意地悪な姉は 「お花畑のお姫様」

岬 空弥

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契約を終わらせる為に

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 授業が終わると、ジルドナは急いでフローレンスの教室に向かった。フローレンスともう一度ちゃんと話をして説得しようと思っていた。しかし、教室からフローレンスが出てくる前にルミリアに捕まってしまった。

(まただ・・・。何度追い払っても纏わりついて来る。こいつのせいで、フローレンスに全く近づけない・・・。)

「フローレンスに話があるんだ。邪魔だから離れてくれ。」

ジルドナの冷たい口調にルミリアは恐れもしないで、ジルドナの腕を掴んだ。

「離してくれ!!言葉が通じないのか!?俺は大切な婚約者と話をしたいんだ。頼むからあっちに行ってくれ。」

大声を出しルミリアの腕を振りほどこうとしたが、やはり簡単には離れない。

「嫌です。ジル様はあの人と話す必要はありません。ジル様は、あの人が侯爵家の人間だから、仕方なく相手をされてるんですよね?本当はわたくしのことが好きなのに・・・。可哀想なジル様。ですが、わたくしがこの先ずっとジル様を癒してさしあげますからもう大丈夫です。あの人は愛し合う私達を引き裂く悪魔です。皆が、お二人の婚約解消を望んでいますわ。」

ジルドナの腕にしがみ付き、ルミリアは大声を上げた。その甲高い声は辺り一帯に響き渡り、当然、フローレンスの教室内にも聞こえていた。

 ジルドナとルミリアの言い争いが続く中、教室から出て来たフローレンスが二人の前で立ち止まり、ジルドナをじっと見た。フローレンスとまともに向き合ったのはいつ以来だろう、こんなことになってしまったというのに、フローレンスの瞳に、今は自分が映っているというだけで震えるほど嬉しくなった。フローレンスはジルドナとルミリアをゆっくり交互に見ると、落ち着いて話始めた。

「ジル。今までありがとう。貴方には、本当に感謝してるわ。あの時、貴方が助けてくれたから、私達姉弟はこうして幸せに生活できているの。シオンもね、随分成長したのよ。体も大きくなって、家庭教師も付けてもらったから、これからは、貴方と同じようにとても素敵な男性になると思うわ。私達姉弟は、貴方に助けてもらったことをこれから先も決して忘れないわ。シオンは侯爵家を立派に継いでくれると思うし、シオンが一人前になるまで、私も出来る限り協力するつもりよ。だから将来、スコット伯爵家になにかあった時は、真っ先に私達を頼ってちょうだいね。」

そう話すフローレンスの瞳は、どこか吹っ切れたような前向きな強さを感じた。

「貴女、一体なんなのよ!!ジル様は卑しい平民の貴女の話なんて聞きたくないのよ!!いい加減にしてちょうだい!!私達は愛し合って―――」

【バシッ!】

噛みつくようにフローレンスに食って掛かるルミリアの腕をジルドナが叩き落とした。

「俺の婚約者に偉そうな口を利くな。」

ジルドナが、唸るような低い声で怒った。驚きで何が起こったのかと呆然としているルミリアを突き離すと、ジルドナはフローレンスとの距離を詰めた。

「すまないフローレンス、こんな大騒ぎになってしまって・・・。二人だけで話がしたくて迎えに来たんだ。今から少し付き合ってくれないか?」

ジルドナの真剣な顔を見て、婚約解消の話をするのだと思ったフローレンスは、黙って頷いた。

フローレンスの返事を受けるとジルドナは直ぐにフローレンスの手を引いた。咄嗟にルミリアがジルドナの腕を掴んで、「行かないで!!」と叫んだが、ジルドナは何も言わずにルミリアの腕を振り払った。驚いたフローレンスが目を見開き、「えっ?」と、二人を交互に見たが、ジルドナは全て無視してフローレンスの手を強く引いて歩き出した。

 早すぎるスピードに懸命に付いて行くフローレンスだったが、しばらく歩くと、不意に後ろから声をかけられた。

「フローレンス、どこに行く!?」

足を止めてフローレンスが振り返ると、運動着姿のレイサスが息を切らせて立っていた。木刀を手に持ち、こちらに向かって露骨な不快感を表している。

「行くな。」

地を這うような太く低い声が、レイサスの怒りをそのまま表しているようだったが、フローレンスは、婚約を解消する前にジルドナと、もう一度きちんと話をしておきたかった。

「大丈夫よ、心配しないで。ジルとはちゃんと話をしなければいけないと、私も思っていたの。お願い、怒らないで?ジルはいい人だから大丈夫よ。今まで私を助けてくれていた人だもの。私を傷つけるようなことはしない。何も起こらないわ。」

「なんで二人で話す必要がある。話があるなら俺の前で話せばいい。」

「レイ・・・これは・・・私とジルの契約なのよ。だから、どうしても二人で話す必要があるの。」

「契約?・・・なんだそれ、どういうことだ!?」

「ごめんなさい・・・今はまだ話せない。でも、今からそのことでジルと話をしなくてはいけないの。」

「・・・・・・・。」

「フローレンス、そろそろ行くよ。」

少しも納得していない顔のレイサスだったが、何も言わないことを了承と解釈したジルドナが、フローレンスを促した。その声に、フローレンスも背を向けて歩き出そうとすると、

「いつもの場所で待ってる。」

レイサスの声が後ろから聞こえた。振り返ったフローレンスは、 「うん!」 と笑顔で応えてジルドナと共に歩き出した。
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