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最終話 これからも魔法少女
しおりを挟む「好きだったんじゃなくて、好きなんです!現在進行形!」
望月は癇癪を起こした子供のように和彦に訴えかける。
いつも余裕があり子供っぽい仕草もお茶目な印象を与える望月らしくない様子だ。
でも、だからこそ、和彦は望月が言っている言葉が本当なのだと信じることができた。
夢みたいだ、まさか望月もオレのことを本当に好きだなんて・・・
「そ、そうなんだ。じゃあ、両思いだな。」
「そうなんです!両思いのはずだったのに・・・」
「え?」
「・・・え?」
お互い何か噛み合ってないことに気づいて見つめ合う。
望月もヒートアップしていたテンションが落ち着いたように見える。
「・・・小巻さん、俺のことはもう終わりにして次の恋愛を考えているんじゃないですか?」
「な、なんでそんな勘違いを・・・オレだって望月のこと好きだよ。」
「・・・現在進行形で?」
「現在進行形で!」
望月は数秒探るように和彦を見ていたが、嘘をついていない真っ直ぐな和彦の目を見て納得したようだ。
力が抜けたようにベッドにドスンと座り込む。
「参考にするとか、いい思い出とか、これが最後みたいなこと言うし。」
「望月は同情でオレを助けようとしてくれてるのかと思って・・・」
「さっきは好きって何度も言ったのに、何も返してくれないし。」
「それは、睦言は信用しちゃダメなのかと思って・・・」
話し合った結果、どうやらお互いに勘違いをしていたらしい。
和彦は、望月がぽよちゃんに巻き込まれている和彦を可哀想に思って助けようとしてくれているだけだと思っていた。だが、望月は和彦のことをずっと想ってくれていたらしい。
「10年前から、小巻さんが俺のこと好きでいてくれてるのは分かってたんです。」
「え、そ、そうなの?」
「ただ、当時の状況では俺に恋してるとなると---星のやつらに狙われると思って距離をとったんです。
今回不干渉協定が結ばれたので、小巻さんが魔法少女になるなんてことがなければ、すぐにあなたに告白しようと思っていたんです。
俺、ずっとあなたのことが好きだったんですよ。」
そして、望月側の言い分としてはとしてはコマキの時にお付き合いをOKしているので伝わっているつもりになっていたらしい。
いつも気が利いて人の感情に敏感な望月らしくないな、と思っていると、口に出していないのに望月には言いたいことが伝わってしまったようだ。
「俺だって、恋すればバカになりますよ。」
本気で不貞腐れている様子の望月が可愛い。
お互いの誤解が解け、気分が落ち着いできたらシーツを羽織っているだけの自分に和彦は気付いた。
話に夢中でずっとほぼ全裸で話していたのだ。気がついてしまうと気恥ずかしい。
いそいそと服を着込んでいると、スーツのポケットから魔法少女のブローチが出て来た。
「このブローチはぽよちゃんに返さなきゃだな。」
もう、魔法少女ではなくなるのだ。
大した思い入れもないのだが、もう手元からなくなるのだと思うと感慨深い。
特に意味なくブローチを軽く撫でていると、望月が興味深そうに和彦の手元を覗き込んだ。
「へー、魔法少女システムの触媒ですね。現物見るのは初めてです。ちょっと触っていいですか?」
「ああ、どうぞ。」
望月がブローチに触った瞬間、部屋がパッと光に包まれた。
光が収まると、気づけば和彦は魔法少女になっていた。
え・・・?
