月の聖女の恋愛日記

らら

文字の大きさ
上 下
2 / 3

1日目 役職発表!

しおりを挟む


耳鳴りと頭痛が酷い。
頭を抑えながら、ゆっくりと体を起こして重たい瞼を開ける。

「こ、ここは…」

そう、そこは、どう考えたって、どう見たって、ここは何処かのお城の中。

真っ白い壁、床。天井はガラス張りで光が全体に行き渡るようにしてある。
そして、豪華な装飾、端っこの方に居てきちんとは見えないが、兵士達が30人程度潜んでいそうだ。
私の周りには、投げ捨てられたようにクラスメイト達が四方八方へ飛び散っている。その様子を見下ろすように、見ているのは、立派な服を着て黄金の椅子座っている王様的存在とその王子様らしき人。

私がじっくり、ここを観察していると、クラスメイト達も徐々に目を覚ましていった。

「みなさま。ようこそ【異界 モルビア】に」
「そして、ここは【ミヒィヤ王国】私はミヒィヤ王国の第1王子 ルイネ」
「皆様は、我々ミヒィヤ王国の勇者として召喚されました。どうか、モルビアの危機をお救い下さいませ」

王子様が淡々と語ったあと、深く私たちに一礼をした。

え、勇者として召喚?モルビアのに危機を救う??
それは、よくラノベとかネット小説であるやつ?
とにかく私の頭の中は?で埋め尽くされた。そんな時。

「こ、これは何の悪ふざけかね?!こんな事をして許されるとでも思ってるのか!」
担任の先生が男の人と思えぬ甲高い声を出して王子様と国王に訴える。

「誠に申し訳ございません。こちらから向こうの世界に飛ばす為には魔王を倒した時にドロップされるというアイテムが無いと戻れないのです」

と、王子は表情を変えずに言う。先生は小刻みに震えている。

「それはどういう事だよ!俺達帰れるのか?!」
「家に帰してよ…」

クラスメイト達も、頭の中の整理が付いたのか王子に対して批判的な声を投げつける。

「王子様、俺達しか魔王を倒せないなら、是非引き受けましょう」
そんな中そう言ったのは、クラスの中心的存在の栗原 斗織とおる

「斗織が言うなら言うなら…」
「怖いけど頑張る!」
「やってやろうじゃないか!」

彼の一声でさっきまでが何だったの?と思うぐらいクラス全体が纏まっていく。

確かに、ここは引き受けた方がいい。ここで断った場合。もしかすると、隠れていた兵士達が何らかの理由で私達を皆殺しにするリスクもあるわけだ。けれど、魔王を倒すというのにも、命懸け。どちらにしても、私達は命を掛けなければいけない。

「ちょっと、待てよ。それで俺達が死んだらどうするんだよ」

蒼汰がこの肯定の波を一気に押し返した。【死】というフレーズには誰も逆らえない。

「それは大丈夫です。安心して下さい。皆様には魔王が現れるまで、我が国の特別な訓練を受けて貰います。更に、召喚された際に1人ずつ特別な役職が与えられていると思います。その力を使いこなせれば魔王など簡単に倒す事が出来るはずです」

こんな事言われたって、必ず死なないとも約束出来ない、ましては魔王を簡単に倒せるはずがない。

「それでは、皆様。こちらの水晶に1人ずつ触れてください。役職を確認する事ができます」

えぇ…なんか魔王討伐する事になってる…。と私が気付いた時にはもう、出席番号1番の人が水晶に手を触れていた。

「役職 魔術師」

王子が水晶を覗きこんで、何かを確認すると、役職を読み上げる。

1番最初ってのもあって、役職が発表された時には、「おお!」と歓声が上がる。

その後もどんどん呼ばれていき、「勇者」が出た時は王子様が自ら、勇者に握手をしにいった。因みに、勇者だったのは斗織。人望あっての役職でしょう。

けれど、役職といっても色々あるわけで、「鍛冶屋」や「錬金術師」などの生産職もある。これらは女子には不人気の役職らしい。

そして遂に私の番となった。
透明な水晶に両手でそっと手を触れる。



「役職 聖女」


しおりを挟む

処理中です...