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第一章
9、夜這い王子出動
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思い立ったら即行動である。
俺は与えられた部屋を抜け出してオーティスの部屋の扉をノックした。
「オーティス……幽霊が怖いんだけど……」
ここでのポイントは儚げな声色だ。案の定扉が勢いよく開いた。オーティスの激レア寝巻き姿と慌てる様子が見れてちょっぴり嬉しい。
「そっ……そんな薄手のガウン一枚で……もっとちゃんとした寝衣をお召しください」
(俺は今、夜這いしに来たんだ。ちゃんとした寝衣じゃ色気が足りないだろう? 目的を達成するための薄々ガウンだよ)
いやらしくなり過ぎない程度に開けた胸元が効いたのか、不自然なまでに彷徨うオーティスの視線。いい反応だ。
しかしオーティスは一度咳払いすると、「お部屋に結界を張りましょうか」と真面目な返しをしてきた。
そんなのはいらない。これならどうだ。
「結界を張っても結局は部屋に一人ぼっちじゃん。俺、一人だと怖い事考えちゃうんだ」
「では、どう致しましょう……」
この言葉を待ってたぜ。俺は心の中でニヤリとほくそ笑むとベビーフェイス(使い魔ポミィ曰く)を最大限利用してか弱く首を傾げた。
「オーティスが一緒に寝てくれたらいいだろう?」
「私が添い寝…………」
オーティスはスッと顔を逸らして下を向いた。キモいと思われたか!?
「ダメ……かな?」
ここは引かずに押す!
返事を待つ間、心臓が大きく脈打つ。
「――分かりました、こちらにいらしてください」
(っしゃぁあ!!)
第一関門突破!
心の中で思いっきりガッツポーズを決める。
次はどうやって距離を詰めてやろう……そう悪知恵を働かせた時、先にベッドに行ったオーティスが「どうぞ」と右手を伸ばして腕枕の体勢をとった。
(いきなり腕枕!? そうきたか……)
オーティスの奴、身持ちの固そうな顔をして俺を腕枕でお出迎えするとは……実はとんでもない遊び人だったりする!?
婚約者との仲を邪魔してやろうと最低最悪の考えを持ってこの部屋を訪れたはずなのに、簡単に腕枕を提供するオーティスに少しだけ彼の『婚約者』が不憫になる。が、今の俺に遠慮はない。オーティスに腕枕をしてもらうためベッドの縁に膝を乗せた。
ギシッと軋む音が羞恥心に火を付ける。
(あっ、あの時の目だ……)
オーティスの様子を盗み見るんじゃなかった。生霊に弄ばれたあの時と同じ、熱のこもった目がこちらに向けられている。
「どうしましたか? 早くいらしてください」
顔色一つ変えないオーティスに主導権を握られているようで面白くない。俺は「どうだ」と言わんばかりにピッタリくっ付いてやった。
当たり前だけど顔がめちゃくちゃ近い。きめ細かくて滑らかな肌。彫刻のような綺麗な顔。けど、この力強い腕も心も……俺の知らない誰かの物なんだ。
悲しいな。
「ねえ……あの約束覚えてる? ……『私が必ずここから連れ出します』」
オーティスはどう答えるんだろう。
「…………覚えています。すみませんでした」
謝られた。
こんなにもあっけなく、あっさりとフラれてしまった。婚約者がいるのなら当然のことだけど、そうだと分かっていても胸が痛む。
「好きな人との出会いはいつ?」
「え!? ……十二歳の時です」
十二歳……俺と出会った年にその人とも出会っていたのか。
「どうして好きになったの?」
「……そばで守りたいと思いました」
おいおい、俺にも似たような事を言ってたぞ。『守りたい』、そう思える人が現れると簡単に乗り換えるんだな。こっちは子供の頃の口約束を信じて何年も待ってたっていうのに……酷くないか?
