃにするぐらいなら全部捨てれば良かったのよ。結局放り出してるんだし。俊英さんを産場の底に引きずり込んだのはなぜ?」
「それは違う!私を追いかけていて落ちたんだ。助けようとしたけど私には体が無くて…冥いところだった。でもなぜか落ち着けるところで、私は俊英を見守りながらその場所で落ち着くことにしたんだ。地面にはいくつも竜巻の跡みたいなものがあったから、定期的に渦を巻いているのが分かった。その竜巻が起こるのを待ちながら、私を探す俊英を見ていたら…そんな資格は無いのに悲しくなった。私のことなど忘れてほしかった」
「ホントに勝手ね。あなたが納得させなかったからでしょう?自己完結していないで話ってものをしなさいよ。今がチャンスなんだからみんな吐き出しなさい」
「春鈴?…今の言い方は妻に似ていた…。私は彼女を不幸にしただけだった。大事にしたかったのに。どうすれば良かったんだ?」
「一龍は、母は綺麗で優しくていつも笑っていたと言っていたわ。あなた、大事にする仕方を間違えたのよ。『滅』も黒い瞳の意味も全部間違えてる」
呆然とやり取りを聞いていた季明は、慌てて口を挟んだ。
「あなたは誰ですか?何を知っているんですか?」
「言ったでしょう。わたしは魔王と神仙の娘。まだその時は魔王ではなかったけど一族だから同等ね。魔王と神仙が神仙界から山の気を貫いて落ちた時に山がわたしを身籠もったのよ。そして神仙界の産場に浮かばずに、山裾の産場の底で産まれたの。魔界の羊水に包まれて、神仙の卵を持って。だから男になる素で満ちた羊水の中にいても女のままだった。わたしは半神半魔で、山の記憶を持つ者よ」
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