不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ

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第一章

7、よろしく、ぽよぽよズ

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 俺の叫び声にビックリした三体の白くて丸いぽよぽよが「ぎゃあーーーー!!」と同時に叫んだ。

『お化けじゃーーんお化けじゃーーんお化けじゃ……』
『ぎゃあーーぎゃあーーぎゃあ……』

 一人と三体の叫び声がこだまする。

「オーティス! 兄上からちゃんと話聞いた!? 俺、お化けが怖くてオーティスの所に来たんだけど!!」

 なかなか恥ずかしい台詞だ。オーティスの前で言うにはダメージがデカ過ぎる。

「このモノたちはお化けではなく、私の『使い魔』です」
「使い魔? でもそれって可愛い動物の姿をしてたり格好良い精霊みたいのじゃないの?」

「何を仰いますか、我々は可愛いですぞ!」
「そうですとも!」

 叫び声を聞きつけたのか、先程までいなかったぽよぽよ二体が追加され計五体になっている。この追加ぽよ二体は、初めにいた三体より使い魔としての経験が長そうだ。

「お久しぶりですなフィル様。ポックスでございます」
「…………」

(……誰? ポックスって……)

『久しぶり』と言われても、なんのことやらさっぱり分からない。

「まさかお忘れですか!? わたくしポミィとポックスは、幼き日のフィル様と何度も遊んだ仲ではございませんか」

 ポミィ? 何度も遊んだ……?

「うーん」と首を捻りながら昔を思い出してみる。オーティスが離宮へ訪れた時、何をしていたっけ……。魔法を交えた本の読み聞かせ? それとも兄上参加の勇者ごっこ? それとも……。


『フィル様見てください――』

 ん? ちょっと思い出してきたかも。覗き込んだオーティスの手のひらの中に、小さなボールが二つあったような気がする。

 二つのぽよぽよした白いボールでお手玉したり、「ええーい!」と思いっきり投げてキャッチボールしたっけ。あの時のボールと目の前にいる彼らの姿を重ねてみると大きさは全然違うけど、似ているような似てないような。

「もしかして……あの小さいボール?」
「そうですそうです! 生まれたてのわしらです。フィル様はこんなに大きくなられて」

 まさかの正解か。ポックスは眩しそうに目を細めて目尻をこする。

「そっちこそ随分と大きくなっちゃって。あの頃は扱いが酷くてごめんな。俺、卒業後は騎士になるんだ。着痩せするタイプだから分かんないだろうけど、脱ぐと結構凄いんだぜ」

 オーティスの目が見開き、一瞬俺の腹筋辺りを見たような……。

「あらまあ! フィル様ったらベビーフェイスに逞しい筋肉なんて最高のギャップですこと。ほほほほほ」

 急に始まった感動の再会に俺とポックス、ポミィは手を取り合って喜びを分かち合う。

「うわぁああっ! お化け触っちゃった!」

 突然我に返って手を跳ね除けた俺に「だから使い魔です!」とポックス&ポミィが同時にツッコむ。物陰に隠れていた新人ぽよぽよ三体がそろそろと出てきた。

「はじめまして……僕ポムです」
「ポルです!」
「ポニです」

 これまた言い間違えそうな名前を付けたものだ。名付け親はもちろんオーティスなんだろうけど、冷たそうに見えて一見近寄り難い彼がこんなに可愛い名前をつけるなんてネーミングセンスに頬が綻ぶ。

「ちなみにフィル様、このモノたちは……」

 ・ポックス(執事)チョビ髭を生やしモノクル着用。
 ・ポミィ(料理長&侍女&新人ぽよぽよズの教育係)メイドキャップとエプロン着用。厚化粧の一歩手前。

 以下新人ぽよぽよズ。上記の二体は楕円形だか、この三体はまん丸である。大きさは抱き締めるのに丁度いいサイズである。

 ・ポム(ご主人様のお世話&雑用)裸。
 ・ポル(同上)裸。
 ・ポニ(同上)メイドキャップとエプロン着用。

 ※なお性別はポックス・ポム・ポルが男。ポミィとポニが女。

「――間違ってフィル様を傷付けることがないよう、このモノたちに攻撃能力はございません。代わりに防御能力を備えております」

 オーティスの超簡素な説明が終了した。

「なあ、ポムとポルだけ違いが分かんないんだけど」
「――っ!!」

 しまった、地雷を踏んだらしい。本人たちも若干気にしてたっぽくてポルとポムが今にも泣き出しそうだ。

「ごめ……」
「オーティス様!」

 しかもポックスに攻められてばつが悪そうに狼狽えるオーティス。何その可愛い顔。
 一方ポミィは「大丈夫ですよぉ」とポムとポルの背中をさすり、ポニは新人ぽよぽよズの中で自分だけ衣装があることに気が引けたのか、こちらも泣き出しそうにふるふる震えている。

(俺が余計な事を言ったからだ。なんとかしなきゃ……)

「あのさ……みんなちゃんと個性があるみたいだから、ゲームしようぜ」
「げぇーむ?」
 ポムとポルが鼻水を垂らしながら俺を見る。

「そう。ポムとポル、どっちがどっちでしょうゲーム! 絶対に言い当てられるようになるから覚悟しとけよ」

 俺が泣かしちゃったんだ、責任取らないと。泣き止んでくれますようにと願いを込めて、ニッと彼らに笑いかける。

「楽しそう! 明日からやりましょう!」

 良かった。機嫌が直ったみたいだ。見分けられるようなった暁にはポムとポルに蝶ネクタイでもプレゼントしてあげようかな。

 絶妙な位置にある目と口の黄金バランスのせいか、はたまた見慣れてきたのか。だんだんこの子たちが可愛く見えてきた気がする。ここでの生活が楽しみになってきた。
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