不良くんは一途に愛してる!

鶴森はり

文字の大きさ
15 / 41
噂話は十中八九嘘

不良くんらしい生き方

しおりを挟む
「仕方ねぇな、俺が生き方教えてやる」

「やだよ」

「まずルールだが」

「きいてよ」

 くるりと人差し指をたてて、回す。人の話を聞かないのが不良らしい。

「善悪、やった事に責任をとれるか、絶対踏み越えてはいけない一線とか理解してたら適度に違反していーんだよ」

「ええ……」

「学校で服装を崩そうが内申点を気にしねぇなら好きにすりゃいいんだ。死人なんて出ねぇ」

「気になりますけど」

「社会人になったら嫌でも守ることになんだ。ガキの特権だ、好きに生きれんのは」

 一瞬だけ、ここではない何処かを見つめた気がした。だがすぐさまに哀愁は霧散し、にやりとあくどく笑った。

 彼の言葉は自己責任と、将来大人になればルールに従うと伝えている。その変に真面目な発言に白雪は、ようやく顔が緩んだ。

「……不良じゃないみたい」

「不良じゃねぇよ、俺は」

「ピアス大量、髪染めて喧嘩してネクタイもしないのに?」

「それたけで不良とか言うな」

「それだけかなぁ」

 彼は校則違反はする。喧嘩もする。

 だが敵意のない一般人は殴らない。盗みもしない。犯罪には手を染めない。困っている人は放っておかない。

 彼なりに線引きがあるのだろう。警察に世話なる行為は駄目だと断言した。

「お前は片意地を張りすぎ。もっと柔軟になれよ。嫌なもんに嫌って言うのは間違いでもない。無理に人の作った形に入らなくていい」

 ぽん、と頭を撫でられる。やせ我慢して大丈夫だと言い張る意固地な心を解きほぐすように、優しさを注がれて全身に行き渡る。心臓がはねて、とくとくと熱を上げていった。

「貴方はこうよって決めつけられた、用意された場所。グループで作られた隙間。そんな所に無理矢理、変形して押し込められたら自分の意思とか曲げることになる。自分を殺してまで形に入る必要ねぇんだよ。グループに所属しようが形は変えず、自分の個性を持ったまま生きろ。我慢なんてすんな」

 やはり彼は否定しない。受け入れて認めてくれる。

 喉から手が出るほど欲しかったものが、際限なく与えられて白雪は胸が一杯になり苦しくなる。嫌ではなく、肩の荷が下りたような、軽くて楽になる。

「……うん。ありがとう」

「つーことで、デートすんぞ」

「うん……うん?」

「よし。言質とった。サボるぞ」

 全て肯定したい気持ちから頷いていれば、とんでもなく、脈略もない提案をされた。

 ……でーと。デート。

 何度も心の中で復唱して、脳に伝達する。理解した瞬間、急速に顔へ熱が集まっていく。

「で、ててててでーと!」 

「なんだおまえ童貞みたいな反応して」

「は……なっ、なにっ」

 下品だと罵りたいのに舌が回らない。情けなく動揺して立ち上がる。後退ろうとした白雪に先手を打った蒼汰はするりと指を絡ませて握る。恋人繋ぎ、彼の体温が馴染んでいく。

「……男とデートしたことねぇの?」

「恋人とかいたことないっ!」

「……」

「なに。何が言いたいの」

「…………べっつに」

「なんで顔を背けるの? ねぇ? 馬鹿にしてますか? は? わ、私だっていつか恋人ぐらい」

「あ?」

「なんで怒るの……!」

 恋人などいらない。

 だが経験豊富である彼に馬鹿にされた気がして、言い訳がましく、ぼそぼそ呟けば威圧される。不良の琴線に触れたらしいが、今回も何が駄目だったのか白雪には分からない。

 舌打ちをして、何やら不機嫌そうな蒼汰は歩き出す。当然繋がれた白雪も連れて行かれる。

「何処に行くの?」

「デートだっつってんだろ」

「放課後でもいい?」

「お前は空気を読む努力しようなぁ?」

「いったい! 指に力入れないで!」

「そこまで入れてねぇわ」

 ぎゃいぎゃい騒ぎつつ空き教室を出る。

 彼の行く先など白雪には見当も付かない。仕方ないと、渋々を装って彼に続いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

処理中です...