1 / 1
第1話 1本目
しおりを挟む
4月から大学生になる僕は、バイトに励んでいた。力自慢ではないので、コンビニの夕方のシフトや個人料理屋で働いていた。
これらのバイトの良いところは制服がある所である。身なりというかお洒落に無頓着だった僕はバイト中はそこの制服を着れば良いので大変助かった。
4月からはそうはいかないらしい。毎日私服を着るのだ。非常に苦手なのだけれども、今はスマホがあるので色々調べる事が容易い。
『大学生の服装』と検索してなるべく無難且つ安価な物を調べまくった。こういう時の為にバイトを複数掛け持ちし資金作りをしたり、同年代のバイトの人達の服装をこっそり参考にしたりしていたのだ。
優しいバイトの先輩達は、お下がりのChampionのスウェットやadidasのジャージをくれたりしたので、買い足す服を吟味して予定より安くすることができた。
買い物しているところを友達に見られたくない(あまりお洒落に詳しくないのもある)僕は、一人で買い物に出かけ、無事に大学生活を送る為の服を一通り買い揃えて満足して最寄り駅に帰ってきた。
思ったより楽しかったしお洒落も悪くないな、なんてもう気持ちは既に自称中級者みたいな感じでフワフワしながら帰路につく。
お店のショーウインドウに映る自分の姿を見て、今日買った服達を着る妄想をしてみたりしていた。
「ん? なんか格好良い時計が並んでるな」
駅前のお店で時計屋なのは知っていたが、普段使いのG-SHOCKで満足していた僕は正直時計に興味が無かった。
そろそろちゃんとした時計をした方がいいかな、とその時僕はふと思った。
この時点の僕の知識では、ちゃんとした時計というのはベルトや時計自体が金属の時計の事である。ほとんど時計に関する知識は無いのであった。
『Le temp』というお店の看板を眺めながら入店すると、見覚えのある顔の店員が目に入った。
「あれ? 杏さん? ここでバイトしてるの?」
見覚えのある店員は、中学時代の同級生の杏さんだった。2年間同じクラスだったこともありそこそこ仲が良い。
「いらっしゃいませ、未来《みらい》君じゃない。同窓会ぶりね」
杏さんはびっくりした様な表情を見せたが、すぐに笑顔に戻った。同窓会ぶりという言葉通り、以前行われた中学の同窓会では結構喋っていたので思わず嬉しくなる。
「うちが時計屋なのよ。たまにこうやって店頭に立ってるの。もしかして私に会いに来てくれたのかな? なんて少し思っちゃった」
杏さんは照れ隠しのように笑った。杏さんとは隣の席になったこともあり、中学時代はよく話していたことを思い出す。
「外から見てなんか良いなって思って気が付いたら入ってたよ。杏さんも4月から大学だったよね?」
「そうだよー。県内の通える所にしたわ。こうやってお店のお手伝いも出来るしね。大学生活用の新しい時計をお探しで?」
「そうなんだよ。ずっとこれ使ってたからさ。ちゃんとしたやつが欲しくなって」
どれどれ、と杏さんは僕の腕に視線を向けた。
「あら、DW-5600じゃない。定番モデルだしどんなコーディネートにも合うと思うけど」
私G-SHOCK結構好きなのよね、と杏さんは僕の時計を見て呟いた。
「なんていうか、もっとこう大人っぽいのが欲しいんだよ。金属の時計っていうの?」
「金属ケース、ブレスの時計がいいのね。まぁG-SHOCKともう一本あってもいいわね」
「そうそう! 何かオススメないかな?」
時計屋の店員にオススメを聞いてみる。合理的であろう。
「オススメしか置いていないのだけれど、そうね。クォーツでいいの?」
聞き慣れない単語が杏さんから飛び出してきた。
「へっ!? なんて?!」
「ごめんごめん。未来君、まだ今日は時間ある? ちょっとゆっくりしていきなさいよ。えーっと腕時計の駆動方式はね、電池で動くクォーツ式とゼンマイで動く機械式の大きく2つにわけられるの」
これらのバイトの良いところは制服がある所である。身なりというかお洒落に無頓着だった僕はバイト中はそこの制服を着れば良いので大変助かった。
4月からはそうはいかないらしい。毎日私服を着るのだ。非常に苦手なのだけれども、今はスマホがあるので色々調べる事が容易い。
『大学生の服装』と検索してなるべく無難且つ安価な物を調べまくった。こういう時の為にバイトを複数掛け持ちし資金作りをしたり、同年代のバイトの人達の服装をこっそり参考にしたりしていたのだ。
優しいバイトの先輩達は、お下がりのChampionのスウェットやadidasのジャージをくれたりしたので、買い足す服を吟味して予定より安くすることができた。
買い物しているところを友達に見られたくない(あまりお洒落に詳しくないのもある)僕は、一人で買い物に出かけ、無事に大学生活を送る為の服を一通り買い揃えて満足して最寄り駅に帰ってきた。
思ったより楽しかったしお洒落も悪くないな、なんてもう気持ちは既に自称中級者みたいな感じでフワフワしながら帰路につく。
お店のショーウインドウに映る自分の姿を見て、今日買った服達を着る妄想をしてみたりしていた。
「ん? なんか格好良い時計が並んでるな」