つまり、約束を覚えてたくせになあなあに済まそうとしてたわけだ。好きな人ができた時点で教えてくれればよかったのに。なんで言わなかったんだよ。
しかし、その理由を考えたところでもう一度胸が痛むだけだった。
(そっか……口約束だから放っておかれたんだ。くそぉ、ムカムカしてきた! 夜這い王子の本気見せてやる)
「あのさ、オーティス。生霊に弄ばれたせいで俺……そういう事ができなくなっちゃうかもしれない。そうなったら困るだろう?」
「そういう事……?」
「オーティスがすぐに魔法紐で生霊を捕まえてくれてたら、こんな風にならなくて済んだんだ。だからさ、俺がそういう事しても平気になるよう手伝ってよ。触ったり…………キスしたり」
ディナーの時に、困った事があったらすぐにお申し付けくださいってそっちが言ったんだ。これが俺の困ってる事だよ。さあ、どうする?
俺は色目を使ってきたメイドたちのように上目遣いでオーティスを見つめた。女狐のように妖艶に。
「キ、キスですか!?」
少し慌てたオーティスの頬に赤みが差す。俺は上半身を起こして仰向けのオーティスを見下ろした。俺を映す切長の目が丸くなるほど見開いている。
もうどうにでもなれ。いーっぱい困らせてやる。オーティスが拒絶したり怒ったら冗談だって言えばいいんだ。
「分かりました」
「うん………………え?」
(分かりました? 分かったって言ったのか?)
オーティスの右手が髪に触れて思わず肩を竦める。こんなに優しく撫でられるのは何年振りだろう。その手はするりと下がり頬に添えられた。親指で唇がなぞられる。
「……オーティス?」
「なんですか?」
初めて聞く彼の甘い声に心臓が飛び出しそうになる。体を起こしたオーティスによって俺の体は反転させられ、あっという間に組み敷かれてしまった。何が起きているのか分からず無意識に半開きの口がパクパクする。
誘ったよ。確かに俺から誘った。でもそれはちょっとした復讐心からで。狼狽えるオーティスを見て楽しむつもりだったのに……。
(こ、こんなのおかしいじゃん……どうして俺が下になってるんだよぉー!)
俺は与えられた部屋を抜け出してオーティスの部屋の扉をノックした。
「オーティス……幽霊が怖いんだけど……」
ここでのポイントは儚げな声色だ。案の定扉が勢いよく開いた。オーティスの激レア寝巻き姿と慌てる様子が見れてちょっぴり嬉しい。
「そっ……そんな薄手のガウン一枚で……もっとちゃんとした寝衣をお召しください」
(俺は今、夜這いしに来たんだ。ちゃんとした寝衣じゃ色気が足りないだろう? 目的を達成するための薄々ガウンだよ)
いやらしくなり過ぎない程度に開けた胸元が効いたのか、不自然なまでに彷徨うオーティスの視線。いい反応だ。
しかしオーティスは一度咳払いすると、「お部屋に結界を張りましょうか」と真面目な返しをしてきた。
そんなのはいらない。これならどうだ。
「結界を張っても結局は部屋に一人ぼっちじゃん。俺、一人だと怖い事考えちゃうんだ」
「では、どう致しましょう……」
この言葉を待ってたぜ。俺は心の中でニヤリとほくそ笑むとベビーフェイス(使い魔ポミィ曰く)を最大限利用してか弱く首を傾げた。
「オーティスが一緒に寝てくれたらいいだろう?」
「私が添い寝…………」
オーティスはスッと顔を逸らして下を向いた。キモいと思われたか!?
「ダメ……かな?」
ここは引かずに押す!
返事を待つ間、心臓が大きく脈打つ。
「――分かりました、こちらにいらしてください」
(っしゃぁあ!!)
第一関門突破!
心の中で思いっきりガッツポーズを決める。
次はどうやって距離を詰めてやろう……そう悪知恵を働かせた時、先にベッドに行ったオーティスが「どうぞ」と右手を伸ばして腕枕の体勢をとった。
(いきなり腕枕!? そうきたか……)
オーティスの奴、身持ちの固そうな顔をして俺を腕枕でお出迎えするとは……実はとんでもない遊び人だったりする!?
