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ろくろくろく

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学生会って何?

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「あの、佐竹って人は何学部ですか?サロンに行ったら会えるかな?」
「は?佐竹?何で佐竹?」
「ちょっと用があって」

それは飲み会の会費の事なのだがクリスはお金を払わせてくれないのだ。今日の朝ごはんだって多分とても高いのに半分払うという申し出は濁されて誤魔化された。
クリスは見るからにお金持ちそうだけど(見た目から来る固定概念)、親しくても親しくなくてもお互いに学生なのだからそれは駄目だと思う。

「個人的な相談です」

競歩と言えるくらいの早足で歩いた。

「佐竹に?」

クリスの長い足も競歩になっている。

「そうです、佐竹さんじゃ無いと駄目なんです」
「なんで?!相談なら僕にしろよ!何で佐竹?!あいつまんまと蓮の隣に座って……え?!まさかと思うけど何かされた?俺の蓮によくも…」

妄想だけでキレるなんて豊か過ぎる想像力はもうアーティストの域に入っている。
「俺が話す!」と競技レベルの競歩で進んでいく先はサロンの方だ。つまり佐竹さんはサロンにいるのだろう。

「クリスさん俺が行くから」
「駄目、蓮は待ってて」
「待ってるのはクリスさんだよ、付いてこないで」
「でも…」
「付いてこないで」

駄目かと思ったけど強く言うと意外に効いた。
足を止めてオロオロするクリスを追い抜いてサロンに向かったら、隣に並ぶのだけはやめたようだ。振り向いたら止まる、少し歩いてもう一度振り向いたら止まる。

皮肉にもリアルでだるまさんが転んだをやったのは初めてだ。
仕方が無いから更に「サロンに入ったら許さない」と念を押して活発系の溜まり場に脚を踏み入れた。

「いた」

まだ午前中だからか、みんな講義に出ているのか、前に来た時よりも随分と人が少ないせいで佐竹はすぐに見つかった。
大きな柱を巻いたテーブルで飲み会で見かけた数人と談笑している。
フリートークや親密な挨拶は苦手だが事務的な話はできるのだ。近寄って会釈した。

「あれ?噂の蓮くんじゃん」

片耳にだけ付けていたイヤフォンを外してから、佐竹がおいでと手招きしてくれた。
こうして落ち付いてよく見ると、快活な雰囲気が溢れる佐竹もまた特別に目立つ部類の人だった。
意志の強そうな目元や滑らかな滑舌が好青年と言った印象を生み就活したら1番に売れそうなタイプだ。

「噂……なんですか?」
「あれからどうなったかを聞きたいだろ」

「なあ?」と佐竹が仲間に問いかけると何だか中途半端な笑いが返ってくる。
つまり「どうなった?」の主語は昨夜のあり得ないクリスの告白だろう。

「どうもなってません、あれはクリスさんの冗談ですよ」
「いや、どうだろう、君にしたらびっくりなのはわかるけど、クリスはあんまり冗談とか言わないんだ、いつももの静かだし酒を飲んでも酔った所なんか見た事ないからな」

普段のクリスがどうなのかは知らないが、静かでは無い。決して無い。

「もう忘れてください、それよりも俺は昨日の会費を払ってないんです、3000円ですよね」
「ああ、それはいいよ、新人の分はみんなで分割する決まりだから………さ……」

「ところであれは……何?」と背中を向けている方を顎で指されて振り返ると、パックリと大きく口が開いた。

サロンに入るなと言ったからなのだろうか、齧る勢いでドアにしがみ付いたクリスが凄い目で睨んでいる。睨まれているのは佐竹さんなのだが、どこが物静かなのだ、黙っていても煩い人だ。

「ったく……あの人は何してんだろな、君は…蓮くんだったかな、座ってて、クリスを呼んでくるからさ」
「いえ、俺はもう帰ります」

クリスをよろしく…という願い込めてサッと頭を下げで入り口とは反対のドアに向かおうとすると手首をガッチリと掴まれた。

「あの?」
「駄目、君は執行部の飲み会に来たんだからもうメンバーなの」
「え?!」
「飲み代免除だって言ったろ?それはつまり新メンバーの歓迎予算だからさ、頑張れよ、秋の学祭に向けて死ぬ程忙しくなるからね」

