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7話
しおりを挟むあのキス以来、レヴィアとは何度か会い、彼の性格のおかげで気兼ねせず話せるような仲になった。そうして過ごしていると時間が経つのは早いもので、あっという間にパーティ当日を迎えた。
私は、ロザリー様から頂いた似合わないドレスを身に纏い、ブロンドの髪を少し巻き、顔が見えないようにおろしてる。
きっとこのドレスはロザリー様のお古だ。胸が私よりも豊かな彼女の体に合わせて広がっている胸元は、私には合わずパカパカと浮いてしまっている。
大丈夫。今日1日だけよ。
顔を少しだけ出して、帰ってくればいいのだから。
重い足取りでパーティ会場の扉を開ける。
「あれが噂のフェデェリカ家の…」
「誰も顔を見たことがないんですって」
「まぁ、あのドレスをご覧になって」
「仮にも伯爵家の娘なのにみっともないわね。やっぱり第2夫人の出身は貧困街出身だったって噂は本当なのかしら」
「あらやだ。私はフェデェリカ家のご当主様が奴隷市場で買ってきたって噂を耳にしたわよ」
足早に会場の隅に移動したが、陰口を言われているのが聞こえる。
いつまでここに居たらいいのかしら…
きらきらと華やかな場所だけど、まるで牢獄だわ。
私だって母親のことは何ひとつとしてしらないのに、馬鹿にされているのは気に食わない。
そう思いながらじっと、自分の足元を見つめていると、「あらあら」とあの声が近づいてきた。
「本当にその格好で来たの、恥知らずね。あれから何度もレヴィア様に会っているのはどういうことかしら?」
ロザリー様は手に持っていたワインを「手が滑ってしまったわ、でもこれは反省していない貴方のための躾よ」と言いながら、決して誰にも気付かれぬように私のドレスに零した。
「私は今からレヴィア様のもとにご挨拶に行くの。あなたも付いてきてくれないかしら?」
「分かりました」
もしかしたら、ロザリー様は私がレヴィアに恋心を抱いていると勘違いしているのかもしれない。だから、敢えてみっともない姿をレヴィアに晒させて私の自尊心を傷付けさせようとしているのだろう。
2人でレヴィアのもとにいくと、彼はロザリーの手にキスし、軽い挨拶を交わした。
「そちらの方は、フェデェリカ家のリリィ様ですよね?」
随分と他人行儀だ。初めて知り合ったふりをしているのか。それにいつもより言葉遣いも丁寧でそういえば彼は王子だったと気が付かされる。この格好をみて彼も周りの人と同じようにみっともない姿だと思ったんだろう。
「ええ、どうしてもリリィさんがレヴィア様に会いたいと言っていて、今日もその為に着飾ったそうですよ」
こんなドレスとは言えど、さっきワインをかけられたシミが恥ずかしくて、私は汚れている所をそっと手で隠した。
「そうなんですね。私もリリィ様に会えて嬉しいですよ。ところで、そのドレスはどうしたんですか?」
「ロザリー様に頂いきました」
私がそう答えると、私たちの会話を物珍しそうに聞いていた人達が、こんなドレスをロザリー様が送ったのかと、動揺していた。
「そうなんですね、まぁ、そのドレスも誰かがワインを零してしまったようですし、私が魔法で衣装を返させても宜しいでしょうか」
「まぁ、殿下にして頂くほどの事ではないわ。リリィさんがドレスが無いと仰るから昔着ていたドレスを差し上げましたの。こんなにも素敵にリメイクしてくれるなんて思ってもいませんでした。リリィさん、似合っていらっしゃるわよ?それにワインのシミなら気にしないで、私よりリリィさんの方が似合っていらっしゃるもの。そのドレス貴方に差し上げるわ。安心してね。染み抜きすればまた使えるわ」
ロザリー様は、あくまでドレスをあげただけ、このセンスの悪いフリルやらリボンを私の趣味ということにしたいらしい。
「今、私はリリィ様に話しているんですよ、ロザリー様」
ロザリーは必死に怒りが湧き出るのを抑えて、可愛らしい顔を取り繕い、「私ったらごめんなさい。殿下とお話したくて」と言った。
「では、リリィ様あちらへ行きましょう」どんなドレスだろうが、これよりはマシだと思った私は、彼の手をとり、ロザリー様をその場に残して一緒にパーティの会場から出た。
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