婚約者との仲を邪魔してやろうと最低最悪の考えを持ってこの部屋を訪れたはずなのに、簡単に腕枕を提供するオーティスに少しだけ彼の『婚約者』が不憫になる。が、今の俺に遠慮はない。オーティスに腕枕をしてもらうためベッドの縁に膝を乗せた。
ギシッと軋む音が羞恥心に火を付ける。
(あっ、あの時の目だ……)
オーティスの様子を盗み見るんじゃなかった。生霊に弄ばれたあの時と同じ、熱のこもった目がこちらに向けられている。
「どうしましたか? 早くいらしてください」
顔色一つ変えないオーティスに主導権を握られているようで面白くない。俺は「どうだ」と言わんばかりにピッタリくっ付いてやった。
当たり前だけど顔がめちゃくちゃ近い。きめ細かくて滑らかな肌。彫刻のような綺麗な顔。けど、この力強い腕も心も……俺の知らない誰かの物なんだ。
悲しいな。
「ねえ……あの約束覚えてる? ……『私が必ずここから連れ出します』」
オーティスはどう答えるんだろう。
「…………覚えています。すみませんでした」
謝られた。
こんなにもあっけなく、あっさりとフラれてしまった。婚約者がいるのなら当然のことだけど、そうだと分かっていても胸が痛む。
「好きな人との出会いはいつ?」
「え!? ……十二歳の時です」
十二歳……俺と出会った年にその人とも出会っていたのか。
「どうして好きになったの?」
「……そばで守りたいと思いました」
おいおい、俺にも似たような事を言ってたぞ。『守りたい』、そう思える人が現れると簡単に乗り換えるんだな。こっちは子供の頃の口約束を信じて何年も待ってたっていうのに……酷くないか?
つまり、約束を覚えてたくせになあなあに済まそうとしてたわけだ。好きな人ができた時点で教えてくれればよかったのに。なんで言わなかったんだよ。
しかし、その理由を考えたところでもう一度胸が痛むだけだった。
(そっか……口約束だから放っておかれたんだ。くそぉ、ムカムカしてきた! 夜這い王子の本気見せてやる)
「あのさ、オーティス。生霊に弄ばれたせいで俺……そういう事ができなくなっちゃうかもしれない。そうなったら困るだろう?」
「そういう事……?」
「オーティスがすぐに魔法紐で生霊を捕まえてくれてたら、こんな風にならなくて済んだんだ。だからさ、俺がそういう事しても平気になるよう手伝ってよ。触ったり…………キスしたり」
ディナーの時に、困った事があったらすぐにお申し付けくださいってそっちが言ったんだ。これが俺の困ってる事だよ。さあ、どうする?
俺は色目を使ってきたメイドたちのように上目遣いでオーティスを見つめた。女狐のように妖艶に。
「キ、キスですか!?」
少し慌てたオーティスの頬に赤みが差す。俺は上半身を起こして仰向けのオーティスを見下ろした。俺を映す切長の目が丸くなるほど見開いている。
もうどうにでもなれ。いーっぱい困らせてやる。オーティスが拒絶したり怒ったら冗談だって言えばいいんだ。
「分かりました」
「うん………………え?」
(分かりました? 分かったって言ったのか?)
オーティスの右手が髪に触れて思わず肩を竦める。こんなに優しく撫でられるのは何年振りだろう。その手はするりと下がり頬に添えられた。親指で唇がなぞられる。
「……オーティス?」
「なんですか?」
初めて聞く彼の甘い声に心臓が飛び出しそうになる。体を起こしたオーティスによって俺の体は反転させられ、あっという間に組み敷かれてしまった。何が起きているのか分からず無意識に半開きの口がパクパクする。
誘ったよ。確かに俺から誘った。でもそれはちょっとした復讐心からで。狼狽えるオーティスを見て楽しむつもりだったのに……。
(こ、こんなのおかしいじゃん……どうして俺が下になってるんだよぉー!)
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