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感染症
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感染症と診断されたフローレンスは、寝ぼけたような状態で目は覚ますものの、またすぐに深い眠りに入ってしまうことが続き、結局まともに意識が戻ったのはそれから三日後のことだった。
他への感染を防ぐため、医師からは部屋への立ち入りは禁止と言われたものの、シオンはフローレンスの傍を離れようとしなかった。誰が何を言おうと全く聞く耳を持たないシオンに対し、呆れた寮の管理人が、困ったものだと呟きながらも、フローレンスの部屋に簡易ベッドを運びこんできてくれた。狭い部屋にベッドをもう一つ入れた為、フローレンスとシオンのベッドの間には人が一人やっと通れる隙間しかなかった。
フローレンスの意識がちゃんと戻るまで、シオンの恐怖は治まらなかった。フローレンスの温かな手を握っていないとシオンの手は未だ小刻みに震え続けていた。
(怖い。姉さんが居なくなってしまうのが怖い・・・。怖い。姉さん・・・お願いだから置いて行かないで。)
感染症が学園で流行っていたことはもちろん耳に入っていた。それで誰かが命を落としたなんて話も聞いてはいない。だが、シオンの記憶の中のフローレンスは、いつだって元気に笑っているものばかりだった。その姉が意識も戻らない程の高熱にうなされている。初めて見る姉の弱った姿に、シオンは自分が思う以上のショックを受けた。まさか自分が、こんなに何もできないとは思わなかった。あの時、ルーナとキャシーの顔を見て、シオンは心の底からほっとしたのだ。
(こんなんじゃあ、姉さんを守って行くことなんてできない。もっと強く、もっとしっかりした男にならなくては・・・。姉さんを守るのは僕しかいないんだから。)
フローレンスの意識が戻るまで、シオンの頭の中は、姉を失う恐怖と何の役にも立たなかった自分の不甲斐なさでいっぱいだった。
ルーナとキャシーは、毎日のように様子を聞きにドアをノックしていた。移るといけないので、シオンはドア越しに対応した。二日目には、心配したレイサスが公爵家の権威を振りかざしてまで女子寮に押し入って来た。ドアを蹴破る勢いで開けろと騒いだが、姉の身体に障るから静かにしてくれ。感染症だから誰にも会えないと、シオンがドアを開けることはなかった。
三日目、フローレンスの意識が戻ると同時に、今度はシオンが発熱した。話を聞いたフローレンスが重い体を起こして、無理をしたシオンに注意しようとしたが、良かった良かったと安堵の涙を流し続けるシオンを前に、怒る気も失せてしまった。
案の定、フローレンスの感染症をもらってしまったシオンは、呆れた医者に苦笑いをされ、そのまま同じ部屋で療養することになった。
自分の熱もまだ下がっていないのに、高熱に苦しむシオンの為に、ヨロヨロしながらも甲斐甲斐しく面倒を見てくれるフローレンスを見て、こんなに元気になってくれたことと、以前のようにフローレンスが自分のことだけを考えてくれていることにシオンは幸せを感じていた。
相変わらずルーナとキャシーは毎日ドア越しの見舞いに来てくれていたし、フローレンスの意識が戻ってからはレイサスも度々やって来た。ドア越しの二人の会話を聞き終わると、シオンは決まってフローレンスを自分のベッドに引っ張り込み抱えるように添い寝をさせた。
レイサスが来るたび、ふて腐れて機嫌が悪くなるシオンだったが、フローレンスから言わせれば、見舞客の多さで言えば、シオンの方が断然多かったのだ。
「シオン!!ノックの音がうるさくてこれでは身体が休まらないわ!」
「シオン!!ドアの前に貴方へのお見舞いが山積みになっていて、ドアが開かないわよ!」
「シオン、誰かがドアの前で聞き耳でも立てているのかしら・・・。何か物音がして怖いんだけど・・・。」
疲れた顔のフローレンスが、部屋の隅に山積みになったシオンへのプレゼントを指差し、
「シオン、自分の部屋に戻る時は、お願いだから全部持って行ってね。」
と、もう自分の部屋に戻ってほしい旨を遠回しに伝えると、シオンが顔を真っ赤にして怒った。
