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6話目 初めてのお客様 ノブナガ
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『おい! お前のいた世界はどんな世界だ!』
『他にも異世界人はいるのか!』
『空の上にいるなんて神様なのですか!』
『ムーンはどんなところなんだ!』
「わぁ…騒がしい。はやく買って、ここに来て欲しいんだけど」
僕は商品感想欄を椅子に座りながら見ていた。
誰も買わないのだ。
『魔法や人間以外の知的生命体が空想上のもので、マナが存在せず、代わりに科学という理がある世界です。人は鉄の鳥や鉄の船を作り、月にまで人を送り、アース全体の人口は100億にまで行くかもしれません、そんな世界から来ました』
ついでにここからの景色も撮って貼り付けておくか。
商品スクショ機能があるのだ。
このマーケットすごい。
さらに感想欄はざわざわとしていったがなかなか買おうという人はいないらしい。
質問は無視。
これ以上話すと大事な商品の価値が減っちゃうからね。
『なんとぉぉぉぉ! これならDPを貯めておくんだった! 30万DPなら即買いなのですが!? 直接ムーンに行くにはどのようにしたらいいのですかぁぁ!』
おお、好感触な人が。
このぐらいは買う上で教えておかないといけないかな。
『えっと、直接の場合はまず空を超えて宇宙空間にでて、さらにはアースを7周半する距離をかなりの速度で進めば来れますよ。宇宙空間には空気もなくて、あと月も動いているので直線で来るにはかなりの速度が必要で……となかなか大変です、この世界だと魔法でこちらにすぐにこれるんですかね?』
『やはり世界は地動説なのか! ワタクシは間違ってなかった!そして自然はワタクシ達にとても厳しい!』
うーん、買わないのか。
こういう研究家っぽい人には是非来てもらって色々話したいのに。
一人でも買ってもらえればなぁ。
まぁ、あとでこの人、トレントさんの商品を見てみるか。
「はぁー」
視線を上に向ければ絶景。
無音の世界。
ただ自分の息遣いがあるだけ。
呼吸しなくてもいいけど落ち着かないからね。
うん、この景色を眺めながら死ぬなら後悔はないかもしれない……ないぞ。
死ぬにはいい景色だ!
「どうかされましたか、ムーン様」
セバスが尋ねてきた。
少し後ろで無音でいられるセバスはすごいな。
正に執事だ。
「いやーあと30分ぐらいしたら僕死んじゃうんだよね」
元気に言ったつもりが若干涙目になってセバスに答える。
「はい?」
「このままここからの景色を買ってくれる人がいないとDP尽きて死んじゃうんだ。短い間だったけどありがとう」
「なるほど。わかりました、ムーン様地下へ行きましょう、ダンジョンの維持を節約すればなんとかなるのではないですか」
「そんな延命はしたくないな。死ぬならここからの景色を眺めながら死にたいし。そもそも一旦維持を切ったらまた高いDPを払って付与しなければいけなくなるからこの景色を売れなくなっちゃうことは、わかって言ってるんだね。ありがとう」
「わかりました。ムーン様」
それから数分後、ノブナガからの購入の通知が来た。
「きた! これで色々できる!」
椅子から立ち上がり、すぐに購入の許可を出した。
アースの衛星ムーン、そこに一人の男が立っている。
瞳が赤く、赤い侍装束を着た日本人風のたくましい身体をした翁である。
(まさか、日本風の人が初めてのお客様になるとは思わなかったな。異世界だから日本も何もないけど。しかもノブナガって……。あとこう、もう少し、なんか、ダンジョンマスターだし、もっとモンスターしてる感じの人とか来るのかと期待していたんだけど人型だ。威圧感があるし、感想欄に質問もしてこなかったし、侍?武人気質?脳筋?仙人?この世界の情報を詳しく知っている人だとなおいいんだけどなぁ)
と、つらつら考えている間にもノブナガの頬には涙が伝っていた。
(もう15分ぐらいは経ったと思うけど、この様子だともう少し待つか)
ノブナガから見ると僕の頭上あたりにアースが輝いているから、僕のことそっちのけで見入ったのだ。
その間僕はどうでもいいことを考えていた。
(それにしても転送はテレポートやワープとかじゃなくジャンプだな。ジャンプドライブ。今度からジャンプと言おうかな。転送もカッコいいけど転送よりジャンプの方がカッコイイと思うのは僕だけかな。いや、まてよ。転送せよ! ジャンプせよ! だと転送の方がカッコいいよね。カツアゲになっちゃうし。転送の方が有名だし。SF物の見過ぎかな。光と音がまんまジャンプドライブみたいだったけどなぁ。そもそも瞬時にテレポートができる異世界ってすごいな。ダンジョンマスター限定なのだろうか。色々聞きたいな)
と……ノブナガをじっくり見つめているとようやくノブナガが口を開いた。
「これほど……美しい、とは……おお、済まない。我を失っておった。お主がムーンとやらか」
手で軽く涙を払い、ノブナガがこちらを見た。
ノブナガが腰に刺した刀に軽く手を置いたのには、リアルな侍の動きに感動と少しの恐怖を抱きつつ挨拶する。
