The Gang Stars

鮫島さそり

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chapter 3 〜水面下〜

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─フランス某所─

「なぁ聞いたかてめぇら。あのクソ女…もとい我らのボス様が、まぁた余計な事やり始めたらしいぜ。」

「またァ??対してしょうもないことしかやってないあいつが?」

とあるアパートの一室…床には武器のカタログやポルノ雑誌、スナック菓子の食べかす、机の上には今にも中身が零れそうな灰皿と空っぽの酒瓶…おおよそ一般的な家庭が住んでいるとは言えない部屋で、何人かの男女がコソコソと話をしている。

「この前はアレ扱い始めて、今度は何したっての?」

如何にも染めているようなビビットピンク髪がそう聞くと、ウシャンカを被り目元以外全て顔を隠した女が、面倒くさそうに答える。

「あんた本当に情弱ね、ヴァル…。インスタばーっかり弄ってて裏の情勢には興味ないわけ?同盟。別んとことチーム組んだんだって」

「へー、そーなの。ふーん。」

「ねぇなんであんたってば、そんな如何にも“自分関係ないしー“みたいな態度取るのよ?同業者としての自覚あるわけ?」

「まーたヘルガのお説教始まっちゃったよ…。ま、ボク様他の組織にはあんまし興味ないんだよね」

「仲間内でケンカすんのやめろや、なぁ、ロマネ?お前もこんな寄せ集めチームのリーダーやらされてつれぇよなぁ…」

煙草を吸いながら銀髪の男が白髪の少年に問いかける。すると如何にもそうだ、と言わんばかりの表情でぶっきらぼうに返した。

「ったく、その通りだぜ…。俺じゃなくてグレース、お前がやりゃ良かったのに…。ボスも人を見る目ってもんがねぇのかもな」

「俺ェ?御免だね。他人の面倒見てやれる程俺はお優しくねぇんだよ」

「そーそー。こいつバカみたいに優しくないし手荒なのよー。力だけ無駄にあるんだから…。あのね、言っとくけど…。
痛いのよ、毎回さぁ!もーちょっと紳士的に出来ない訳?」

「そーゆープレイなの」

「下ネタやめてよ、サイアクー」

「未成年の前でそういうアダルトチックな話すんのどうかと思うぞ」

「情けないおとなー」

「うるせぇな、これだからガキどもは…」

「グレースもヘルガもボク様から見たらオジサンオバサンだけどね?」

「んだと??おいヴァル、次余計な事言ったらその目ェチカチカする色の髪全部引っこ抜くからな!」

「染めてるから伸ばせばいいもーん、またチカチカカラーに戻せるもーん」

「うぜぇ…」

「アジトでの喧嘩はナシって先月決めたろ、もういい加減にしろ」

話が過熱するに当たって室内はどんどん騒がしくなってくる。
今にも切れそうな寿命の電球が照らすこの部屋は、フランス組織の一部…ターゲットの暗殺を仕事とする、暗殺チームのアジトであった。メンバーは少なく、狙撃手のヘルガにスポッターのグレース、暗器使いのロマネに爆弾魔のヴァル…そして、この場には居らず席を外しているようだが、伝令係のカルムを含めた計6人。この部屋は彼ら彼女らの仕事場であり、溜まり場でもある。


「ねー、ところでさー」

「んだよ、また下らねぇ与太話でもする気か?」

「ボスって最近何やってんの?さっきドーメー?組んだって言ってたじゃん?何がやりたいのかな~?」

「さぁな。知らね」

「また無駄に勢力拡大しようとしてるんじゃないの?」

「んー、やっぱりそうかー。でもなんで今?」

「ヴァル、そんな事聞かれても俺たちゃなーんも知らねぇぜ?最低限の情報しか渡ってこないからな、暗殺には。汚ねえ仕事するからこそ、何時でも切り離せるように孤立させてんだろ。」

