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睨み合い
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その日、王族特有の紫の瞳を神秘的に瞬かせ、ロナウド・アスベル第一王子の新入生代表の挨拶を最後に、入学式の終了を迎えた。ロナウド殿下を先頭に生徒達が会場を後にすると、本日入学式を迎えたシオンの周りには数名の女生徒が群がっていた。少し疲れたように愛想笑いを浮かべていたシオンだったが、自分を囲む女生徒の後ろにフローレンスを見つけるなり、速足でフローレンスの下に飛び込んで行った。
「姉さん!!」
「えっ!?ちょっ、え? シオン?」
両手を広げていきなり抱きついてきたシオンに不意を突かれたフローレンスが、声も出せずに驚いていると、
「姉さん、会いたかった!!これからは毎日一緒に居られるね!!」
と、眩しい程の笑顔を振りまいて、シオンが自分の腕に更に力を籠めた。フローレンスは、両手をバタバタさせて苦しい!と訴えていたが、嬉しそうにフローレンスの頭に自分の頬をぐりぐりと押し付けているシオンには全く気付いてもらえなかった。
フローレンスは、シオンの胸に顔を半分潰された状態で、隣で口を開けたまま目を見開いているルーナとキャシーに手を伸ばし、助けて!と、目をキョロキョロ動かし合図を送った。
「あ、あのっ、シオン君!?フローレンスの顔がね、あの、潰れて息が苦しそうよ?」
ルーナの声に、「は?」と、一瞬真顔になったシオンだったが、自分の胸に顔を潰されモゴモゴしているフローレンスを見下ろし、ぱっと両手を離した。
「ごめん、姉さん、大丈夫?」
「はぁ、はぁ、・・・。シオン・・・。」
フローレンスが潰された顔を擦りながら呼吸を整え、疲れ切ったような目でシオンを見上げると、前回会った時よりも更に背の高くなったシオンが、フローレンスを心配そうに見下ろしていた。
「姉さん、大丈夫?久しぶりに会えたものだから、つい嬉しくって・・・。」
目を伏せたシオンは、しょんぼりと反省した様子を見せてはいたけれど、顔を上げてフローレンスの顔を見た途端、「やっぱり無理!!」と言いながら、もう一度両手を伸ばし、フローレンスを捕まえるのだった。
「うっ!! シオンっ、シオンってば!!わかったから、ね?少し落ち着いて。」
今度は口を押しつぶされないように注意していたフローレンスが、どうにかシオンから抜け出すと、シオンは、離れてしまった姉を名残惜しそうに見てから、渋々自分の手を引っ込めた。
「シオン。入学おめでとう。しばらく会わないうちに立派になって、こんなに素敵な美男子が私の弟なんて、姉さん、もう!鼻高々だったわ!!式の間もね、周りのご令嬢達がシオンのことばかり見つめているから、「彼は私の弟よ!!」って、大声で自慢したくてうずうずしてたのよっ!」
腰に手を当てて、ご満悦な表情のフローレンスに向かって、シオンがにっこりと微笑むと、周囲で二人の様子を見ていた女生徒達からは、ひっそりと感嘆の声が漏れていた。
「そうそう、二人に紹介するわ。私の自慢の弟、シオンよ。ルーナは、初対面じゃないわよね。シオン、こちらはキャシー・エナステル子爵令嬢よ。二人共、私の親友なの。」
まるで花が綻ぶような笑顔のフローレンスをうっとりとした眼差しで見つめていたシオンは、姉の手をそっと引き寄せて自分の隣に立たせると、友人の二人に改めて挨拶をした。
「いつも姉がお世話になっているそうで、ありがとうございます。姉にとってお二人は、初めてのご友人です。僕のせいもあり、姉は常に誤解されて生きてきました。その上で、お二人が姉の傍にいてくださることに僕はとても感謝しています。これからもどうか姉をよろしくお願いします。」
しっかりとしたシオンの言葉に胸を打たれた二人が口々に、こちらこそよろしくお願いしますなどと言っていると、感極まったフローレンスが、シオンの両手を握り締め、
「元々私よりずっとしっかりしていたけれど・・・更に立派になって。姉さん、本当に嬉しいわ・・・。」
と、涙ぐんでシオンを見上げた。
「フローレンス!!」
その時、大きな声と共に異様な速さでレイサスが歩いて来た。フローレンスとシオンが手を握り合ってるのを見たレイサスは凄まじい怒りのオーラを放ち、勢いよく二人の手を引き剥がした。そのまま強い力でフローレンスの手と腰を抱き寄せると、殺意をも感じさせる強い視線をシオンに向けた。
「どういうつもりだ!」
シオンを睨みつけ語気を荒げるレイサスに、驚いたフローレンスが慌てて前に出て、二人の間に割って入った。
「レイ! シオンよ。弟のシオン!今、ルーナとキャシーに紹介していたところなの。」
「弟・・・・・。」
しかし、眉間に深い皺を寄せたレイサスの視線は緩まなかった。弟と聞いてもレイサスはシオンから目を逸らすことなく睨み続けている。対するシオンも、先ほどまでの優しい表情を一瞬で消し去ると、氷のような冷たい視線をレイサスに向けていた。二人の睨み合いを至近距離からまともに見てしまったルーナとキャシーは、あまりの恐ろしさに声も出せずにその場に立ち尽くしていた。周りでシオンの様子を伺いながらコソコソと聞き耳を立てていた女生徒達も、今や誰一人、口を開く者はいなかった。
「レイ。私の弟のシオンよ。」
「・・・・・・。」
「レイ?」
「・・・ああ。」
「シオン、こちらレイサス・クレイズ公爵令息様。あの、いろいろ良くして頂いていて・・・。」
「そう・・・・。」
「あ、のっ、シオン?」
(怖い!何なのこの二人・・・。誰かこの空気をどうにか・・・。ルーナ!?キャシー!!)
フローレンスがオロオロしながらルーナとキャシーの方に目を向けて助けを求めようとしたが、目が合った途端、二人からは速攻目を逸らされてしまった。
(なっ!! ひどっ!!)
「フローレンス! 行くぞ!」
フローレンスが、恨みがましい顔でルーナとキャシーを見ていると、レイサスがフローレンスの手を取り歩き出してしまった。
「えっ!? レイ!まだ話の途中―――」
「いいから、行くぞ!」
フローレンスの手を引く力が強まった。後ろを振り返ると、こちらをじっと睨みつける鋭い視線のシオンと目が合った。
(シオンが怒っているわ。こわっ!・・・どうしよう。)
シオンと家族になってから、シオンを護る事ばかり優先してきたフローレンスは、こうして今、シオンを怒らせて嫌な思いをさせてしまったことに動揺していた。
「姉さん!!」
「えっ!?ちょっ、え? シオン?」
両手を広げていきなり抱きついてきたシオンに不意を突かれたフローレンスが、声も出せずに驚いていると、
「姉さん、会いたかった!!これからは毎日一緒に居られるね!!」
と、眩しい程の笑顔を振りまいて、シオンが自分の腕に更に力を籠めた。フローレンスは、両手をバタバタさせて苦しい!と訴えていたが、嬉しそうにフローレンスの頭に自分の頬をぐりぐりと押し付けているシオンには全く気付いてもらえなかった。
フローレンスは、シオンの胸に顔を半分潰された状態で、隣で口を開けたまま目を見開いているルーナとキャシーに手を伸ばし、助けて!と、目をキョロキョロ動かし合図を送った。
「あ、あのっ、シオン君!?フローレンスの顔がね、あの、潰れて息が苦しそうよ?」
ルーナの声に、「は?」と、一瞬真顔になったシオンだったが、自分の胸に顔を潰されモゴモゴしているフローレンスを見下ろし、ぱっと両手を離した。
「ごめん、姉さん、大丈夫?」
「はぁ、はぁ、・・・。シオン・・・。」
フローレンスが潰された顔を擦りながら呼吸を整え、疲れ切ったような目でシオンを見上げると、前回会った時よりも更に背の高くなったシオンが、フローレンスを心配そうに見下ろしていた。
「姉さん、大丈夫?久しぶりに会えたものだから、つい嬉しくって・・・。」
目を伏せたシオンは、しょんぼりと反省した様子を見せてはいたけれど、顔を上げてフローレンスの顔を見た途端、「やっぱり無理!!」と言いながら、もう一度両手を伸ばし、フローレンスを捕まえるのだった。
「うっ!! シオンっ、シオンってば!!わかったから、ね?少し落ち着いて。」
今度は口を押しつぶされないように注意していたフローレンスが、どうにかシオンから抜け出すと、シオンは、離れてしまった姉を名残惜しそうに見てから、渋々自分の手を引っ込めた。
「シオン。入学おめでとう。しばらく会わないうちに立派になって、こんなに素敵な美男子が私の弟なんて、姉さん、もう!鼻高々だったわ!!式の間もね、周りのご令嬢達がシオンのことばかり見つめているから、「彼は私の弟よ!!」って、大声で自慢したくてうずうずしてたのよっ!」
腰に手を当てて、ご満悦な表情のフローレンスに向かって、シオンがにっこりと微笑むと、周囲で二人の様子を見ていた女生徒達からは、ひっそりと感嘆の声が漏れていた。
「そうそう、二人に紹介するわ。私の自慢の弟、シオンよ。ルーナは、初対面じゃないわよね。シオン、こちらはキャシー・エナステル子爵令嬢よ。二人共、私の親友なの。」
まるで花が綻ぶような笑顔のフローレンスをうっとりとした眼差しで見つめていたシオンは、姉の手をそっと引き寄せて自分の隣に立たせると、友人の二人に改めて挨拶をした。
「いつも姉がお世話になっているそうで、ありがとうございます。姉にとってお二人は、初めてのご友人です。僕のせいもあり、姉は常に誤解されて生きてきました。その上で、お二人が姉の傍にいてくださることに僕はとても感謝しています。これからもどうか姉をよろしくお願いします。」
しっかりとしたシオンの言葉に胸を打たれた二人が口々に、こちらこそよろしくお願いしますなどと言っていると、感極まったフローレンスが、シオンの両手を握り締め、
「元々私よりずっとしっかりしていたけれど・・・更に立派になって。姉さん、本当に嬉しいわ・・・。」
と、涙ぐんでシオンを見上げた。
「フローレンス!!」
その時、大きな声と共に異様な速さでレイサスが歩いて来た。フローレンスとシオンが手を握り合ってるのを見たレイサスは凄まじい怒りのオーラを放ち、勢いよく二人の手を引き剥がした。そのまま強い力でフローレンスの手と腰を抱き寄せると、殺意をも感じさせる強い視線をシオンに向けた。
「どういうつもりだ!」
シオンを睨みつけ語気を荒げるレイサスに、驚いたフローレンスが慌てて前に出て、二人の間に割って入った。
「レイ! シオンよ。弟のシオン!今、ルーナとキャシーに紹介していたところなの。」
「弟・・・・・。」
しかし、眉間に深い皺を寄せたレイサスの視線は緩まなかった。弟と聞いてもレイサスはシオンから目を逸らすことなく睨み続けている。対するシオンも、先ほどまでの優しい表情を一瞬で消し去ると、氷のような冷たい視線をレイサスに向けていた。二人の睨み合いを至近距離からまともに見てしまったルーナとキャシーは、あまりの恐ろしさに声も出せずにその場に立ち尽くしていた。周りでシオンの様子を伺いながらコソコソと聞き耳を立てていた女生徒達も、今や誰一人、口を開く者はいなかった。
「レイ。私の弟のシオンよ。」
「・・・・・・。」
「レイ?」
「・・・ああ。」
「シオン、こちらレイサス・クレイズ公爵令息様。あの、いろいろ良くして頂いていて・・・。」
「そう・・・・。」
「あ、のっ、シオン?」
(怖い!何なのこの二人・・・。誰かこの空気をどうにか・・・。ルーナ!?キャシー!!)
フローレンスがオロオロしながらルーナとキャシーの方に目を向けて助けを求めようとしたが、目が合った途端、二人からは速攻目を逸らされてしまった。
(なっ!! ひどっ!!)
「フローレンス! 行くぞ!」
フローレンスが、恨みがましい顔でルーナとキャシーを見ていると、レイサスがフローレンスの手を取り歩き出してしまった。
「えっ!? レイ!まだ話の途中―――」
「いいから、行くぞ!」
フローレンスの手を引く力が強まった。後ろを振り返ると、こちらをじっと睨みつける鋭い視線のシオンと目が合った。
(シオンが怒っているわ。こわっ!・・・どうしよう。)
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