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テロ
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ペリッとコンビニ唐揚げの袋を剥がして細長いテーブルの真ん中に置いた。
梶のバイトは本当だったがまだ時間があったからコンビニのフードコードで腹ごしらえをしてから解散しようって事になったのだ。
「買い出しでもして…新しい台所で何か作ってみんなで食べようと思ってたんだけどな」
「まあ俺達が悪いだろ」
「そうだけどさ、……蓮って…」
ポツっと口を開いた東に「藤川」と注意したのは梶だ。梶は仲間内の中でも冷静で公平な所があり大人しい割に人気があった。
「外ではそこを気を付けようぜ」
「ああ…そうだなごめん」
「そこまで気を張る必要は無いと思うけどな、それで?何だよ東」
「うん…あれが蓮の本性なのかな…ってさ」
「何だよそれ、蓮を悪く言うなら俺は怒るぞ」
「そうじゃなくてさ、お前らだってあのライブ見たんだろ、俺が言いたいのは中身ってのか、考えている事が実は物凄く鋭利でさ、見た目通りなのかなって…今日は特に思った、あいつは俺達とは違うんだなって……」
「感覚的な話?それともアッチの話?」
「………両方?…」
カァっと顔を赤く染めた東は「あ"~」と濁声をあげて頭を抱えた。
「やだあ東くんったら蓮をオカズにした一人?」
「違うわ!真城こそどうなんだよ、最近やけに蓮を構うだろ」
「え?……俺は……」
最初は仕方なくだったのだが蓮を知れば知る程放っておけなくなっていた。
限りなく地味で引っ込み思案な割にヒヤリとさせられる程の迫力を出してくる所はバランスが悪い。まるで自分がわかってない蓮を世に送り出そうと奔走してる黒江達の気持ちがわかるからなのだが……その他にも理由はあった。
「何かさ、蓮って地面に足が付いてる分量が少ないってのかさ…」
「体重は軽そうだよな」
「握れそう」と拳を出した東の手を梶が「やめろ」と叩き落とした。
「痛てえな、何だよ、じゃあ爪先立ちって事?」
「いいから東は黙ってろ、真城が言いたいのは地に足が付いてないって意味だろ?」
「そうじゃなくて……言ってしまえばこの世との繋がりが薄いような気がするって感じ?オーバーなんだけどさ、それぞれが決まった分量しか持ってない生命力みたいなもんを使って歌ってるように見えるんだ」
「あ……わかるかも……それ」
「俺も…」
目を合わせてしまえば結論が出てしまうような気がして自分の手を見つめた。
恐らく3人ともが飲み込んだのは「早死しそう」って言葉だったのだが、例え冗談でも口にすれば不穏な何かに飲み込まれてしまいそうに思えた。
「だからあのギャップなんじゃ無い?」
「え?」
突然明るい声を出した梶に驚いて顔を上げると諭すように「大丈夫だ」と笑った。
「いや、俺も具体的にどうとは思ってないけど、危なっかしいというか…どこか儚いっていうか、カラオケなんか行きたくないって言いつつフラフラと付いてくる感じでさ、悪い方向にも簡単に流れていきそうに思えるんだよな」
「だからそれは大丈夫だって。蓮の持つ鮮烈な爆発力の裏側はあの省エネだろ?ちゃんとバランスは取ってると思うよ」
「……まあ……そう言えば…確かに…」
生涯で使えるエネルギーのうち、生活や付き合いに半分使うくらいが普通の人なら蓮は1割を下回るような気がする。
「そうかもな…」
「そうだよ、蓮はきっとあの道を進むんだろうしそのうちにもっと小慣れて来るだろ」
「そうだな、言っとくが俺も続くぞ」
「並んで紅白とか?」
「無い無い」と笑ったが、紅白はともかくとしても道を逸れたりはしない、環境を含めたスペックが高い蓮のようにはいかないが、タイムリミットまでの後2年、諦めるつもりは無かった。
「ああ~蓮みたいな声が欲しい」
声もそうだが高音でもボリュームの出る音域が欲しい、即席らしい鼻歌さえ妙に完成度のある作曲センスも欲しい。
「もう…蓮の全部が欲しい!」
悔し紛れに残った唐揚げを2つとも食べてやろうと手を伸ばすと、突然後頭部でパンッと何かが弾けた。
「え?何?!熱!!何これ?わっ!熱!熱!」
飛び上がって正体不明の熱を剥がそうと馬鹿みたいにワタワタと踊った。
何だと思ったら肩と背中が濡れている。
匂いとか色味からコーヒーだとわかるが、何がどうなって頭から熱いコーヒーを被る羽目になったのかがわからない。しかし、床にコンビニコーヒーの紙コップが転がっている所を見るとどこからか飛んできたのは間違いないらしい。
「え?誰?お前ら?東か?!」
「違うわ、隣にいたろ」
上手い事避けている東は違うので違うと首を振っている。梶は見ていたから何もしていないとわかっているのだ。
しかし、謝ってくる人は誰もいないし姿も見えない。
「超常現象?」
「どんな種類の?」
「東!ふざけるのは後にして取り敢えずコーヒーを拭いてやれよ、トイレットペーパー借りてきてやる」
「天罰だ」と笑う東に比べてサッと動いてくれる梶はよく出来た友達なのだが過剰に優しい訳では無いのだ。やるべき事をやった後は散々笑われ「何故」とか「誰が」は置き去りになった。
