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突然の求婚と魔法使いジョナス
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そこからのロステルの行動は早かった。
驚くことに、その日のうちに彼はジョナスに結婚を申し込んだのだ。
普段話しかけても声も出さないロステルにいきなり結婚を申し込まれたジョナスは、目玉が飛び出るかと思うほどに目を見開き、ぱかっと大きな口を開けたまましばらく固まった後で、 「えええぇーーー!?」 と大声で叫んだ。
そして、いいだけ大声を出して騒いだ後に彼女がお願いしたのは、いくらなんでも突然すぎる、お願いだから少し考える時間が欲しいということだった。
「分かった。じゃあ、待ってる」
彼女の言葉を受け入れたロステルであったが、その日からの彼は、時間の許す限りジョナスの側を離れないようにつき纏った。
ジョナスが第二騎士団に配属された当時、魔法使いの彼女を良く思っていなかったのはロステルも同じであった。
そもそも魔法使いとは、魔力のない者を下に見るものだと思い込んでいた。
実際、魔法騎士のいる第一騎士団との間には大きな溝があり、たまの合同訓練などでは魔法騎士達の人を馬鹿にしたような態度や、度が過ぎる言葉の数々に皆が辟易していた。
いくら洗濯メイドだからといって、ジョナスの魔力が凄いことは有名な話であった。だからきっと彼女の考え方も他の魔法使いと同じであろうと決めつけていたのだ。
だがジョナスと一緒に過ごすうちに、ロステルの持っていた魔法使いへの悪いイメージは少しずつ散って行った。
なにより、彼女は魔法使いとしてのプライドを持ち合わせていなかったのだ。
『何故そんなことをこのわたくしがしなくてはいけませんの?』
ジョナスはそんなことを絶対に言わない。彼女の場合、どんな些細なことも 「いいよー」 で終わるのだ。それは戦闘後の疲れ切った身体だったとしても変わることはなかった。
彼女は細かいことは気にせず良く働き、いつも楽しそうに笑っていた。何も考えていないのか、限界も考えずに無理をして、ついには魔力切れを起こして倒れることも少なくなかった。
そんな彼女を知っていくうちに、騎士団内でも彼女の身体を気遣う者が増えてきた。
他の魔法使いとは明らかに違うことが分かると、彼女の周りは次第に賑やかになっていった。
一方、ろくな会話もできないつまらない自分になど話しかけてくるわけがないと決めつけていたロステルは、快活なジョナスをいつも遠巻きに見るだけに留めていた。
だが、いくらロステルが誰にも話しかけないようにしていても、人に近付かないように気を付けていても、ジョナスは難なくその壁を突っ切って来た。
『ロステル、今よっ! 行けー!!』
大量の水で呑み込んだ魔獣を指差し、ジョナスは行け!と叫んでいる。
名前を知られていたこと、呼び捨てにされたこと、そして命令されたこと。それらはロステルにとって驚くことばかりであったが、魔獣を仕留めた後に満面の笑みを浮かべて
『やった!凄い、ロステル!』
人の背中をバシバシ叩いて興奮している彼女には取るに足らないことなのであろう。
ジョナスの側に行けば、近くにいるからという理由で話しかけてもらえる。
『ロステル、あなたも水浴びするならあそこへ行って服を脱いで?・・・でも、お願いだから全裸はやめてよね?ふざけたら水攻めだからね!』
そんなことするわけないのに、彼女はこちらを睨んでくる。
『ロステル、これってお塩の入れ過ぎなんじゃない?・・・しょっぱくない? 団長って塩分気にしてるから怒られるかもよ?』
本当は自分で味付けしたくせに、なぜか咎めるような視線をこちらに向けてくる。
『そう言えば、ロステルの声ってあまり聞かないわね。でも寡黙な所がロステルの魅力でしょう? なに?・・・は!?人がちょっと褒めたくらいで、なんでもかんでも恋愛に結びつけてんじゃないの!』
団員達にからかわれて怒ったジョナスは、手から水風船のような玉を何個も出して周囲の者達に投げつける。しかも、なぜか彼女は関係のないロステルまでも狙って来るのだ。
