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嫉妬と劣情

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立ち上がる振りをして目を逸らせた。
蓮が小さなパニックを起こしている事はわかっているがあえて無視をしたのだ。
大切にしたいと思っていた、少し異質な感覚を持つが故の孤立から守ろうと思っていた。
それは今も変わらないのに、矮小な嫉妬心にかられて絞め殺したいと思うほど凶暴な感情に襲われた。
全てが欲しいと思う気持ちは恋愛感情などと一口で纏められるほど生やさしいものでは無い。
ひたすら強欲で、ひたすら自分本位だ。

蓮の今までを全部納得した上で好きだと言ったつもりだったが、軽く追い詰めただけでツルリと剥けた薄皮の下ある別の顔が垣間見えると冷静を保てなくなる。

細い首を乱暴に掴み、暴れても喚いても押し倒して胸を裂き、抉り取った心臓を目の前に翳して握り潰して見せたらどんな顔をするのかと、凶暴な劣情に焦れを覚える程だ。

キスひとつで慌てる姿に安心していた、安心したかった。

必死で惚けてはいるが、蓮は自分が何を求められているかをわかっている。
生まれ付きでどうしようもない偏りのある性癖を自覚しているならともかく、普通に生活している20歳なら好きだと言っても、キスをしてもその先に何があるかなんて想像もしない筈だ。
わかっている事に腹が立つ。
喉の奥が焦げそうな気分になる。
どんな蓮でもいいと覚悟を決めた筈なのに自分がこんなにも狭量だったとは知らなかった。

「………萌えるな……」

「……あの……」

ボソッと漏れ出た妄想の一部に慄く蓮に益々萌える自分はどうかしている。
残念ながらこのままでは駄目なのだ。

「そんな顔をしないで、バルコニーに出て食べようか」

遠くから見ていた頃の蓮は近寄りがたく、我関せずと、周囲で何が起ころうが興味が無いのだと思っていたのだがそれは違った。
今も「帰りたい」と口にしたのに何も聞かなかった振りをしながらバルコニーに誘《いざな》うと素直に付いてくる。
嫌だと思っていても上手くかわせない、適当に誤魔化す事も出来ない、流す事も断る事も出来ないのだ。

蓮がゆくべき道の先には何もかもを理解したサポートが必要だと思える。
その役は何が何でも離さない。
手に入れてみせる。
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