転生令嬢はもっとゆめかわいいをお望み

しおだだ

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24 御前

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ブノワトの二番目の姉は、はじめはブノワトと同じように家のために王都に来たらしい。でも兵士の彼と出会って恋に落ちて、子供も出来て――自身の両親を恥じるようになった。

そして夫と子供のために王都に身を眩ませた。

妹たちには酷なことをしたと悔いていたそうだが、ブノワトが両親から受けた仕打ちを考えれば、致し方ない判断だったとも思う。


「一番上の姉だけには居所を伝えていたらしいよ」

「そうなの…」


アドリアンの言葉にレイラは嘆息した。元伯爵のお家事情には息がつまる。


「それで、アドリアン」


ルチアーノが厳しい声で問いかける。


「あの門兵の彼とはいつから知り合いだ?」

「…さあ、なんのこと?」

「やっぱり……!」


しらばっくれる王子にルチアーノの背毛が逆立つ。…どうやら脱走ルートが発覚したみたい。



***
「いいのかしら、わたくしまで。緊張するわ」

「大丈夫」


どきどきする胸を押さえていると、ルチアーノがそっと手を握ってくれた。あたたかい優しさが沁みる。

ブノワトを送り出した後、レイラたち四人は国王陛下の元へと向かっていた。ブノワトについて報告をするためだ。


「というより、レイラも呼ばれているんだよ」

「え?」


アドリアンの言葉にレイラは首を傾げる。

どうして?

それを訊く前に謁見の間に辿り着いてしまう。
王子殿下の執務室より大きくて堅牢で豪奢な扉だ。


「陛下、アドリアンです」

「どうぞお入りください」


アドリアンの声に宰相の応えが返って、四人は入室した。


「失礼致します」


頭を垂れて膝をつき最敬礼の形をとると、すぐに渋い低音ボイスが答える。


「よい。楽にしろ」

「では」


あっさりと立ち上がったアドリアンに続いて、レイラたちも顔を上げる。

一段高い玉座には藍色の髪の国王陛下がおり、その左右に宰相と外務大臣、将軍が控えていた。言うまでもなくレイラたちの父親である。


「父王。ブノワトは予定通り次姉に保護してもらいました」

「…そうか。お前たちも大変だったな」


国王陛下はそう労りの言葉をかけてくれる。


「御心遣いありがとうございます」


一番年長者であるマルセルが答えて、レイラも慌てて頭を下げた。


「さて、レイラ・モンタールド」

「は、はい…!」


いきなり名指しされて肩が跳ねる。


「いま巷ではパピヨンという店が人気だと聞いたが、お前の店だそうだな」

「はい。そうでございます」

「では店主のお前へ報告がある」


陛下が促して、モンタールド侯爵が一歩前に出た。


「レイラ」

「はい……!」


ぴ!と背筋を伸ばす娘に、父はふっと目を細める。


「地方領にある紡績会社からの仕入金額について、以前にレアード商会から指摘があっただろう?」

「ええ、ありました」


実質二倍の価格で商品が卸されていたと、黒い商人から報告を受けた件だ。


「その件で紡績会社の帳簿を精査したら、残念だが不正が発覚した。そして余剰金の一部はクロフォード夫人に流れていたんだ」

「「え……っ!?」」


レイラとルチアーノの声が重なる。


「それって…!」

「昨日も話したが、夫人は定期的に地方領に赴いていた。それは元伯爵夫妻に会うためではなくて、金を受けとるためだった」

侯爵は続ける。

「夫人が受け取った金額は、ブノワトの給金、つまり元伯爵夫妻に送金された額ぴったりだそうだ。…夫人が洗いざらい話してくれてわかったよ、皮肉なことにね」


「ブノワトが無心されていた金は、結局はレイラパピヨンが補填していたっていうこと…?」


なんていうこと。レイラは衝撃を受けた。


「そんな!夫人だけじゃなくて、クロフォード家にも責任の追求が必要なんじゃないですか…!?」


ルチアーノが吠える。

そうだ。レイラも悔しくて頷いた。


「それなんだが」

国王陛下が告げる。

「クロフォード夫人は南の療養所に行ってもらうことになった」


「どういうことです?」

アドリアンが眉を上げる。


「これは他言無用ですが」

宰相が言う。

「クロフォード卿は今後新設される大臣に内定が決まっています。これは以前より、それこそ卿が爵位を賜る前からの、陛下の御意志です。いま醜聞を広めるわけにはいきません」


「な…っ!父様!?」

ルチアーノが言葉を失う。


「政治的な話だ、くれぐれも内密に頼むよ?」

宰相に続けて、将軍が言う。

「お前たちの陛下への忠誠を信じている」


大人って、大人って…!!

いやと言えないレイラは小さく頬を膨らませた。子供っぽいと言われても構わない。頭では理解できても、気持ちが納得できないんだから。


「ふふ」


微かに笑ったのは、レイラの父であるモンタールド侯爵だった。


「納得しろって言われても出来ないよねえ?だから詫びの品を出せって言ったんだよ」


侯爵の呼び掛けで入ってきたのは、青い顔をしたクロフォード卿とその娘のハンナだった。
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