「なんで、そんな僕を遠ざけるようなこと言うの!?姉さんは僕と一緒に居るのがそんなに嫌なの!?僕は嫌だからね!!病気が治っても、ずっと自分の部屋になんて戻らないよ!!姉さんの馬鹿!!人の気も知らないで!!」
駄々っ子のように怒鳴り散らしたあげく半べそをかくので、シオンに甘いフローレンスは、それがシオンの演技の一つだとも知らずに、
「ごめんなさい。そうよね、私ったら三日間も意識を失って、シオンに大きな心配をかけてしまったというのにね・・・・。」
と、癇癪を起こしているシオンの傍に寄り、頭を撫でながら慰めるのだった。
他への感染を防ぐため、医師からは部屋への立ち入りは禁止と言われたものの、シオンはフローレンスの傍を離れようとしなかった。誰が何を言おうと全く聞く耳を持たないシオンに対し、呆れた寮の管理人が、困ったものだと呟きながらも、フローレンスの部屋に簡易ベッドを運びこんできてくれた。狭い部屋にベッドをもう一つ入れた為、フローレンスとシオンのベッドの間には人が一人やっと通れる隙間しかなかった。
フローレンスの意識がちゃんと戻るまで、シオンの恐怖は治まらなかった。フローレンスの温かな手を握っていないとシオンの手は未だ小刻みに震え続けていた。
(怖い。姉さんが居なくなってしまうのが怖い・・・。怖い。姉さん・・・お願いだから置いて行かないで。)
感染症が学園で流行っていたことはもちろん耳に入っていた。それで誰かが命を落としたなんて話も聞いてはいない。だが、シオンの記憶の中のフローレンスは、いつだって元気に笑っているものばかりだった。その姉が意識も戻らない程の高熱にうなされている。初めて見る姉の弱った姿に、シオンは自分が思う以上のショックを受けた。まさか自分が、こんなに何もできないとは思わなかった。あの時、ルーナとキャシーの顔を見て、シオンは心の底からほっとしたのだ。
(こんなんじゃあ、姉さんを守って行くことなんてできない。もっと強く、もっとしっかりした男にならなくては・・・。姉さんを守るのは僕しかいないんだから。)
フローレンスの意識が戻るまで、シオンの頭の中は、姉を失う恐怖と何の役にも立たなかった自分の不甲斐なさでいっぱいだった。
ルーナとキャシーは、毎日のように様子を聞きにドアをノックしていた。移るといけないので、シオンはドア越しに対応した。二日目には、心配したレイサスが公爵家の権威を振りかざしてまで女子寮に押し入って来た。ドアを蹴破る勢いで開けろと騒いだが、姉の身体に障るから静かにしてくれ。感染症だから誰にも会えないと、シオンがドアを開けることはなかった。
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案の定、フローレンスの感染症をもらってしまったシオンは、呆れた医者に苦笑いをされ、そのまま同じ部屋で療養することになった。
自分の熱もまだ下がっていないのに、高熱に苦しむシオンの為に、ヨロヨロしながらも甲斐甲斐しく面倒を見てくれるフローレンスを見て、こんなに元気になってくれたことと、以前のようにフローレンスが自分のことだけを考えてくれていることにシオンは幸せを感じていた。
相変わらずルーナとキャシーは毎日ドア越しの見舞いに来てくれていたし、フローレンスの意識が戻ってからはレイサスも度々やって来た。ドア越しの二人の会話を聞き終わると、シオンは決まってフローレンスを自分のベッドに引っ張り込み抱えるように添い寝をさせた。
レイサスが来るたび、ふて腐れて機嫌が悪くなるシオンだったが、フローレンスから言わせれば、見舞客の多さで言えば、シオンの方が断然多かったのだ。
「シオン!!ノックの音がうるさくてこれでは身体が休まらないわ!」
「シオン!!ドアの前に貴方へのお見舞いが山積みになっていて、ドアが開かないわよ!」
「シオン、誰かがドアの前で聞き耳でも立てているのかしら・・・。何か物音がして怖いんだけど・・・。」
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と、もう自分の部屋に戻ってほしい旨を遠回しに伝えると、シオンが顔を真っ赤にして怒った。
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