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第一章
8、幸せと疑問と夜這い王子?
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ディナーの準備されたテーブルは大人数用の長テーブルではなく、二人で使うのにちょうど良い大きさのものだった。
「フィル様、こちらにお掛けください」
「ありがとう」
オーティスに椅子を引いてもらって、借りてきた猫のように大人しくちょこんと座る。オーティスは俺の正面に座った。
(わぁ……)
思ったよりも近くてドキドキする。
「お召し上がりください」
「うん、いただきます」
オーティスは美しい所作で食事を進めていく。俺はそんな彼にぽぉーと気を取られ、手元をよく見ずに食べ物を口に運んだ。
俺……今、オーティスと食事してるんだよな。夢じゃないんだよな。自問自答を繰り返すうちに、これが現実なのだと少しずつ実感が湧いてくる。
(居候生活万歳! 小賢しい手を使って良かったぁ!)
飛び跳ねたくなる気持ちを必死に押し隠した。
「――ィル様? フィル様?」
「ああっ、何?」
「食事があまり進んでいないようですが、お口に合いませんでしたか? それともお体が優れませんか?」
「ううん、大丈夫!」
「そうですか。そちらのお皿、お借りしてもよろしいですか?」
「皿?」
オーティスは俺の皿を手に取ると、皿の上のステーキを食べやすくカットし始めた。「どうぞ」と戻ってきたステーキを見て思わずクスッと笑ってしまった。
「オーティスには俺が何歳に見えるの? もう小さな子供じゃないよ」
ハッとするオーティスが謝罪する前に言葉を続ける。
「でも、こういうのも嬉しいね。ありがとう」
「おいしい」と照れくさそうに笑顔で頬張ると、オーティスは一瞬目を伏せた後にもう一度俺を見て切長の瞳をやんわりと細めた。
「フィル様。お困り事がございましたら、遠慮なさらずに私やポックスたちにお申し付けください」
会釈するぽよぽよズの中に一体だけニッとキメ顔をして「お任せください!」と威勢のいい返事をする子がいる。
「オーティス、ちなみにあの子は?」
「ポルです」
ふむふむ。見分けのつかなかったポルとポムの『ポル』の方ね。自分で言い出した『どっちがどっちでしょうゲーム』に勝利するために情報収集っと。
◇◇◇
ディナーと入浴を済ませた俺は、ベッドに寝転んでぼーっと天井を眺めていた。
「幸せ……」
オーティスの声、しぐさ、眼差し、全てが最高だった。何をするにも優しくてずっとドキドキしっぱなしだった。高鳴る感情をどうしたらいいのか分からなくてキュッと目を瞑る。
存分にこのふわふわした気分を味わっていたいはずなのに、ふと不安が込み上げた。
(幸せすぎて怖くなってきたかも。散々な人生がこんな急に変わるか? 浮かれすぎには要注意だ。そもそも侯爵邸があるのに、どうしてオーティスはこの屋敷を建てたんだろう)
屋敷を出る必要があったのだろうか。次男のオーティスが屋敷を出る理由。もしかして……誰かと結婚するためにこの屋敷を準備した?
そうだとしたら俺どうしたらいい?
『私が必ずここから連れ出します。約束します』
オーティスが子供の頃に言ったあの言葉は、彼の中でどうなったんだろう。
俺は今の今までプロポーズだと思い込んで生きてきたけど違ったのだろうか。
あんなにも甘い言葉を囁いてその気にさせたくせに……。じわじわと怒りが込み上げてくる。
(オーティスの裏切り者め。お前の結婚、邪魔してやる。今度はそっちが夜這いされる側になりな)
ふっふっふっふっと薄気味悪い笑いが口から漏れる。何やらよろしくない事を企む『夜這い生霊』ならぬ低俗極まりない『夜這い王子』が誕生したのであった。
「フィル様、こちらにお掛けください」
「ありがとう」
オーティスに椅子を引いてもらって、借りてきた猫のように大人しくちょこんと座る。オーティスは俺の正面に座った。
(わぁ……)
思ったよりも近くてドキドキする。
「お召し上がりください」
「うん、いただきます」
オーティスは美しい所作で食事を進めていく。俺はそんな彼にぽぉーと気を取られ、手元をよく見ずに食べ物を口に運んだ。
俺……今、オーティスと食事してるんだよな。夢じゃないんだよな。自問自答を繰り返すうちに、これが現実なのだと少しずつ実感が湧いてくる。
(居候生活万歳! 小賢しい手を使って良かったぁ!)
飛び跳ねたくなる気持ちを必死に押し隠した。
「――ィル様? フィル様?」
「ああっ、何?」
「食事があまり進んでいないようですが、お口に合いませんでしたか? それともお体が優れませんか?」
「ううん、大丈夫!」
「そうですか。そちらのお皿、お借りしてもよろしいですか?」
「皿?」
オーティスは俺の皿を手に取ると、皿の上のステーキを食べやすくカットし始めた。「どうぞ」と戻ってきたステーキを見て思わずクスッと笑ってしまった。
「オーティスには俺が何歳に見えるの? もう小さな子供じゃないよ」
ハッとするオーティスが謝罪する前に言葉を続ける。
「でも、こういうのも嬉しいね。ありがとう」
「おいしい」と照れくさそうに笑顔で頬張ると、オーティスは一瞬目を伏せた後にもう一度俺を見て切長の瞳をやんわりと細めた。
「フィル様。お困り事がございましたら、遠慮なさらずに私やポックスたちにお申し付けください」
会釈するぽよぽよズの中に一体だけニッとキメ顔をして「お任せください!」と威勢のいい返事をする子がいる。
「オーティス、ちなみにあの子は?」
「ポルです」
ふむふむ。見分けのつかなかったポルとポムの『ポル』の方ね。自分で言い出した『どっちがどっちでしょうゲーム』に勝利するために情報収集っと。
◇◇◇
ディナーと入浴を済ませた俺は、ベッドに寝転んでぼーっと天井を眺めていた。
「幸せ……」
オーティスの声、しぐさ、眼差し、全てが最高だった。何をするにも優しくてずっとドキドキしっぱなしだった。高鳴る感情をどうしたらいいのか分からなくてキュッと目を瞑る。
存分にこのふわふわした気分を味わっていたいはずなのに、ふと不安が込み上げた。
(幸せすぎて怖くなってきたかも。散々な人生がこんな急に変わるか? 浮かれすぎには要注意だ。そもそも侯爵邸があるのに、どうしてオーティスはこの屋敷を建てたんだろう)
屋敷を出る必要があったのだろうか。次男のオーティスが屋敷を出る理由。もしかして……誰かと結婚するためにこの屋敷を準備した?
そうだとしたら俺どうしたらいい?
『私が必ずここから連れ出します。約束します』
オーティスが子供の頃に言ったあの言葉は、彼の中でどうなったんだろう。
俺は今の今までプロポーズだと思い込んで生きてきたけど違ったのだろうか。
あんなにも甘い言葉を囁いてその気にさせたくせに……。じわじわと怒りが込み上げてくる。
(オーティスの裏切り者め。お前の結婚、邪魔してやる。今度はそっちが夜這いされる側になりな)
ふっふっふっふっと薄気味悪い笑いが口から漏れる。何やらよろしくない事を企む『夜這い生霊』ならぬ低俗極まりない『夜這い王子』が誕生したのであった。
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