格闘ゲーマーの異世界転生 チートスキルの封印術～あれ？思ってたのとなんか違う～

第2章 幼年期

第9話 イズミ＝コートウェル

 チュンチュンチュン。

 家の外から小鳥の囀ずる音が聞こえる。まだ夜が明けたばかりで周りが薄暗いが、森の動物や家畜達が動き出す気配を感じる。それに併せ村の住人達も行動を開始する。そろそろ俺も起きる時間だ。

「イズミー！朝ごはんよー！そろそろ起きてー。」

「はーい！いまいくー！」

 半分起きていた俺は、キッチンから声を掛けてきた母さんに元気よく返事を返す。

 まだ冬が終わり春になったばかりなので朝は寒い。布団から出たくはないが、六歳になる俺にも仕事があるのでノソノソと身体をおこす。
 寝室のドアをあけキッチンに向かうとテーブルの上に朝食が用意されている。この家の朝食はだいたい毎日同じだ。パンと野菜のスープ、そしてコーヒー。父さんがコーヒーを好むようで子供にまで飲み物はコーヒーだ。俺はコーヒー好きだからいいけど、普通は駄目だろ。

「コーヒーの準備できたしお父さん呼んできて。」

「はーい。」

 キッチンでコップにお湯を注いでいる母さんにお願いされ家の外に父さんを呼びに行く。

 父さんはこの開拓村の村長をやっている。朝一番に見張り櫓で夜警してた村人に夜の様子を聞きに行っている。見張り櫓はうちの家から結構近く、子供の足でも二、三分といった距離だ。

「お父さーん！朝ごはんの準備できたよー！」

夜警の村人よりかなり筋肉質な俺の父さんに声をかける。

「あぁ、わかった。今行く。」

 村人との話を切り上げ此方の方に歩いてきて、俺を優しく抱えて肩に乗せる。肩車なんてこの歳でこっぱずかしいが嫌いではないので父さんにされるがままになりながら家に帰る。

 テーブルにつき三人揃い朝ごはんだ。

「いただきます！」

 パンが子供にとっては少し固いのでスープにつけてから口にいれる。日本と違い塩気が薄いがこの世界に六年もいればなれた。そう、俺がシルベールへ転生して六年、自我を取り戻して三年になる。

 イズミ＝コートウェル。これが今の俺の氏名だ。地球での名字と今の名前が似てるお陰で違和感も少なく馴染んでいる。三歳を過ぎたある時から地球での記憶が甦った。三歳までの記憶もおぼろ気ながらあるのでこの家の子供としてもすんなり受け入れられた。

「イズミ、ぼーっとしてないで朝ごはん早く食べちゃってね。」

 考え事をしていたせいで食べるのが遅くなっていたのを母さん、ケイト＝コートウェル、に咎められる。母さんは子供の俺からみてもかなりの美人だ。たれ目がちな目に泣き黒子、おっとり系な顔立。背中まである金色の髪は一つにまとめられている。

「朝の仕事を終わらせたら父さんと剣の稽古をしよう。」

 俺の朝の仕事とは家畜の世話だ。餌やりをし納屋から出してやる。柵の内に牛や山羊、にわとりを放牧させる。そのあとは家畜の様子を見ながら父さんと剣の稽古をするのがここ最近の日課になっている。

 俺の父さん、アレックス＝コートウェル。今はこの開拓村ケープ村の村長をしているけど、昔は冒険者をしていたみたい。なんと母さんも冒険者で同じパーティーだったみたい。
 父さんは、ザ冒険者！みたいなガッシリとした体格。短く切り揃えられた茶色の髪、顔立は険しいけど凛々しさもある。村長兼狩人といった立場らしい。

 そんな両親の子供の俺は、茶色の髪に目は少したれ目がち、鼻筋が通っており形のいい口元、幼いながらも父さん似の凛々しさを感じさせる。まだ六歳だけど将来を約束された容姿をしている。ビバいいとこ取り！