「はじめましてノブナガさん、僕がこのダンジョンの主のムーンです」
『他にも異世界人はいるのか!』
『空の上にいるなんて神様なのですか!』
『ムーンはどんなところなんだ!』
「わぁ…騒がしい。はやく買って、ここに来て欲しいんだけど」
僕は商品感想欄を椅子に座りながら見ていた。
誰も買わないのだ。
『魔法や人間以外の知的生命体が空想上のもので、マナが存在せず、代わりに科学という理がある世界です。人は鉄の鳥や鉄の船を作り、月にまで人を送り、アース全体の人口は100億にまで行くかもしれません、そんな世界から来ました』
ついでにここからの景色も撮って貼り付けておくか。
商品スクショ機能があるのだ。
このマーケットすごい。
さらに感想欄はざわざわとしていったがなかなか買おうという人はいないらしい。
質問は無視。
これ以上話すと大事な商品の価値が減っちゃうからね。
『なんとぉぉぉぉ! これならDPを貯めておくんだった! 30万DPなら即買いなのですが!? 直接ムーンに行くにはどのようにしたらいいのですかぁぁ!』
おお、好感触な人が。
このぐらいは買う上で教えておかないといけないかな。
『えっと、直接の場合はまず空を超えて宇宙空間にでて、さらにはアースを7周半する距離をかなりの速度で進めば来れますよ。宇宙空間には空気もなくて、あと月も動いているので直線で来るにはかなりの速度が必要で……となかなか大変です、この世界だと魔法でこちらにすぐにこれるんですかね?』
『やはり世界は地動説なのか! ワタクシは間違ってなかった!そして自然はワタクシ達にとても厳しい!』
うーん、買わないのか。
こういう研究家っぽい人には是非来てもらって色々話したいのに。
一人でも買ってもらえればなぁ。
まぁ、あとでこの人、トレントさんの商品を見てみるか。
「はぁー」
視線を上に向ければ絶景。
無音の世界。
ただ自分の息遣いがあるだけ。
呼吸しなくてもいいけど落ち着かないからね。
うん、この景色を眺めながら死ぬなら後悔はないかもしれない……ないぞ。
死ぬにはいい景色だ!
「どうかされましたか、ムーン様」
セバスが尋ねてきた。
少し後ろで無音でいられるセバスはすごいな。
正に執事だ。
「いやーあと30分ぐらいしたら僕死んじゃうんだよね」
元気に言ったつもりが若干涙目になってセバスに答える。
「はい?」
「このままここからの景色を買ってくれる人がいないとDP尽きて死んじゃうんだ。短い間だったけどありがとう」
「なるほど。わかりました、ムーン様地下へ行きましょう、ダンジョンの維持を節約すればなんとかなるのではないですか」
「そんな延命はしたくないな。死ぬならここからの景色を眺めながら死にたいし。そもそも一旦維持を切ったらまた高いDPを払って付与しなければいけなくなるからこの景色を売れなくなっちゃうことは、わかって言ってるんだね。ありがとう」
「わかりました。ムーン様」
それから数分後、ノブナガからの購入の通知が来た。
「きた! これで色々できる!」
椅子から立ち上がり、すぐに購入の許可を出した。
アースの衛星ムーン、そこに一人の男が立っている。
瞳が赤く、赤い侍装束を着た日本人風のたくましい身体をした翁である。
(まさか、日本風の人が初めてのお客様になるとは思わなかったな。異世界だから日本も何もないけど。しかもノブナガって……。あとこう、もう少し、なんか、ダンジョンマスターだし、もっとモンスターしてる感じの人とか来るのかと期待していたんだけど人型だ。威圧感があるし、感想欄に質問もしてこなかったし、侍?武人気質?脳筋?仙人?この世界の情報を詳しく知っている人だとなおいいんだけどなぁ)
と、つらつら考えている間にもノブナガの頬には涙が伝っていた。
(もう15分ぐらいは経ったと思うけど、この様子だともう少し待つか)
ノブナガから見ると僕の頭上あたりにアースが輝いているから、僕のことそっちのけで見入ったのだ。
その間僕はどうでもいいことを考えていた。
(それにしても転送はテレポートやワープとかじゃなくジャンプだな。ジャンプドライブ。今度からジャンプと言おうかな。転送もカッコいいけど転送よりジャンプの方がカッコイイと思うのは僕だけかな。いや、まてよ。転送せよ! ジャンプせよ! だと転送の方がカッコいいよね。カツアゲになっちゃうし。転送の方が有名だし。SF物の見過ぎかな。光と音がまんまジャンプドライブみたいだったけどなぁ。そもそも瞬時にテレポートができる異世界ってすごいな。ダンジョンマスター限定なのだろうか。色々聞きたいな)
と……ノブナガをじっくり見つめているとようやくノブナガが口を開いた。
「これほど……美しい、とは……おお、済まない。我を失っておった。お主がムーンとやらか」
手で軽く涙を払い、ノブナガがこちらを見た。
ノブナガが腰に刺した刀に軽く手を置いたのには、リアルな侍の動きに感動と少しの恐怖を抱きつつ挨拶する。
「はじめましてノブナガさん、僕がこのダンジョンの主のムーンです」
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