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その後の二人〜エルサとジェニー〜

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 王立裁判での一件後、アカデミーへの潜入期間を終えようとしているエルサことキャリー夫人の元を、ジェニー嬢が訪ねてきた。

 無事に婚約を解消できた報告をし、ジェニーがある事を聞いてきた。
「キャリー夫人、以前お話しくださった、王太子に婚約解消された公爵令嬢は、その後どのような人生を送ったのでしょうか?」
ジェニーの質問に、一瞬の戸惑いを見せたエルサが答えた。
「……そうですね、あなたと同じく婚約を解消した立場の令嬢の話ですもの、気になるわよね。皆さんにお話しした内容では、公爵令嬢は気が触れて幽閉された、と言っていましたが、それはあくまでです。実際に、婚約解消後はショックから療養期間を過ごしていましたが、彼女はその後程なくして回復し、信頼できる侍女や執事、騎士を伴い隣国に渡りました。手にした慰謝料を元手に始めたビジネスで成功を収め、今では隣国で1、2を争う商会を主催しています。ビジネスを展開する際に知り合った財閥の令息とご縁が合ったようで、家族も得ています」
「そうなんですね!でも、なぜその情報は伏せられていたんですか?……あ、そうか、気が触れて幽閉された、としておけば、その後外部と接触しなくても矛盾しないからですね?隣国で新しく切り開いた人生の邪魔にならないように……」
エルサは、ジェニーの勘の良さや聡明さを買っていた。彼女ならば、ヴィンスの筋書きが無くともうまく立ち回れたかもしれない、とさえ考えていた。
「ええ。気が触れて幽閉されている公爵令嬢と、隣国でビジネスを展開しているお金持ちの令嬢、が同一人物だと思われないために、です」

「もう一つ、お聞きしてもよろしいですか?……キャリー夫人は、魔道具使い、でしょうか?」
「あら、どうしてそんな事を?」
「実は、王立裁判の後、父から今回の婚約解消を手助けしてくれたご夫婦の話を聞きました。BARの店主と魔道具使いの奥様だと……もしかして、と思い、失礼を承知で、キャリー夫人とお話しした直後に、馴染みの神官に魔道具の形跡の有無を確認してもらいました。微かに、魔道具を使った跡を感じたと言う事だったので……」
エルサは、つくづく勘の良い子だと感心した。
「あなたは本当に聡明で、爵位家令嬢として申し分ないですね」
明言を避けたエルサは、ニッコリ笑った。
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