顔バレしたらワケあり王子様に好かれました。

らら

文字の大きさ
7 / 14

7話

しおりを挟む






あのキス以来、レヴィアとは何度か会い、彼の性格のおかげで気兼ねせず話せるような仲になった。そうして過ごしていると時間が経つのは早いもので、あっという間にパーティ当日を迎えた。

私は、ロザリー様から頂いた似合わないドレスを身に纏い、ブロンドの髪を少し巻き、顔が見えないようにおろしてる。
きっとこのドレスはロザリー様のお古だ。胸が私よりも豊かな彼女の体に合わせて広がっている胸元は、私には合わずパカパカと浮いてしまっている。

大丈夫。今日1日だけよ。
顔を少しだけ出して、帰ってくればいいのだから。

重い足取りでパーティ会場の扉を開ける。

「あれが噂のフェデェリカ家の…」
「誰も顔を見たことがないんですって」
「まぁ、あのドレスをご覧になって」
「仮にも伯爵家の娘なのにみっともないわね。やっぱり第2夫人の出身は貧困街出身だったって噂は本当なのかしら」
「あらやだ。私はフェデェリカ家のご当主様が奴隷市場で買ってきたって噂を耳にしたわよ」

足早に会場の隅に移動したが、陰口を言われているのが聞こえる。

いつまでここに居たらいいのかしら…
きらきらと華やかな場所だけど、まるで牢獄だわ。
私だって母親のことは何ひとつとしてしらないのに、馬鹿にされているのは気に食わない。

そう思いながらじっと、自分の足元を見つめていると、「あらあら」とあの声が近づいてきた。

「本当にその格好で来たの、恥知らずね。あれから何度もレヴィア様に会っているのはどういうことかしら?」

ロザリー様は手に持っていたワインを「手が滑ってしまったわ、でもこれは反省していない貴方のための躾よ」と言いながら、決して誰にも気付かれぬように私のドレスに零した。

「私は今からレヴィア様のもとにご挨拶に行くの。あなたも付いてきてくれないかしら?」
「分かりました」
もしかしたら、ロザリー様は私がレヴィアに恋心を抱いていると勘違いしているのかもしれない。だから、敢えてみっともない姿をレヴィアに晒させて私の自尊心を傷付けさせようとしているのだろう。

2人でレヴィアのもとにいくと、彼はロザリーの手にキスし、軽い挨拶を交わした。

「そちらの方は、フェデェリカ家のリリィ様ですよね?」
随分と他人行儀だ。初めて知り合ったふりをしているのか。それにいつもより言葉遣いも丁寧でそういえば彼は王子だったと気が付かされる。この格好をみて彼も周りの人と同じようにみっともない姿だと思ったんだろう。

「ええ、どうしてもリリィさんがレヴィア様に会いたいと言っていて、今日もその為に着飾ったそうですよ」
こんなドレスとは言えど、さっきワインをかけられたシミが恥ずかしくて、私は汚れている所をそっと手で隠した。
「そうなんですね。私もリリィ様に会えて嬉しいですよ。ところで、そのドレスはどうしたんですか?」

「ロザリー様に頂いきました」
私がそう答えると、私たちの会話を物珍しそうに聞いていた人達が、こんなドレスをロザリー様が送ったのかと、動揺していた。

「そうなんですね、まぁ、そのドレスも誰かがワインを零してしまったようですし、私が魔法で衣装を返させても宜しいでしょうか」

「まぁ、殿下にして頂くほどの事ではないわ。リリィさんがドレスが無いと仰るから昔着ていたドレスを差し上げましたの。こんなにも素敵にリメイクしてくれるなんて思ってもいませんでした。リリィさん、似合っていらっしゃるわよ?それにワインのシミなら気にしないで、私よりリリィさんの方が似合っていらっしゃるもの。そのドレス貴方に差し上げるわ。安心してね。染み抜きすればまた使えるわ」

ロザリー様は、あくまでドレスをあげただけ、このセンスの悪いフリルやらリボンを私の趣味ということにしたいらしい。

「今、私はリリィ様に話しているんですよ、ロザリー様」
ロザリーは必死に怒りが湧き出るのを抑えて、可愛らしい顔を取り繕い、「私ったらごめんなさい。殿下とお話したくて」と言った。

「では、リリィ様あちらへ行きましょう」どんなドレスだろうが、これよりはマシだと思った私は、彼の手をとり、ロザリー様をその場に残して一緒にパーティの会場から出た。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...