「絶対に逃がさない」と爽やかに怖い事を言われても困るからお金を払って終わりたいのにグイグイと肩を押される。
そして座ってる人から手を引っ張られてるけど、ここは逃げなきゃ何かやれって言われたら断れなくなる。

「無理だ」って必死で訴えながらジタバタした。
学生会の執行部なんてコミニュケーションが欠落した陰キャが入っていい場所では無いのだ。

この際だから3000円を投げてやろうかと思った。しかし、忠実に言いつけを守っていた筈のクリスがズカズカと入って来て事をややこしくした。

「蓮に触るな!」と凄まれても困ると思う。
しかし、佐竹は苦笑いしながらも、肩に乗った手をそろそろと離した。
「俺のだ」って引っ張られたけど、少なくともクリスのものでは無い。
好きだってのが本気だとしてもイエスなんて言ってないのだ。

「本気?」と首を傾げた佐竹に真剣な眼差しでコックリと深く頷いたクリスに苦笑いを浮かべた。
出来ればはふざけている仲間を叱って欲しいけど関わり合いになりたく無い気持ちはわかる。
深く聞くのは怖いし、馬鹿らしくもある筈だ。
そして、恐らくだけどクリスが不機嫌な顔をするのは珍しいのだと思う。
追及するのはやめたらしい。

「これからさ、こいつを…蓮くんを連れ出して執行部のメンバーとして歓迎会をしたいんだけど……ってか本人が聞いてるな」

「まあいいか」ってよくない。

それは既成事実を積み上げて逃げられないようにしてやるって事なのだろう。アレもこれも全部クリスなんかに関わったからこそ食らったとばっちりでは無いか。

上手く話せないけどここは何が何でも断らなければならないのに佐竹は人の上に立つ資質を持っているらしい。誰を説得すれば1番早いかよくわかっていた。

「クリスが大好きな蓮くんと学祭の準備から当日まで嫌って程一緒にいられるぞ」とか、「苦楽を共すると思い出が増える」とか青春ワクワクコースを並べてみせる。
しかし、要約するとかなり大変だって事を隠せてない。

「俺は行きません、昨日の会費を受け取ってください、それでチャラです」

ずっと握りしめたままの3000円は何だか湿って来てるしクシャクシャになってるがお金はお金だ。自分的にはかなり強引に差し出してるのに、それでも佐竹は受け取ってくれない。

「ちょっとカラオケにでも付き合うくらいいいだろう、学生会で割引があるから500円だぞ」

ほらと佐竹がカードらしき物を出して見せてくれようとしたがクリスが割って入ったから見えなかった。

「カラオケは駄目だよ、ねえ、蓮、駄目だよね」

カラオケでなくても駄目だけどカラオケは嫌だ。

「……うん…え?」
「ほら、駄目だって、蓮はこれから俺と一緒に映画に行くんだからね」
「そんな約束はしてません、行かないからね」
「え?!ドラゴンスレーターの2期が始まってるよ?蓮は好きだろ?」
「好きだけど……なんで知ってるんですか」
「やだなあ、1期を一緒に見ただろう」

「………は?」
「………内緒で……隣に座っただけだけど……」
「何…それ……」

ドラゴンスレーターはハリウッド発の二部作で連続して公開されてる人気映画なのだが、一作目を見に行ったのは去年の夏だ。

「カラオケ行きます」
「蓮?!」
「佐竹さん、カラオケに行きましょう」

佐竹は「いいの?」とクリスの顔色を伺った。
クリスの所有物になった覚えはないのだからそれはおかしいと言いたくなるが、どっちか選ぶしかないならクリスから逃げられる方を選ぶ。
とにかく、カラオケでも何でもいいからチャンスがあるならお金を渡して無かったことにしたかった。
一回しか行った事はないが、カラオケは歌わなければ座ってるだけでいいのだ。
誰かが歌ってるから会話に困ることもない、カラオケがいい。
嫌なら来なくていいのにクリスも付いてくるみたいだけど、謎の奇行を繰り出す変人と2人っきりよりはマシだと思ってしまった。
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