僕たちは無邪気に遊ぶ

balsamico

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海のこと

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 怯えさせないように近づく。
 菫色の瞳から目を逸らさない。目を逸らしたら相手は逃げてしまう。

 距離を一歩前に詰めようとすると引いてしまうので逃げる手をつかんで持ち上げた。細く白い手はしなやかで、しっかりした実感があった。

「おまえが、環?」

 自分を見つめ返してくる姿から目を離せない。本当は余裕なんてまったくないのに余裕ある振りをして近づく。

「俺は、海」

 思考には力があり強い意志ならば相手に伝えられる。そのような伝達手段は思念と呼ばれていた。 

 俺は脳内で名前文字を具現化しイメージを目の前の少年にぶつけた。
 環は脳内に現れた俺の名前に戸惑い、怒っているようにみえた。初対面での思念のやり取りは失礼とされている。俺の振るまいを不躾に感じたのだろう。

 俺に不審を感じる真面さも良い。ますます俺を好きになって欲しいと願った。
 まずは相手の警戒を解き距離を近づけなければならない。

 警戒を解くための慕わしさと愛情をまとめて塊にし相手の記憶感情その他を掌る部位にぶつける。

「俺とおまえは、すごく仲がいいんだ」

 俺からの乱暴な思念に相手は少し戸惑っているようだ。逃げられないよう少し不自然になった笑みをたたえながら近づいた。自分にも何重に暗示をかけながら。

 ──俺は彼と仲がいいし更に仲良くなる。
 ──俺は、彼に好かれてる。

 菫色の瞳がこちらを強く見返してくる。ほっそりした顎にしなやかな喉もと。白い肌から目が離せない。

 ああ、俺は彼が好きだ。彼に触れたくて仕方ない。

 ──俺たちは仲がいいんだ、触れ合うほどに。

 肌にふれたらどんな感じなんだろう。俺の中の妄想は止まらない。

「……触れ合っちゃう位にはね」

 手を伸ばして薄い肩に触れる。触れた瞬間、自分の中で電気が走った。ただ、肩に、触れただけなのに。

 彼は一瞬身を強ばらせたけど思念を送ったらすぐに力は抜けた。
 身体を引き寄せ肩を抱く。腕の中にすっぽり収まる彼の頭に顔を寄せた。


 *

 形の良い唇に触れた。指で滑らかな唇をなぞっていく。

 俺はこの子にもっと触れたかった。でもこの子の警戒心が俺の存在をまだ締め出している。

「知ってるか? 口と口を合わせると、気持ちいいんだ」

 顔を向けさせて蕩けるような笑みをつくり思念を送った。

 ──俺と接吻すると気持ちいいよ。蕩かしてあげる。

「そうなんだ?」

 すっかり警戒心が解け距離が近くなり華やいだ笑顔をむけてくる。

「うん、ほら」

 彼の顎を持ち上げて口づけた。唇と唇が合わさり独特の柔らかさが伝わってくる。嬉しくて思わず夢中になりねっとりと合わせてしまう。

 「ふ、ふぁっ」
 
 相手に突き飛ばされた。口を押さえ呼吸を粗くしている。これは本人が行為を嫌がってるのではなくて、呼吸が苦しいやつだ。

 残念ながら俺はまだまだキスがし足りない。再度、顔を近づけると眉を寄せて不満そうな顔をする。それも生意気そうで余計にそそる。

「こんな時は、目を閉じるんだよ」
「息苦しいから、ヤダ」

 本音を吐き出せる距離になってる。それに文句を言っている姿も愛らしくもっといろんな表情を見せて欲しい。

「苦しくないようにするし。顔を斜めに傾ければいいんだよ。そうすれば鼻から呼吸できる」

 俺からは好き好きと天然の思念が漏れていたみたいで、環はあっさり了承する。

「……なら、いいけど」

 彼から良い香りが漂ってくる。先ほどまでにはなかった香りだ。
 俺はもっと踏み込む。
 舌を使って思念を使って。性まつわる甘く蕩けるイメージを送りこむ。

 舌で口腔を歯をなぞり舐めまくった。唇の粘膜を擦り合わせるエロさ。相手の舌をなぶり絡める。彼の境界がふにゃふにゃに蕩けるまで愛撫をした。

「おわり」

 彼を突き放すように離れた。これ以上の行為をしてしまったら彼を侵食して壊してしまう。

 引き離すのがつらかった。今の行為で相手の一部に自分が、向こうも同じで相手の中に自分がいる。

 あらゆる欲望が膨らんでいた。全身総毛だち、汗から唾液からなんやら各種体液が滲んでいる実感があった。

 相手を見ると白い顔がおでこや頬が体熱で上気して赤らみ、鼻の上もちょこんと赤らんでいた。

 蕩けてトロンとした目のふちが赤らみ、菫色の瞳は潤んでいた。散々嬲った唇は艶やかなまま赤く腫れている。

 全力で誘惑されていると思った。でもその誘惑には乗らない。こいつはここで手に入れる相手じゃない。

 そんなことをしたらこいつはジャンク扱いにされてしまう。後日正式に奪いにくるためには今は引きどきだ。

「じゃあな」

 無理やり押しこんだエロイメージを解いた。これで双方が爽やかな少年風に戻るだろう。

 ──絶対、迎えにくるから

 彼の頭を撫でてから離れた。
 背高く生い茂る草むらをかき分け振り返って手を振った。自分にも強い暗示をかけながら。
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