僕たちは無邪気に遊ぶ

balsamico

文字の大きさ
15 / 16

暑い日/海

しおりを挟む

 数日定期的な発情でいつものように、男に抱かれる櫂さんに抱かれた。エロくて多少は気持ちいいけど関心を持たれていない性交は義務感が優って倦いてくる。

 今日でこのシーズンのヒートの終わり。お疲れさま僕。ヒートはだいたい3日間。これが1週間続くオメガもいるようで、お気の毒様と思った覚えがある。

 その日は朝から違った。粉っぽい匂いが鼻をかすめ、廊下から流れくる空気を吸い込んだとたん身体が脈を打ち始めた。

 どん。

 胸が大きく脈を打ち、なにかで頭を殴られたような気がした。視界が一瞬で色が変わりレンズ全体に色彩フィルターがかかった感じ。

 世界が体内を中心に急激にぐるぐると加速していく。胸がきゅーっと締め付けられ、呼吸が浅くなり早まる。身体が熱くなり動悸が止まらない。この状態はより悪化し続ける。


 今日は櫂さんたちは不在なのでこっそり別棟の図書室に来て娯楽になるような本を探していた。

 自己診断ながらこれはやばいような気がしていた。状態が悪化して動けなくなる前に部屋に戻らねばならない。

 急いで部屋に続く階段を駆け上がって部屋に飛びこんだ。はあはあと熱い息が漏れる。

 身体がひどく熱くてたまらない。シャツの胸元を開け熱を逃がす。それでもまだ熱い。シャツを無理やり脱ぎ捨てた。

 閉め切りの窓を開け新しい空気を入れたらこの熱がマシになるだろうか。
 窓に寄ると足をつたう流れを感じた。なにこれ。ズボンの内部が濡れた感じがする。気持ち悪い。
 足に引っ掛けたズボンを脱ごうと椅子に腰掛け引き抜いた。ズボンの内側も下着も濡れていた。    

 濡れたズボンに困惑していると、窓のすき間から熱をさえぎる清涼な風の流れを感じた。風は息苦しさから解放してくれる。

 風に気を取られている間に階段をどかどかと上がってくる音がする。そしてドアの前で足音が止まった。

 ドアの隙間から、ドア向こうからこれまで蠱惑されたの匂いが強く香る。これはなに。
 過剰に体内が反応し始める自分に怖気に似た震えが止まらない。自身を抱きしめる。

「環、開けて」

 魅惑的に聞こえる高めの声。蠱惑的な匂い。僕はこの声を知っている。
 彼を求めて体内のなにかがぞろりと蠢きだす。

 でも僕は櫂さんのもので、櫂さんの許可が必要で、でも、僕はこの扉を開けたがってる。
 僕は葛藤する心と身悶えする身体を抱えドアの前で膝をつき頭を抱えた。



***

chapter 「海」


 それなりに大事にされていたと思う。分家に出された本家の血筋として。

「本家の櫂さんに部屋子が来るらしい」

 そのような噂を聞いたのいつ頃か。自分の母親は部屋子と呼ばれた儚げな美しい女性だった。

 記憶がおぼろげなのは、定期的にいなくなっていたことと幼き時分に養子に出されたから。本家にはアルファ男子は十分にいてスペアは不要だったようだ。

 大人になると母親不在の時期はヒートという定期的に訪れる発情の時期だったのだと知る。

 自分は発情の結果の子。親たちが行った獣じみた行為の結果だと思うと自分が薄汚くて恥ずかしい。

 年寄りの父親、正妻にはアルファの跡継ぎだっていた。他にも会ったことのない同腹の姉妹がいるらしい。自分たちは年寄りの快楽だけの結果なのだ。

 夏休みに寮から帰郷した際に、一族に、櫂にくる新しい部屋子の噂を聞いて俺はいてもいられなくなった。新しく来る子は男の子という。

 生殖に特化している部屋子という存在はとても美しい容姿を持つ。自分の母親は可憐な面にグラマラスという男の望みが具現化された存在だった。それが男。どのような美しさなのか興味がわいた。

 本家の櫂用に育てられている部屋子を夏休みの暇つぶしに探してみようと思った。 
 部屋子を持つにはたいそうな費用を払うという。

 櫂と自分は大して歳も変わらない。自分の父親が櫂の祖父で、自分は櫂の叔父になる。
 部屋子が欲しい訳ではないが最初から自分には考慮されない。その身分の差に多少の苛立ちを覚えた。

 地図上で秘匿された場所に学校のような施設はあった。建物内に入るには、警備が厳しそうだったけど、周りの空き地はそうでもなかった。休み時間なのか敷地で遊んでいる姿が見える。みな白い貫頭衣の上下姿の子供たちが遊んでいた。
男女の性別はわからないけれど、遠目でもみな美しい。

 その子らはボールで遊んでいた。ひとつのボールが軌道を外れてこちらに転がってきた。
 彼は草むらをかき分けて俺の前にやってきた。
 櫂の部屋子は環という名前らしい。この子が他の子にそう呼ばれていたのは確認した。

 俺の存在に気づくと、なんのてらいもなく相手を吸い込むような深い菫色の目でこちらを見ていた。

 最初は同年代で勝手にライバル視している櫂の部屋子を見てやろうという好奇心だった。
 家内で直系といえど地位が低い俺には部屋子なんていなかった、俺自身、部屋子の子だからだ。

 見てやろうなんて、ほんとに気の迷いだったんだ。なんて傲慢だったんだろう。


 迷いのない目で真っ直ぐに見返してくる。その子は眩しくて小さな存在ながら可憐で庇護欲求にかられた。
 まだ若く凛とした爽やかさをもつのに、華やかで憂いを秘めた少し垂れ目の菫色の瞳も持ち合わせていた。静脈が透け抜けるような白い肌にうっすら赤づいた唇も俺の全てを刺激した。

 欲しい。人生でこんなに欲しいと思ったのは人でも物でも初めてだ。

 俺は身震いを押えさこみ、その子に近づいた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処理中です...