この後、事あるごとにコーヒーが降ってくるぞと揶揄われる元ネタになるのは間違いないと思われた。
梶のバイトは本当だったがまだ時間があったからコンビニのフードコードで腹ごしらえをしてから解散しようって事になったのだ。
「買い出しでもして…新しい台所で何か作ってみんなで食べようと思ってたんだけどな」
「まあ俺達が悪いだろ」
「そうだけどさ、……蓮って…」
ポツっと口を開いた東に「藤川」と注意したのは梶だ。梶は仲間内の中でも冷静で公平な所があり大人しい割に人気があった。
「外ではそこを気を付けようぜ」
「ああ…そうだなごめん」
「そこまで気を張る必要は無いと思うけどな、それで?何だよ東」
「うん…あれが蓮の本性なのかな…ってさ」
「何だよそれ、蓮を悪く言うなら俺は怒るぞ」
「そうじゃなくてさ、お前らだってあのライブ見たんだろ、俺が言いたいのは中身ってのか、考えている事が実は物凄く鋭利でさ、見た目通りなのかなって…今日は特に思った、あいつは俺達とは違うんだなって……」
「感覚的な話?それともアッチの話?」
「………両方?…」
カァっと顔を赤く染めた東は「あ"~」と濁声をあげて頭を抱えた。
「やだあ東くんったら蓮をオカズにした一人?」
「違うわ!真城こそどうなんだよ、最近やけに蓮を構うだろ」
「え?……俺は……」
最初は仕方なくだったのだが蓮を知れば知る程放っておけなくなっていた。
限りなく地味で引っ込み思案な割にヒヤリとさせられる程の迫力を出してくる所はバランスが悪い。まるで自分がわかってない蓮を世に送り出そうと奔走してる黒江達の気持ちがわかるからなのだが……その他にも理由はあった。
「何かさ、蓮って地面に足が付いてる分量が少ないってのかさ…」
「体重は軽そうだよな」
「握れそう」と拳を出した東の手を梶が「やめろ」と叩き落とした。
「痛てえな、何だよ、じゃあ爪先立ちって事?」
「いいから東は黙ってろ、真城が言いたいのは地に足が付いてないって意味だろ?」
「そうじゃなくて……言ってしまえばこの世との繋がりが薄いような気がするって感じ?オーバーなんだけどさ、それぞれが決まった分量しか持ってない生命力みたいなもんを使って歌ってるように見えるんだ」
「あ……わかるかも……それ」
「俺も…」
目を合わせてしまえば結論が出てしまうような気がして自分の手を見つめた。
恐らく3人ともが飲み込んだのは「早死しそう」って言葉だったのだが、例え冗談でも口にすれば不穏な何かに飲み込まれてしまいそうに思えた。
「だからあのギャップなんじゃ無い?」
「え?」
突然明るい声を出した梶に驚いて顔を上げると諭すように「大丈夫だ」と笑った。
「いや、俺も具体的にどうとは思ってないけど、危なっかしいというか…どこか儚いっていうか、カラオケなんか行きたくないって言いつつフラフラと付いてくる感じでさ、悪い方向にも簡単に流れていきそうに思えるんだよな」
「だからそれは大丈夫だって。蓮の持つ鮮烈な爆発力の裏側はあの省エネだろ?ちゃんとバランスは取ってると思うよ」
「……まあ……そう言えば…確かに…」
生涯で使えるエネルギーのうち、生活や付き合いに半分使うくらいが普通の人なら蓮は1割を下回るような気がする。
「そうかもな…」
「そうだよ、蓮はきっとあの道を進むんだろうしそのうちにもっと小慣れて来るだろ」
「そうだな、言っとくが俺も続くぞ」
「並んで紅白とか?」
「無い無い」と笑ったが、紅白はともかくとしても道を逸れたりはしない、環境を含めたスペックが高い蓮のようにはいかないが、タイムリミットまでの後2年、諦めるつもりは無かった。
「ああ~蓮みたいな声が欲しい」
声もそうだが高音でもボリュームの出る音域が欲しい、即席らしい鼻歌さえ妙に完成度のある作曲センスも欲しい。
「もう…蓮の全部が欲しい!」
悔し紛れに残った唐揚げを2つとも食べてやろうと手を伸ばすと、突然後頭部でパンッと何かが弾けた。
「え?何?!熱!!何これ?わっ!熱!熱!」
飛び上がって正体不明の熱を剥がそうと馬鹿みたいにワタワタと踊った。
何だと思ったら肩と背中が濡れている。
匂いとか色味からコーヒーだとわかるが、何がどうなって頭から熱いコーヒーを被る羽目になったのかがわからない。しかし、床にコンビニコーヒーの紙コップが転がっている所を見るとどこからか飛んできたのは間違いないらしい。
「え?誰?お前ら?東か?!」
「違うわ、隣にいたろ」
上手い事避けている東は違うので違うと首を振っている。梶は見ていたから何もしていないとわかっているのだ。
しかし、謝ってくる人は誰もいないし姿も見えない。
「超常現象?」
「どんな種類の?」
「東!ふざけるのは後にして取り敢えずコーヒーを拭いてやれよ、トイレットペーパー借りてきてやる」
「天罰だ」と笑う東に比べてサッと動いてくれる梶はよく出来た友達なのだが過剰に優しい訳では無いのだ。やるべき事をやった後は散々笑われ「何故」とか「誰が」は置き去りになった。
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