意地悪な姉は 「お花畑のお姫様」

岬 空弥

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突然の報告

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 一週間後、フローレンスとジルドナの婚約が解消になった。二人の婚約が解消になると、男爵夫妻がルミリアを連れてスコット伯爵家を訪れた。

学園でのジルドナがとった節操のない行動により娘のルミリアに傷がついたというものだ。二人は愛し合っているのだし、ルミリアをジルドナの婚約者にしろと騒ぎ始めたのだ。

家柄も教養もない男爵令嬢を伯爵家に嫁がせる訳にはいかないと、金と権力で有耶無耶にする予定だったスコット伯爵だったが、裏で何者かが動いているのか、日に日に噂は広がって行く一方だった。学園での二人の関係は、もはや知らない者がいないほど有名になっていたし、そのせいでジルドナとフローレンスの婚約がなくなったことも周知の事実だった。こちらがどんなに圧力をかけても、貴族としての責任を取れと一向に引き下がらない男爵家。そして、その後ろに見え隠れする高位貴族の大きな影のせいもあり、ジルドナはルミリアとの婚約を受ける以外の道を断たれてしまった。

 結局ジルドナは、男爵家の言い分を呑みルミリアと婚約することになってしまった。しかし、婚約するとジルドナは直ぐに行動を起こした。まずは受け継ぐはずだった伯爵位を弟のルーベルトに譲ったのだ。そして、そのまま隣国へと留学した。爵位を失ったジルドナは、もう自国に戻るつもりはなかったのだ。

 伯爵位がルーベルトに渡ると分かった時点で、あれほど本物の愛だの、責任を取れだのと攻め込んできた男爵一家は、瞬時に大人しくなった。所詮ルミリアにとって、爵位のない男になど用はなかったのだろう。あれほど揉めに揉めた二人の婚約だったが、わずか半年も経たずに解消されることとなった。ジルドナが他国に渡ってからもルミリアの節操のない男漁りは続いていたが、ルミリアが愛していたのはジルドナではなく伯爵位だ。ジルドナとフローレンスの仲を裂いたのは、ルミリアだった。などという噂が流れ始めると、肩身の狭くなったルミリアは学園を辞めるしかなくなり、高位貴族に嫁ぐのを諦め田舎の領地に戻って行ったのだった。


***

 その日は、なんの前触れもなく、フローレンスが邸に帰って来た。

「シオン、ちょっと大事な話があるの。今、少しいいかしら?」

そう言うと、挨拶もそこそこに、シオンの自室に向かい歩き出した。少し会わなかっただけなのに、久々に見るフローレンスは、以前よりも少し髪が伸びており、シンプルな淡い色のドレスに、ほんの少しの化粧を施し、最後に見た時よりも随分大人びた印象を受けた。そうして、シオンの部屋へ入ると、フローレンスはメイドにお茶を頼んだ。

「シオン、しばらく会わないうちにこんなに大きくなって。んー・・・成長して?違う?こんなに立派になって・・・?なんか変ね。なんて言うのが正解なのかしら・・・と、とにかく、こんなに素敵になって、姉さん嬉しいような寂しいような・・・。ふふっ、なんて言ったらいいのかしらね・・・少し複雑な気持ちだわ・・・。」

目の前に立つシオンの成長に驚きを隠せない様子のフローレンスは、綺麗に微笑むシオンを前にして素直にそう言った。以前よりも身長が伸びただけではなく、まともな食事のお陰か、細すぎた体もがっしりと男性っぽく変わっていた。相変わらず色白ではあったが、元々整った顔が少し大人っぽくなったのか、可愛らしい少年のイメージは、既に消えてしまっている。

「姉さんこそ、この短期間で驚くほど綺麗になったよ。少し痩せた?元々小さかった顔が、更に小さくなってしまったようだよ?学園で何があったの?心配だから早く教えてほしいな・・・。」

メイドにお茶を用意してもらうと、テーブルを挟んで向かい合って会話を始めた。

「実は・・・ジルとの婚約を解消しようと思っているの・・・。」

「は!?」

「えーと・・・。元々、婚約破棄してもらう予定ではいたでしょう?あの・・・実はね、学園に入ってからジルに好きな人が出来てしまったのよ。でね、私としてはシオンが学園に入って、侯爵家の跡取はシオンだって、周りに認めさせた上で白紙にしましょう!と、計画していたんだけど・・・、少し予定が狂ったというか・・・、それで、話をこんなに早めてしまって大丈夫かどうかシオンに相談したかったの。」

「え!? それ、本当の話なの?ジルドナ様に好きな人って・・・。」

フローレンスの話を聞き、シオンは信じられない思いで尋ねた。

「ジルの?うん、本当よ。ジルはね、ずっと私とお昼を食べていたんだけど、ある日から迎えに来てくれなくなって・・・、それからはずっと彼女とベッタリなの。二人はとても仲良しなのよ。」

「うーん・・・えーと、その令嬢ってどんな人?」

「あー・・・と、私も詳しくは知らないんだけど、どこだかの男爵令嬢ですって、えーと、たしか、エミリア様って名前だったような・・・。ふわふわの髪をこう二つに結んで、大きなリボンを付けてるわ。とても背の小さい、えーっと、こんな感じ!」

見て!?と、フローレンスは膝を曲げて、背を低く見せる。下から目をうるうるさせて無駄に瞬き回数を増やすと口を少しすぼめて、シオンの腕にしがみ付いた。

すると、それを見たシオンが、顔を真っ赤にして背の低いフローレンスをがばっと力強く抱きしめた。

「っ!! 姉さん・・・。」

「え?ちょっと、シオン!!なにやってるの!!シオンってば!!」

フローレンスが、驚いてシオンを押し返すと、

「ごめん。つい、姉さんが可愛いくて・・・。」

と、シオンは、まだ顔を赤くしたままだ。

「むっ・・・。結局、シオンもこんなタイプの女の子が好きなのね。ジルといい、シオンといい、なんだか悔しいわね!」

「ごめん。それとはちょっと違うんだけど・・・、それより姉さん、もう一度抱きしめてもいいかな?」

「はぁ!?何それ、最低!!絶対いやよ!!私だって女の子なんだから!!もう、シオンの馬鹿!!近づかないで!!」

「姉さんっ!!違うって!!僕が、可愛らしいタイプが好きとかじゃなくて、出会った頃の姉さんを思い出したから、だから、可愛くて・・・。」

シオンの赤かった顔が、一瞬で青くなっている。

「あら、そうなの?うふふ、まぁ、それならいいわ。許してあげる。」

「姉さん、それより、ジルドナ様がそんなことになって、姉さんは大丈夫だったの?どうしてすぐに僕に連絡してくれかなかったの?」

その質問を聞いて、シオンには隠し事なんてできないと、フローレンスは改めて思うのだった。

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