「ハッピーミラクルビームぽよ!ビームを出すときはこう言うぽよ!」
「うるさいな!逃げられたらぽよちゃんのせいだからな!」
結局、和彦は魔法少女として戦い続けている。
どうやら、ぽよちゃんが魔法少女体を美少女にしてしまったせいで、回路がぐちゃぐちゃになってしまったらしい。
そのせいで通常は一回の性交渉で魔法少女を辞めることができるはずなのにそうはならなかった。ちなみに、恋心の消費については、望月との管?ができたことで問題はないそうだ。
だが、魔法少女にはなってしまう。どうやったら辞められるかは模索中なのだ。
「イチャイチャする名目ができて良かったぽよね。感謝してほしいぽよ。」
いまのところ解決策が性行為を複数回してみることしかない。ぽよちゃんはそのことを揶揄ってきた。
原因の一端のくせして偉そうにするぽよちゃんの頭を、望月が思い切り叩いて和彦に笑いかけた。
「そんな名目がなくても俺たちはイチャイチャするさ。恋人なんだから。ね?和彦さん。」
甘い笑顔で微笑まれたことを思い出しただけで和彦はポーっとしてしまう。恋人になった2人は下の名前で呼び合うようになったのだが、望月を雪也と名前で呼ぶのは照れてなかなかできない和彦だった。
話が逸れたが、どうせ魔法少女姿になるのだからということで和彦は兵器撤去作業に協力することになった。
でも、前よりは楽しく魔法少女をできていると思う。
「和彦さん!無事回収できました。今日もお疲れ様です。」
職場を退職した望月は兵器を探していて、暴走しているものに関しては和彦が呼ばれて対処することになった。
遠方にはぽよちゃんががテレポートさせてくれている。
ちなみに、テレポートさせるのは---星マル秘技術で簡単にはできないらしいのだが、ラブホに転送された時から和彦は特別枠になったらしい。ぽよちゃんがこれまた偉そうに教えてくれた。
和彦が倒した兵器を無事回収して来た望月は美少女姿の和彦をギュッと抱きしめて、ため息をついた。
「この姿じゃなくて、いつもの和彦さんがいいなぁ。」
「可愛い外見の方がいいんじゃないの?」
「ありのままの姿のほうがいいに決まってます。」
真面目にそんなことを言われるものだから、和彦の顔は真っ赤になった。
こんなオレを好きでいてくれる人がそばにいるなら、
魔法少女、もうちょっとだけ頑張ってもいいかな・・・
魔法少女(♂)、辞めたい
完
○おまけ○
小話1
和「そういえば、なんで望月の寿退社なんて噂が出たんだろうな。」
望「それは多分、『近々ずっと好きな人に気持ちを伝えるつもり』って言ったからですかね。」
和(それってオレのこと、だよね?照れる・・・)
望「でも、普通のこのセリフ聞いたら今から告白だと思いません?なんでプロポーズだと思われたんだろう。」
和「聞いた人はまさか望月に彼女がいないなんて思わなかったんだろうなぁ。」
小話2
和「ぽよちゃんて仮の体と本体があるみたいだけど、望月もそうなの?」
望「俺はこの体が本体で、仮の体は作ってませんよ。」
和「そうなんだ。」
望「ちなみに、あの星のやつらはぽよぽよ言ってる姿のほうが本体です。」
和「え!?そうなの!?」
望「自分たちと比べてうちの星の人間が地球人に好かれやすい外見だから、地球人の恋心を利用して戦闘するシステムを作ったんでしょうね。」
和「へー、そうなんだ。」
ぽ「不服ぽよ!ニュースでは僕のことかわいいって言ってる女の子たちがたくさんいたぽよよ。」
和「まあ、マスコット的意味なら好かれるとは思うよ。」
望「俺には不細工な狸にしか見えませんけどね。」
ぽ「むー、プンプンぽよ!」
小話3
ぽ「××星の人間への強い恋心を検知して、見たら可愛いJKがいたからそっちかと思ったんだぽよ。
全く、魔法少女システムで可愛い女の子と戯れられると思って地球にやって来たのに。恋してたのが男なんて誤算だったぽよ。」
和「悪かったな・・・」
望「お前が和彦さんの良さがわからないやつで本当に良かった。和彦さんの可愛さに気付いた上で寝食を共にしてたとしたら、協定破ってでもお前を殺していたよ。」
和(て、照れる・・・)
ぽ(こえーぽよ。こんなに愛されてなんであんなにのほほんとしてられるんだ。)
【第二部予告(嘘)】
「呑気なもんぽよね。××星のやつらが地球人から何をエネルギーとして採取してたかも知らないで」
「え?どういうこと?」
ーー隠された真実
「和彦さんが俺のこと好きなのは本当ですよ。・・・だって俺がそういうふうにしたんですから」
「望月・・・、嘘だろ・・・?」
ーー作られた感情
「それでもッ、それでもオレは、お前が好きだ。」
ーー真実の愛とはなんなのか
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