「げー…腹黒ババアだぁ、ボスゥ。やーなの。感じ悪っ」

「なんせ犯罪一家の跡継ぎって話よ?血筋に性格の悪さが刻み込まれてるんでしょ」

「蛙の子は蛙、そういう事だな」

「まぁあの醜女はァ?カエルより劣るってアタシは思うけどぉ??」

「一理ある」

「理解出来んこともない」

「カエルってかァ、んー…虫。そーゆーのと同類よねー」

「蛾だな」

「おっ、それぴったし。イメージ付きやすい」

「だってアタシ達のことこき使う癖に薄給だし、休みはないし」

「命懸けの仕事してんのに、労いの一言もないしな」

「しかも頑張っても減額してくるときあるのマジサイテー!!」

「はー…転職したーい」

「ギャングが転職って、どこのジョークだよ」

「無理だよねー、分かってて言ったけど」

「労働環境劣悪ゥ……労基が入ったらガチギレするわよこんなん…」

「その前に警察のお縄にかかっちまうな」

「それに比べてさー、アメリカんとこの方は環境良さそうだよねー、ボスもいいやつそうだし」

「むしろ弱っちそうだから乗っ取るのも簡単かもな」

「馬鹿なこと言うなよ。あっちには俺たちですら勝てるかどうか怪しいのが2人も居るんだぞ?方やマフィアの本場シチリアのプロの暗殺者と、全米を震撼させた連続殺人犯!!文字面からしてやべーだろあんなん!!」

「乗っ取りとかアホな事考えてないで、今はアタシ達上の言う事聞いてりゃ安泰なんだからさ、せっかく仕事が来てない時間帯なんだし休んどきましょうよ…」

「んま、そだね」

「話が盛り上がりすぎたな、俺は寝る」

「グレースもあんまカリカリしない方がいいよー、胃に穴開けちゃうよー?ロマネだって寝ちゃったし」

「まだ寝てない」

「ケッ、ロマンもクソもないこった」


ざわめきが徐々に小さくなり、昼下がりのアパートの一室から明かりが消えた。いつだってこのアジトはそうだ。昼夜逆転、バカ騒ぎや乱闘は当たり前。そんな異質な空間なのだ。


「ねね、グレース、起きてる?」

「あ?ああ……んだよ、どうした?」

「最近の裏の話、ちょっと集めてきたからさ」

「情報共有タイムって訳だな?」

「そ。アタシ達どーせこの先あのクソ女裏切るでしょ?」

「ああ。将来性はねぇし、最悪だもんな」

「アメリカの方に乗り換えるつもりで居たけど…なーんか危なそうなのよね。メキシコかどっかの麻薬捜査官が紛れ込んでるって噂もあるのよ」

「ほぉ、サツが嗅ぎ回ってんのか。そりゃ危ねーな」

「それに、下手したらアレの実験台にされるかもしれないし。だってほら、アレの原材料、南アメリカとかでしか採れないじゃない。チリとか…そこら辺」

「あーあーあー、そりゃ嫌だな。アメリカはナシ。変なクスリの実験台にされて獣畜生になるよか、人間様としてクソみたいな人生送った方がマシだっつーの」

「んじゃ、消去法で言うと日本かロシアになるわね…。ま、寒いのは平気だしロシアはヨユーっしょ」

「北欧育ちの耐寒性能舐めてもらっちゃ困るしな。極寒でも平気だし」

「でもねー…ジャパニーズヤクザってさぁ、サカズキ?とかキョウダイカンケイ?ってあるじゃない?あれなんかよく分からないし面倒くさそうよね」

「そうだな……どうすっか」

「もうちょい情報収集要るわね」

「情勢的にはアメリカは基盤はあっても状態はボロクソ、ロシアは武器はあるが金がない、ウチは金があってビジネスを広げたい、でも労働環境はトップオブクソ、日本の連中は何もせずに傍観って感じか」

「ま、どっちにしろ日本には行きたくなかったからいいわよ。最近、妙なウワサが立ってたからね」

「噂?」

「さっき言ったヤクザ…宇佐美組?のナワバリで、変な現象が起こってんだって。聞いたところさ、ヤクザが殺してそのままにした死体が、数時間にはすっかり無くなってるんだって!!」

「ヤクザどもが自分で片付けたんじゃないのか?」

「それがね、そうじゃないの!!」

「どういうこった?訳が分からねぇ」

「血痕だけ残して、死体は欠片1つ残さずにすっかり無くなってるの!!多分これ、誰か他のが関与してるわよ…」

「死体処分の専門職…っつーことは、人喰い共か…」

「裏切り者の処分もさせてるみたいね…」

「そしたら完全に、逃げる先はロシアだな…」

「ボスか幹部に接触できる時を伺うしかなさそうね…」

不敵な笑みを浮かべながら、その2人は顔を見合わせた。この先に何があるかも知らずに…
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