僕は隣国王子に恋をする

泡沫の泡

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第5章 僕は求婚されるなんて考えてもいなかった

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指定された時間になり、ローブを羽織った。
フードを深く被ることも忘れない。
まだ狙われているから被っておけ、とレオからの伝言であった。

レオ曰く、本日はデート。
日輪の国に戻ってきてからというもの、屋敷から出られていないので、外に出るのは楽しみだった。
それに、フードを被っていれば街人も僕を変な目で見ないであろう。

窓に頬杖をつき、レオを待つ。
程なくして、レオが塀を乗り越えてきた。

「ほら、ユヅキ。行こう」

レオの手を握り塀に向かう。
……ちょっと登れそうにない。

塀をなかなか登らない僕を見兼ねて、レオが膝をたたみ背中を向ける。

「ほら、乗って」

おんぶってことだろうか。
しかし、塀を登らないとお出かけもできない。
恥ずかしいが、意を決してレオの背中にしがみついた。

レオは軽々と立ち上がり、塀を飛び越える。
下に降りると同時に、お腹がひゅっとする感覚。僕は小さな悲鳴を上げた。

「大丈夫か」

ゆっくりとレオの背中から降りる。
「大丈夫」と冷や汗ながらに笑って答えると、レオはゆるく手を握ってきた。
にこりとレオの笑った顔が僕を覗き込んだ。

「あの、レオ、手……」

「デートだって、言っただろう? それとも、嫌なのか」

レオの眉が下がる。
嫌だなんて、そんなわけはない。
ふるふると首を降った。
レオは返事をするようにぎゅっぎゅっと、僕の手を強く2回握る。
嬉しそうな表情だった。






仲良く歩く二人の後ろに、怪しい影が迫っていた。
地面を蹴る音が、タッタッタッタッと聞こえる。
小さな、微かな足音であった。
先に気がついたのはレオナルドだった。
迫ってくる相手に対しレオナルドは、帯刀した剣に手を添えて構える。

次の瞬間、金属のぶつかり合う甲高い音が響いた。
レオナルドは、腕に衝撃が伝わるのを感じた。

(……重い! )

相手は訓練を積んでいる人間であるとレオナルドはすぐに理解した。
結月の安全を確認し、すぐに身を翻して次の一撃を繰り出した。
何度も何度も金属を擦り合わせる。
一度相手から離れ、荒い息を整えながらレオナルドは構え直した。

「あっ、」

ふと、後ろにいる結月から悲鳴が漏れた。
ハッとして、レオナルドは後ろを振り向く。

「ユヅキ!! 」

黒ずくめの男に結月は抱きかかえられていた。
そのすぐ後ろには車が。
このままでは、攫われる、。

自分のことはそっちのけで、結月の元へ走るレオナルド。
刀を持つ相手に背を向けてしまった。
結月の表情が強ばる。

「だめ、レオっ……!! あぶない、」

後ろを振り向いたレオナルドの目の前には刀の矛先が。
結月は力の限り叫んだ。
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