ニヤリと笑うジョナスの標的はその場の全員だった。
驚くことに、その日のうちに彼はジョナスに結婚を申し込んだのだ。
普段話しかけても声も出さないロステルにいきなり結婚を申し込まれたジョナスは、目玉が飛び出るかと思うほどに目を見開き、ぱかっと大きな口を開けたまましばらく固まった後で、 「えええぇーーー!?」 と大声で叫んだ。
そして、いいだけ大声を出して騒いだ後に彼女がお願いしたのは、いくらなんでも突然すぎる、お願いだから少し考える時間が欲しいということだった。
「分かった。じゃあ、待ってる」
彼女の言葉を受け入れたロステルであったが、その日からの彼は、時間の許す限りジョナスの側を離れないようにつき纏った。
ジョナスが第二騎士団に配属された当時、魔法使いの彼女を良く思っていなかったのはロステルも同じであった。
そもそも魔法使いとは、魔力のない者を下に見るものだと思い込んでいた。
実際、魔法騎士のいる第一騎士団との間には大きな溝があり、たまの合同訓練などでは魔法騎士達の人を馬鹿にしたような態度や、度が過ぎる言葉の数々に皆が辟易していた。
いくら洗濯メイドだからといって、ジョナスの魔力が凄いことは有名な話であった。だからきっと彼女の考え方も他の魔法使いと同じであろうと決めつけていたのだ。
だがジョナスと一緒に過ごすうちに、ロステルの持っていた魔法使いへの悪いイメージは少しずつ散って行った。
なにより、彼女は魔法使いとしてのプライドを持ち合わせていなかったのだ。
『何故そんなことをこのわたくしがしなくてはいけませんの?』
ジョナスはそんなことを絶対に言わない。彼女の場合、どんな些細なことも 「いいよー」 で終わるのだ。それは戦闘後の疲れ切った身体だったとしても変わることはなかった。
彼女は細かいことは気にせず良く働き、いつも楽しそうに笑っていた。何も考えていないのか、限界も考えずに無理をして、ついには魔力切れを起こして倒れることも少なくなかった。
そんな彼女を知っていくうちに、騎士団内でも彼女の身体を気遣う者が増えてきた。
他の魔法使いとは明らかに違うことが分かると、彼女の周りは次第に賑やかになっていった。
一方、ろくな会話もできないつまらない自分になど話しかけてくるわけがないと決めつけていたロステルは、快活なジョナスをいつも遠巻きに見るだけに留めていた。
だが、いくらロステルが誰にも話しかけないようにしていても、人に近付かないように気を付けていても、ジョナスは難なくその壁を突っ切って来た。
『ロステル、今よっ! 行けー!!』
大量の水で呑み込んだ魔獣を指差し、ジョナスは行け!と叫んでいる。
名前を知られていたこと、呼び捨てにされたこと、そして命令されたこと。それらはロステルにとって驚くことばかりであったが、魔獣を仕留めた後に満面の笑みを浮かべて
『やった!凄い、ロステル!』
人の背中をバシバシ叩いて興奮している彼女には取るに足らないことなのであろう。
ジョナスの側に行けば、近くにいるからという理由で話しかけてもらえる。
『ロステル、あなたも水浴びするならあそこへ行って服を脱いで?・・・でも、お願いだから全裸はやめてよね?ふざけたら水攻めだからね!』
そんなことするわけないのに、彼女はこちらを睨んでくる。
『ロステル、これってお塩の入れ過ぎなんじゃない?・・・しょっぱくない? 団長って塩分気にしてるから怒られるかもよ?』
本当は自分で味付けしたくせに、なぜか咎めるような視線をこちらに向けてくる。
『そう言えば、ロステルの声ってあまり聞かないわね。でも寡黙な所がロステルの魅力でしょう? なに?・・・は!?人がちょっと褒めたくらいで、なんでもかんでも恋愛に結びつけてんじゃないの!』
団員達にからかわれて怒ったジョナスは、手から水風船のような玉を何個も出して周囲の者達に投げつける。しかも、なぜか彼女は関係のないロステルまでも狙って来るのだ。
ニヤリと笑うジョナスの標的はその場の全員だった。
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