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同じて和せず-3
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カタリ、と微かな音をたてて幸田はキャスター付きの椅子から立ち上がった。
「高等部三年、生徒会長の幸田征之です。引き継ぎが終わるまでの短い間だけど、よろしく」
こうして近くで見てみると、壇上に立っている時の印象とはまた違って見える。——そもそもスラッとしていて落ち着いた大人っぽい先輩だな、くらいの印象だったというのも大いにあるだろうが、思っていたよりも線が細くてちょっと目を離したら消えてしまいそうな雰囲気、というか。マイクを通さない肉声はお世辞にも力強いとは言えないものだし、これがいつか凪沙の言っていた“儚げ美人”というやつだろうか。男だけれど。
軽く頭を下げた幸田は、横にいる先ほどこの場を仕切ってくれた男子生徒に目を向ける。
「ああ、俺がやれってことね。……えー、会計の永瀬司。征之と同じく三年だし引き継ぎ終わるまでの短い期間だけど、よろしくな。用がある時は教室かアリーナのどっちかにはいるから気軽に声かけてくれ」
歯を見せて笑う姿は生徒会役員というよりも運動部のキャプテンと言われた方がしっくりくる、爽やかなスポーツマンという印象だ。永瀬は長机に腰掛けている人物に視線を向けた。
「じゃあ次、新崎。机に座るなっていつも言ってるだろうが」
「はいはーい」
言いながら、新崎と呼ばれた男子生徒は咥えていた棒付き飴を取り出して机から腰を上げる。立ち上がってみて初めて、その身長の高さに驚いた。なるほど確かに、これだけ足が長かったら椅子に座るより机に座る方が楽そうだ。
「一年A組、新崎慎之介。庶務だよー。適当によろしく」
飴を持った手を軽く振りつつそう言って、座りはしないものの机に手をついて再び飴を舐め始めた。そんな新崎を見て永瀬が苦笑を浮かべている。
「そしたらここからは新生徒会な。水無月、頼む」
新崎の向かいに立っていた水無月が静かに一歩前に出る。
「水無月累、二年です。現在は書記をしています。新しい生徒会ではどうなるかわかりませんが、どうぞよろしくお願いします」
水無月は最後に会釈をして後ろに下がる。何から何までスマートだ。
「そのまま並び順にするか。汐見」
「…………汐見大河。一年」
それだけ呟くと、室内に沈黙が落ちる。それを破ったのは、やはりというかなんというか、永瀬だった。
「汐見、試合中と同じでちゃんと声に出さないと伝わらないぞ」
「……はい」
話を聞く限り、二人は同じ部活なのだろうか。こくりと頷いた汐見の横顔に被ってピンと細い腕が伸びる。
「中等部三年、園部蘭です」
「園部蓮です」
「「よろしくお願いします!」」
左右から文字通りステレオで聞こえてきた双子の声によってやっぱりそうだよな、と今更ながら理解する。中等部から選ばれたのがこの二人で、新生徒会役員の発表があったあの日に自分と同じように名前が呼ばれていたはずだ。だから名前を聞いた時に記憶のどこかで引っかかったのだろう。……今この瞬間になるまで思い出せなかったのは、我ながらどうかと思う。
自分自身にツッコミをいれていると周囲からの視線に気がついた。周りを見ればもう挨拶をしていないのは自分だけである。
「えっあ、すんません! 一年C組真柴理仁、なんで選ばれたのかまだよくわかってないですけど、頑張ります!」
よろしくお願いします、とその勢いのまま頭を下げる。焦りすぎて声が裏返った気がするし、変な顔をしていた気もする。正直思い出したくない。この場にいる全員今の挨拶は忘れて欲しい。
自分のせいでしかないことは見て見ぬふりをして顔を上げると、微笑む永瀬と目が合った。その視線が生温かいように感じるのは考えすぎだと思うが、さすがに直視はできず目をそらした。
「高等部三年、生徒会長の幸田征之です。引き継ぎが終わるまでの短い間だけど、よろしく」
こうして近くで見てみると、壇上に立っている時の印象とはまた違って見える。——そもそもスラッとしていて落ち着いた大人っぽい先輩だな、くらいの印象だったというのも大いにあるだろうが、思っていたよりも線が細くてちょっと目を離したら消えてしまいそうな雰囲気、というか。マイクを通さない肉声はお世辞にも力強いとは言えないものだし、これがいつか凪沙の言っていた“儚げ美人”というやつだろうか。男だけれど。
軽く頭を下げた幸田は、横にいる先ほどこの場を仕切ってくれた男子生徒に目を向ける。
「ああ、俺がやれってことね。……えー、会計の永瀬司。征之と同じく三年だし引き継ぎ終わるまでの短い期間だけど、よろしくな。用がある時は教室かアリーナのどっちかにはいるから気軽に声かけてくれ」
歯を見せて笑う姿は生徒会役員というよりも運動部のキャプテンと言われた方がしっくりくる、爽やかなスポーツマンという印象だ。永瀬は長机に腰掛けている人物に視線を向けた。
「じゃあ次、新崎。机に座るなっていつも言ってるだろうが」
「はいはーい」
言いながら、新崎と呼ばれた男子生徒は咥えていた棒付き飴を取り出して机から腰を上げる。立ち上がってみて初めて、その身長の高さに驚いた。なるほど確かに、これだけ足が長かったら椅子に座るより机に座る方が楽そうだ。
「一年A組、新崎慎之介。庶務だよー。適当によろしく」
飴を持った手を軽く振りつつそう言って、座りはしないものの机に手をついて再び飴を舐め始めた。そんな新崎を見て永瀬が苦笑を浮かべている。
「そしたらここからは新生徒会な。水無月、頼む」
新崎の向かいに立っていた水無月が静かに一歩前に出る。
「水無月累、二年です。現在は書記をしています。新しい生徒会ではどうなるかわかりませんが、どうぞよろしくお願いします」
水無月は最後に会釈をして後ろに下がる。何から何までスマートだ。
「そのまま並び順にするか。汐見」
「…………汐見大河。一年」
それだけ呟くと、室内に沈黙が落ちる。それを破ったのは、やはりというかなんというか、永瀬だった。
「汐見、試合中と同じでちゃんと声に出さないと伝わらないぞ」
「……はい」
話を聞く限り、二人は同じ部活なのだろうか。こくりと頷いた汐見の横顔に被ってピンと細い腕が伸びる。
「中等部三年、園部蘭です」
「園部蓮です」
「「よろしくお願いします!」」
左右から文字通りステレオで聞こえてきた双子の声によってやっぱりそうだよな、と今更ながら理解する。中等部から選ばれたのがこの二人で、新生徒会役員の発表があったあの日に自分と同じように名前が呼ばれていたはずだ。だから名前を聞いた時に記憶のどこかで引っかかったのだろう。……今この瞬間になるまで思い出せなかったのは、我ながらどうかと思う。
自分自身にツッコミをいれていると周囲からの視線に気がついた。周りを見ればもう挨拶をしていないのは自分だけである。
「えっあ、すんません! 一年C組真柴理仁、なんで選ばれたのかまだよくわかってないですけど、頑張ります!」
よろしくお願いします、とその勢いのまま頭を下げる。焦りすぎて声が裏返った気がするし、変な顔をしていた気もする。正直思い出したくない。この場にいる全員今の挨拶は忘れて欲しい。
自分のせいでしかないことは見て見ぬふりをして顔を上げると、微笑む永瀬と目が合った。その視線が生温かいように感じるのは考えすぎだと思うが、さすがに直視はできず目をそらした。
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