駅前のお店で時計屋なのは知っていたが、普段使いのG-SHOCKで満足していた僕は正直時計に興味が無かった。
そろそろちゃんとした時計をした方がいいかな、とその時僕はふと思った。
この時点の僕の知識では、ちゃんとした時計というのはベルトや時計自体が金属の時計の事である。ほとんど時計に関する知識は無いのであった。
『Le temp』というお店の看板を眺めながら入店すると、見覚えのある顔の店員が目に入った。
「あれ? 杏さん? ここでバイトしてるの?」
見覚えのある店員は、中学時代の同級生の杏さんだった。2年間同じクラスだったこともありそこそこ仲が良い。
「いらっしゃいませ、未来《みらい》君じゃない。同窓会ぶりね」
杏さんはびっくりした様な表情を見せたが、すぐに笑顔に戻った。同窓会ぶりという言葉通り、以前行われた中学の同窓会では結構喋っていたので思わず嬉しくなる。
「うちが時計屋なのよ。たまにこうやって店頭に立ってるの。もしかして私に会いに来てくれたのかな? なんて少し思っちゃった」
杏さんは照れ隠しのように笑った。杏さんとは隣の席になったこともあり、中学時代はよく話していたことを思い出す。
「外から見てなんか良いなって思って気が付いたら入ってたよ。杏さんも4月から大学だったよね?」
「そうだよー。県内の通える所にしたわ。こうやってお店のお手伝いも出来るしね。大学生活用の新しい時計をお探しで?」
「そうなんだよ。ずっとこれ使ってたからさ。ちゃんとしたやつが欲しくなって」
どれどれ、と杏さんは僕の腕に視線を向けた。
「あら、DW-5600じゃない。定番モデルだしどんなコーディネートにも合うと思うけど」
私G-SHOCK結構好きなのよね、と杏さんは僕の時計を見て呟いた。
「なんていうか、もっとこう大人っぽいのが欲しいんだよ。金属の時計っていうの?」
「金属ケース、ブレスの時計がいいのね。まぁG-SHOCKともう一本あってもいいわね」
「そうそう! 何かオススメないかな?」
時計屋の店員にオススメを聞いてみる。合理的であろう。
「オススメしか置いていないのだけれど、そうね。クォーツでいいの?」
聞き慣れない単語が杏さんから飛び出してきた。
「へっ!? なんて?!」
「ごめんごめん。未来君、まだ今日は時間ある? ちょっとゆっくりしていきなさいよ。えーっと腕時計の駆動方式はね、電池で動くクォーツ式とゼンマイで動く機械式の大きく2つにわけられるの」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
婚約破棄?いいですけど私巨乳ですよ?
無色
恋愛
子爵令嬢のディーカは、衆目の中で婚約破棄を告げられる。
身分差を理由に見下されながらも、彼女は淡々と受け入れようとするが、その時ドレスが破れ、隠していた自慢のそれが解き放たれてしまう。
婚約者が聖女を選ぶことくらい分かっていたので、先に婚約破棄します。
黒蜜きな粉
恋愛
魔王討伐を終え、王都に凱旋した英雄たち。
その中心には、異世界から来た聖女と、彼女に寄り添う王太子の姿があった。
王太子の婚約者として壇上に立ちながらも、私は自分が選ばれない側だと理解していた。
だから、泣かない。縋らない。
私は自分から婚約破棄を願い出る。
選ばれなかった人生を終わらせるために。
そして、私自身の人生を始めるために。
短いお話です。
※第19回恋愛小説大賞にエントリーしております。
冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件
水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」
結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。
出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。
愛を期待されないのなら、失望させることもない。
契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。
ただ「役に立ちたい」という一心だった。
――その瞬間。
冷酷騎士の情緒が崩壊した。
「君は、自分の価値を分かっていない」
開始一分で愛さない宣言は撤回。
無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。
以後、
寝室は強制統合
常時抱っこ移動
一秒ごとに更新される溺愛
妻を傷つける者には容赦なし宣言
甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。
さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――?
自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。
溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる