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戦場の鬼神
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「次、戻った時は、せめて弟さんにだけでも、きちんと話しておいた方がいいと思うわよ?」
ルーナの言葉に、困った顔のフローレンスは、「うーん・・・」と曖昧に頷いた。
「そうね。先が見えなくて動きようがないのは分かるけど、相手のクレイズ様があんな調子で常に貴女に張り付いているんですから、もう既に噂は広まっていると思って行動した方がいいと思うわ。」
「噂?・・・広まってるのかしら・・・。」
キャシーの言葉に、フローレンスが上目遣いで不安そうな顔をした。
「だって、あのクレイズ様よ!?誰とも行動を共にしないし、表情だってピクリとも動かないあのクレイズ様よ!?なのに、貴女に対してだけはいつだって優しく微笑んでいるじゃない!しかも「俺の傍でじっとしてろ!」とか!! もー!信じられないわよー!!噂にならない訳がないじゃない!!」
テーブルに乗り出したキャシーの鼻息は荒い。
「やっぱり、シオン君にだけは言った方がいいわ。」
「でも・・・。シオンに言ったら、私の母親にも伝わるわよねー・・・。うーん・・・。」
ごちゃごちゃと独り言を呟いているフローレンスを見ながら、ルーナはお茶会でのシオンの言葉を思い出していた。
「あまり僕に心配ばかりさせないように。って、伝えていただけると嬉しいですね。姉は、何故か僕に気を使って大切な事を隠したりするので・・・。僕は、姉のことならなんでも知っておきたいと思っているんですけどね。」
ははっと笑うシオンの目は、少しも逸らすことなくルーナを見据えており、全く笑ってはいなかった。
(あれって・・・私、・・・フローレンスに隠し事をさせるなって、遠回しに威圧されたのよね・・・・・。ねえ、フローレンス、あなたシオン君の気持ちに気付いているの・・・?)
「正直、学園での仲の良すぎる二人を見ていると、心配する必要なんてないんじゃないかと思ってしまうけどね・・・。だって、クレイズ様ってフローレンスの好みの男性なんでしょう?」
ルーナの心配をよそに、キャシーは壁に貼ってある魔獣討伐の新聞記事を指差してニヤニヤしている。そこには辺境地での活躍が描かれたアーレン・リヴェル辺境伯の姿絵があった。
真っ赤な髪と同色の鋭すぎる瞳、額には大きな「×」の傷が堂々と描かれている。大剣を振り回しながら先陣を切る姿は、まるで戦場の鬼神と他国からも恐れられていた。
アーレン閣下はフローレンスの初恋の人なのだ。新聞記事や大人達の会話でしか知りえない国の英雄を、フローレンスは本で読んだ勇者と重ねたのだ。幼いフローレンスは、毎日、新聞から切り取った姿絵を眺めながらアーレン閣下に酔いしれた。それ以来、フローレンスの理想の男性はアーレン閣下になっているのだ。
「そうねー・・・。アーレン閣下のような燃えるような赤ではないけれど、あの鋭い眼差しとか、恐ろしい見た目が・・・、確かにクレイズ様に似ているかもしれないわねぇー。そう言えば、アーレン閣下って、奥様がいらっしゃるわよね。」
「すごく愛妻家って噂よね!あんな恐ろしい外見なのに奥様にだけは頭が上がらないって聞いたわ!国の英雄にそこまで愛されてるなんて素敵よねー!」
すると、ルーナとキャシーの会話に割り込むように、フローレンスは身を乗り出し大きな声を出した。
「私は、妾でもいいのよ!?」
「は!?」
「え!?」
「いやっ!!だから!!私は妾―――」
「はいはい!馬鹿な事言ってないで、キャシー、そろそろ寝ましょうかねぇー。」
「そうね!もうこんな時間だわ、部屋に戻らなくてはね!」
「えっ!?二人共、部屋に戻っちゃうの?せっかく楽しくなってきたのに?」
もっとアーレン閣下の話で盛り上がりたいフローレンスを尻目にそそくさと二人は戻る準備をしている。
「おやすみ」と別れの挨拶を終え、ドアを出る時にルーナが振り返ってフローレンスに尋ねた。
「ねぇ?フローレンスがアーレン閣下の大ファンだってこと、シオン君はもちろん知っているのよね?」
「え?シオン? ええ、まあ、知ってるわよ?でも、シオンもあまりアーレン閣下の話には付き合ってくれないの。あんなに素敵なのに・・・なぜかしらね?でも、前に一度、妾になりたいって言ったら本気で怒っていたわね。年の差を考えなさいとか言って。」
フローレンスは、当時、真っ赤になって怒ったシオンの顔を思い出して、くすりと笑った。
「まあ、そうなるわよね・・・。」
ルーナは、楽しそうなフローレンスを横目に溜息交じりに呟いた。
「どうしたの?今日のルーナ、少し変よ?何かあった?」
いつもと少し様子の違うルーナを心配して、フローレンスが尋ねるも、「なんでもないわ」と、ルーナは微笑み自分の部屋に戻って行った。
ルーナの言葉に、困った顔のフローレンスは、「うーん・・・」と曖昧に頷いた。
「そうね。先が見えなくて動きようがないのは分かるけど、相手のクレイズ様があんな調子で常に貴女に張り付いているんですから、もう既に噂は広まっていると思って行動した方がいいと思うわ。」
「噂?・・・広まってるのかしら・・・。」
キャシーの言葉に、フローレンスが上目遣いで不安そうな顔をした。
「だって、あのクレイズ様よ!?誰とも行動を共にしないし、表情だってピクリとも動かないあのクレイズ様よ!?なのに、貴女に対してだけはいつだって優しく微笑んでいるじゃない!しかも「俺の傍でじっとしてろ!」とか!! もー!信じられないわよー!!噂にならない訳がないじゃない!!」
テーブルに乗り出したキャシーの鼻息は荒い。
「やっぱり、シオン君にだけは言った方がいいわ。」
「でも・・・。シオンに言ったら、私の母親にも伝わるわよねー・・・。うーん・・・。」
ごちゃごちゃと独り言を呟いているフローレンスを見ながら、ルーナはお茶会でのシオンの言葉を思い出していた。
「あまり僕に心配ばかりさせないように。って、伝えていただけると嬉しいですね。姉は、何故か僕に気を使って大切な事を隠したりするので・・・。僕は、姉のことならなんでも知っておきたいと思っているんですけどね。」
ははっと笑うシオンの目は、少しも逸らすことなくルーナを見据えており、全く笑ってはいなかった。
(あれって・・・私、・・・フローレンスに隠し事をさせるなって、遠回しに威圧されたのよね・・・・・。ねえ、フローレンス、あなたシオン君の気持ちに気付いているの・・・?)
「正直、学園での仲の良すぎる二人を見ていると、心配する必要なんてないんじゃないかと思ってしまうけどね・・・。だって、クレイズ様ってフローレンスの好みの男性なんでしょう?」
ルーナの心配をよそに、キャシーは壁に貼ってある魔獣討伐の新聞記事を指差してニヤニヤしている。そこには辺境地での活躍が描かれたアーレン・リヴェル辺境伯の姿絵があった。
真っ赤な髪と同色の鋭すぎる瞳、額には大きな「×」の傷が堂々と描かれている。大剣を振り回しながら先陣を切る姿は、まるで戦場の鬼神と他国からも恐れられていた。
アーレン閣下はフローレンスの初恋の人なのだ。新聞記事や大人達の会話でしか知りえない国の英雄を、フローレンスは本で読んだ勇者と重ねたのだ。幼いフローレンスは、毎日、新聞から切り取った姿絵を眺めながらアーレン閣下に酔いしれた。それ以来、フローレンスの理想の男性はアーレン閣下になっているのだ。
「そうねー・・・。アーレン閣下のような燃えるような赤ではないけれど、あの鋭い眼差しとか、恐ろしい見た目が・・・、確かにクレイズ様に似ているかもしれないわねぇー。そう言えば、アーレン閣下って、奥様がいらっしゃるわよね。」
「すごく愛妻家って噂よね!あんな恐ろしい外見なのに奥様にだけは頭が上がらないって聞いたわ!国の英雄にそこまで愛されてるなんて素敵よねー!」
すると、ルーナとキャシーの会話に割り込むように、フローレンスは身を乗り出し大きな声を出した。
「私は、妾でもいいのよ!?」
「は!?」
「え!?」
「いやっ!!だから!!私は妾―――」
「はいはい!馬鹿な事言ってないで、キャシー、そろそろ寝ましょうかねぇー。」
「そうね!もうこんな時間だわ、部屋に戻らなくてはね!」
「えっ!?二人共、部屋に戻っちゃうの?せっかく楽しくなってきたのに?」
もっとアーレン閣下の話で盛り上がりたいフローレンスを尻目にそそくさと二人は戻る準備をしている。
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「ねぇ?フローレンスがアーレン閣下の大ファンだってこと、シオン君はもちろん知っているのよね?」
「え?シオン? ええ、まあ、知ってるわよ?でも、シオンもあまりアーレン閣下の話には付き合ってくれないの。あんなに素敵なのに・・・なぜかしらね?でも、前に一度、妾になりたいって言ったら本気で怒っていたわね。年の差を考えなさいとか言って。」
フローレンスは、当時、真っ赤になって怒ったシオンの顔を思い出して、くすりと笑った。
「まあ、そうなるわよね・・・。」
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「どうしたの?今日のルーナ、少し変よ?何かあった?」
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