ギフテッド・サークル

HAKOdateあんこ

文字の大きさ
4 / 4

第4話 コンビニ弁当

しおりを挟む
「……駒込くん!………駒込くん!!」




優しくて柔らかい、声が聞こえた。


「駒込くん!!!!」
目を開けると、涙ぐんでいる上植さんの顔がそこにはあった。どうやら、僕は彼女の膝の上で寝ていたようだ。

「よかった……目が覚めたんだね」
「ごめん…。」
「今はそのまま安静でいていいからね」
「ありがとう…。」

そうだ、僕は柳田と模擬訓練をしていたんだった。あれ、柳田はどこいったんだ、居ないな。それにどうしてこうなったんだっけ…。

僕は意識を呼び起こして、記憶を探った。


そうか、あのとき…柳田が…。

柳田の個聖は『倍速(セカンドリー)』だ。彼自身の身体動作の速度と彼自身が投擲したものについて、速度を2倍にすることができる。でも、身体の方は速度が上がってなかったように見えた。

「たぶんね…」
上植さんが口を開いた。

「たぶん、殴る動作には『倍速』を使わなかったんだと思うよ。握った拳の中に、予めボタンを仕込んでおいて、それを指で弾いた時に速度を倍化したんじゃないかな。そのボタンが駒込くんの腹部に入ったんだと思うよ」

「そうか…。また、上植さん、個聖を使って過去の記憶を見てくれたんだね、ごめん…。」
また、彼女に使わせてしまった、また負担をかけてしまった。本当に不甲斐ない。

「ううん、いいんだよ!それより、駒込くんが無事でよかった!」
そういって、彼女は僕の頬に手を添えた。

「もう、夕方か…。」

しばらくして、動けるようになった僕は上植さんと一緒に夜ご飯を買いに行くことにした。
「そういえば、柳田は帰った?」
「うん!駒込くんが倒れたあと、部室を出ていったよ。また明日たなって言い残して」

そうか。


「夕ご飯どうしようか?上植さん。」
「うーん、お弁当買って、部室で食べよう!」
「そうだな。」

大学の西門を抜け、街頭がチラチラと灯る道を2人で歩いている。近くのコンビニでいいか。

僕らは、大学からほど近いコンビニに入った。

「うーん、タルタル唐揚げ弁当にしようかな。」
「駒込くん、本当に唐揚げ好きなんだね!ふふっ」
「うん?あっそういえば今日の昼もだったな。」
思い出した。

「私、お菓子とアイスの方みてくる!」
「おう。」
上植さんは、デザートから選ぶ派なんだな。


僕は棚に並んである、タルタル唐揚げ弁当を手に取った。残り、最後の一つだ。

と同時に僕の弁当に伸ばす手があった。
「それ、欲しい、ワタシ」
「えっ?」

僕はその手の先を見ると、見知らぬ女の子だった。

「このお弁当、食べたいの?」
「うん」
そういって彼女はキラキラした目で僕を見てきた。断れそうにないな。しょうがない、譲ってあげよう。

「いいよ、このお弁当、君が食べなよ。」
「やった、サンキュウ」
彼女はさらに目を輝かせていた。そんなに喜ばなくても…。

「あなた、名前は、何」
唐突になんなんだ、この子は。意図が全く読めない。
「駒込疾風だよ。」

「そうか。それなら、ハヤテだな、今度あったらよろしく」
お、おう。いきなり下の呼びって…。

「ちなみに、ワタシは、深澤ユアだ。ユアって呼んでいい」

いや、初対面で呼べるか。
「深澤さん、でいいかな。」
「…それで、いい。また、会ったらよろしく」
そういって、レジで会計を済ませ、そそくさと出ていった。

「お待たせ!」
上植さんが、戻ってきた。カゴにチョコアイスとキャラメルが入っていた。

「帰ろうか。」
「うん!」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。 綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。 だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。 中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。 とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。 高嶺の花。 そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。 だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。 しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。 それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。 他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。 存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。 両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。 拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。 そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。 それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。 イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。 付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。

痩せたがりの姫言(ひめごと)

エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。 姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。 だから「姫言」と書いてひめごと。 別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。 語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...