1 / 7
第零話 太陽帝国にいるごくごく普通のオタク
しおりを挟む「隣国の挑発行為を許すなー! 許すなー! 我々の軍備を増強しようー! しようー!」
太陽帝国の議事堂前で30人前後の人々が集まっていた。
もちろん当然のことながら彼らは警察の許可を取って合法的に抗議を行う有志の市民たちだ。
政治的な活動を行っている、そう聞くと一見意識高い系などと思われるかもしれないが、この国会議事堂前に集まっているものたちの大半の風貌は完全にオタクのそれである。
だが不潔感はない。
この太陽帝国が世界に誇るアニメ文化の影響を受けた者たちだからだ。
そこに俺は向かう。
俺も彼らと同じように好きなアニメのヒロインが書かれたTシャツを着ている。
嫁ではなくヒロインである。
「おー!アキラがきたぞ!」
「しようー!……お、同士アキラよー!」
「アキラー! 握手してくれーーー!俺も来ちゃったぜー!」
「あー皆さんどもー!」
「アキラさん!今日はツアー企画ありがとうございます!よろしくお願いしますー!」
「お、ハットリさんですかこちらこそよろしくですー」
このデモは俺が提案したツアーの一部なのである。
昨今の情勢が不穏なのは確かだし、待ち合わせ場所が分かりやすくなるゆえである。
叫んでる内容も現政権の方針と同じだし過激なものでもないから完全にお遊びである。
こうしたデモ文化も太陽帝国独自のものだ。
ちょっとした批判を互いにしあうのが礼儀でこうしたデモも議員や国に対して敬意を表すことになるわけで。
よくネットではおかしな国だな太陽帝国(誉め言葉)と言われるがお前たちも十分おかしいぞと言いたい。
他国の人と話すときはなるべく気をつけるようには皆しているが、こう行った話題は度々口喧嘩になることもあるらしい。
話を戻して、それからしばらくして、俺は演説をすることになった。
「えーおほん! 先進国であり先の大戦においての敗者でもありながら長らく平和を享受していた我が国太陽帝国は隣国の挑発行為に手をこまねいている!
それは何故か!
この近代化の進んだ国際社会においては如何に弱小な隣国であろうと、その背後には様々な他の大国の思惑が絡み合うからだ。
我が国内部にも多数の工作員がいることだろう!
だがメディアは先の大戦の教訓を忘れたのかのように、いや、戦争という脅威をただ目を閉じてないかのようにふるまっている。
そこには我が国を狙う大国の工作員も紛れ込んでいるのかもしれない!
だからこそ今ここにネットを介して有志諸君が集まったのである!
武力のバランスが崩れれば戦争になってしまう!
是非我が国の議員には隣国から自国を守れるようにしっかりとした軍備を整えてもらいたいものである!
決まった……
あー、あとはネットで見ている諸君!
諸君からの応援が今日の打ち上げの質に影響する、視聴者はぜひぜひ応援よろしく!
あと一時間デモをやったら博物館巡り! 戦艦大和が遂に我々も見れるぞ!!」
「おおー!!大和楽しみだーー!俺はこの日の為に貯金したんだぞー!」
「アキラー!途中からかっこ悪いぞー!」
「もっとまじめにやれー! 俺も来たぞー!」
これでわかると思うが、俺たちは高尚なものではない。
単なるにわか軍事オタクである。
ネットで交流を持ったオフ会のノリでこんなデモをやったわけが、今日の本命だってわざわざ田舎から出てきて先の大戦の歴史的建造物を見ることだ。
もっともらしくデモをしたがこれも先人の気持ちを知ろうというオタク心である。
意識高い系、勘違い系、とも批判されたりするのが俺たちである。
実際にそうかもしれないが俺たちは俺たちでそれが好きなのだ。
意識高い系と勝手に決めつけるのよくないと言いたい。
まぁ繰り返すが太陽帝国は寛容の国なのだ。
オタク活動も巷で白い目で見られることはない。
物好きなものだな程度の好感は持ってもらえるのだ。
戦艦大和を見るときは特殊な制度があって金がかなりかかるんだがそれは置いとこう。
そんなことはもうどうでもよくなるのだから。
一日のツアーが終わった。
俺は数人のオフ会のメンバーの会話を聞きながら一緒に帰路についていた。
「いやーーー!今日は楽しかった! 実物の大和がまさかあんな迫力あるものとはなー! やはりああいったものには精神が宿っていると僕は思ったね。感じたよ」
「戦艦なんて浮かぶ棺桶だろ、ワロタ。なんて当時は絶対に言えませんね。先人が必死に作ったのがわかりますよ。あんなのが海に浮かんでたら怖くて船を出せないですよ。先の大戦での離島防衛戦で沈まなくて良かったですよ本当に、ああして見れるなんて……ああ、俺は感動で感動で、よかった」
「司令部もすごかったな」
「ああー改修中の機密部分も見たかった……」
信号を皆で渡ろうとしたとき、前方に小学生ぐらいの小さな女の子が立っていることに気づいた。
青信号だというのに渡ろうとしていない。
スマホを操作しているからだ。
スマホ、スマフォ、熱中しすぎは危ない。
そんな風に小学生ぐらいの女の子に注目していると俺と女の子を交互に眺めてあるメンバーが言った。
「アキラさん、本当にありがとうございましってあれれ、むむむ、まさかアキラさんも吾輩と同じ同士ですかな」
「そうだが違う、犯罪を犯す気はないぞ」
「いやいや、それこと真の同士、最近の歩きスマホに憤慨する良き心をお持ちだ。ああ我々には誠に辛い世の中ですな、この国を離れると思わない、いい国でもありますし……」
「いや、一括りにしないでくれないか。愛する相手の好みは違うはずだろ!」
「おおー!かっこいいですな!まさしく同士!」
なんて他人にはキモいと思われそうな妙な一体感を得てしまったが、俺は信号を渡った後も後ろを向きその女の子を眺めていた。
なぜだか、とても気になったからだ。
「同士、流石にそれは」
眺めていると先ほどの同士が話しかけてくるが無視だ、とても気になるのだ。
女の子はスマホから目を話して信号を見ると歩き始めた。
「まずいだろ!」
俺は女の子に向かって駆け出した。
赤信号なのに前に歩き出したからだ。
車はいないと思ったが運悪くトラックが突っ込んできた。
「邪魔してすまん!俺の分まで生きてくれ!」
「きゃあ!」
俺は女の子に突撃をかまし、代わりにトラックに引かれて意識を失った。
多分俺は即死だった。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
僕だけレベルダウンな件〜敵を倒せば倒すほど弱くなるので、目立たずスローライフを目指します〜
小林一咲
ファンタジー
まったく数奇な人生である。
僕の名前は橋本 善。
正真正銘の日本人だが、今は異世界にいる。
理由なんてわかるはずがない。
死んだのか、はたまた何かの召喚に巻き込まれたのか。
僕には固有スキルがあった。
それは、スキル【レベルダウン】。
魔物を倒し、経験値を得るほどレベルやステータスがさがるというものだ。
だから僕は戦わない。
安心安全のスローライフを目指すんだ!!
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる