顔バレしたらワケあり王子様に好かれました。

らら

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8話

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人目がつかない所に行くと、レヴィアはいつもの調子に戻った。

「そのドレスどうせロザリーに無理やり着させられたんだろ」
「どうしてそれを」
「あいつのやりそうなことだ」
「ロザリー様の性格を知っているの?」
「まぁな」
「ねぇ、この前も聞いたけど2人は一体どういう関係なの?」
「秘密。それ以上は聞いてくるな」
私は頷くしかなかったが、ロザリー様とレヴィアの間には何かあったみたいだ。

「ほら、ドレス着替えるんだろ」
「変なドレスはやめて頂きたいです…」
「え?なに?とびっきり露出が高いドレスにしてほしい?」
「ふざけないでください」
「安心しろって、パーティで1番にしてやるよ」
「普通のドレスでおねがいします」
「はいはい」
レヴィアは面倒くさがりながら魔法を使うと、あっという間にフリフリのピンクのドレスは消え、その代わりに刺繍が丁寧に施され、裾にはラメが散りばめられている薄紫色のプリンセスラインのドレスに着替えていた。

「とっても綺麗…」
「当たり前だろ」
「ありがとう」
レヴィアが素っ気なく「おう」と返事をしたすると、私たちの間に暫く沈黙が流れた。パーティ会場に戻らないのかなと考えているとレヴィアがボソッと何かを言った。

「俺が今から起こることの責任は全部とるって言ったら、何しても許してくれるか?」
「何をするつもりなの?」
「その顔をみんなに見せる」
「それをすると私は住む家を失って死ぬわ。それに私の顔は醜くて災いを招くって…」
それを聞くと、はぁとレヴィアが大きなため息をついた。
「お前自分の顔ちゃんと鏡でみたことあるか?」
「ある訳ないじゃない。怖くて見れないもの…」
「はぁあああ…」
「お前の顔はこの世のものとは思えないほど綺麗な顔してんだよ!そろそろ自覚したらどうだ?」
「レヴィアは私をからかってるの?」
レヴィアは、あーイライラするとなにかブツブツ言っている。
「ほら鏡。みてみろよ」
「い、いやよ…」
「いいから、俺を信じろって。本当に頑固だな」
レヴィアは無理やり私の髪の毛を魔法でアップにセットすると、水の魔法で作りだした鏡を覗かせた。

その時、私は生まれてきて初めて自分の顔をちゃんと見た。継母には「その顔をみたら呪われるわ」とまで言われ、今まで1度も見ようとも思ったことがなかった。

「これが私…?」
鏡の中にいるのは、深みのある紫色の瞳を丸々とさせ固まっている、まさしく絶世の美女であった。

「私に魔法で幻覚を見させてる?」
「んなわけないだろ」
「本当に?いい思いさせてあとで地獄に落としたりしない?」
「しない。自分に自信持てって。多分お前の継母はその顔が世の中に知られるのが嫌だったんだと思う…」

継母様が私にそう言っていた理由は色々考えられるが本当の所は本人に聞かないと分からない。だからリリィはそれについて考えることをしなかった。

「ねぇ、仮にあなたが言うように、私がこのままパーティ会場に戻ったらこの後どうなると思う?」

「間違いなく注目の的にはなる。変な噂も立てられるが、家の状況を変えるきっかけにはなるんじゃないか?みんなお前を無視できなくなるだろ」
ふと、今までのように、人の目を気にしてら透明人間に徹して人生を終わらせていいのか。リリィは自分自身に問いかけた。だけど、答えはすぐにはでなかった。不安があるからだ。

「でも家に帰ったら何されるか分からないわ」
「そこは俺が守ってやるよ。これでも一応第二王子なんだけどな。名前だけだけどな」
レヴィアは右手で頭を抑えながら、少し照れた様子で「頼れよ」と言った。
レヴィアに女の人が沢山寄ってくる理由が分かった気がした。 

「貴方がそこまで私の顔を晒したい理由はなに?どうしてここまで私に協力するの?」

「宝の持ち腐れだと思っただけだ。使わいないと意味が無いだろ。それに俺のそばにいる女が美人なら俺の価値も上がるだろ」

「本当にそれだけ?」
「はぁ…目の前に苦しんでるやつが居たら助けるって言うのが当たり前だろ」
「かっこいいね」
「ん?惚れた?」
「惚れてません!」
「俺はいつでもウェルカムだよ」
リリィは「はいはい」と適当に流して、「もし家を追い出したら、仕事が見つかるまで助けてくれる?」とレヴィアに聞くと、うん、と珍しく真剣な顔で言われた。その後に「一緒に住んでもいいけど?」と笑いながら言ってきたのは無視した。 

そうして、リリィは覚悟を決めてこう言った。
「私、このまま行くわ。どんな事がこの先に待ち構えていようと、何もしないであの頃ああしておけばよかったって後悔したくないもの」

その姿をみたレヴィアは、リリィの顔つきとその堂々とした佇まいから目を離すことが出来なかった。

リリィはレヴィアの腕に手をかけて、パーティ会場に再び足を踏み込んだ。そこに居た全員が一斉にリリィの方を見た。時間が止まったかのように、だれもが言葉を失っていた。まるで、天から降りてきた女神のようだと。

「ロザリー様、先程はレヴィア様との仲を取り持って下さってありがとうございました。生まれて初めてパーティに出席しましたが、ロザリー様のおかげで素敵な思い出になりそうです」
「あ、あら、そう。そ、それならよかったわ…貴方はリリィよね?」
「ええ」
「あなたの顔は初めてみたけど、どうして今まで隠していたのかしら?もしかして、殿下に顔も魔法で変えてもらったのでは?」
「魔法じゃないですよ、ロザリー様」
「それは本当なんですか?」
「はい、ロザリー様に嘘はいいませんよ」
レヴィアは持ち前の甘いマスクを活かして、ロザリーに微笑んだ。
本性を知ってる私からするとその様子は見ていられない…。
「ま、まぁ、そうなんですね。私は急用を思い出したのではこれで失礼させていただきますわ」

ロザリーは慌てた様子で、その場を逃げるように去ると、さっきまで遠くから私たちの様子を見ていた1部の男性が勢いよくリリィの元へと駆け寄ってきては、口を揃えて「私と良ければ踊っていただけませんか?」と言ってきた、

見た目が変わるだけで周りの反応もこんなに変わるなんて…。人間不信になりそうだわ…。

リリィは押し寄せる男性たちに、「ごめんなさい、今日は疲れてしまったので私も先に失礼しますわ」とだけ挨拶をして、レヴィアを連れてパーティを後にした。

レヴィアが私をなんだかんだ手助けしてくれたのも、私の見た目に惹かれたからなのかしら。
せっかくリリィは新しい自分を発見し、活力に溢れている様子なのに、その心の中のどこかで憂鬱で黒いものが残っていた。
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