不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ

文字の大きさ
10 / 53
第一章

10、返り討ち

しおりを挟む
「怖いですか? 生霊を思い出しますか?」

 ベッドの上で俺に覆い被さったオーティスが、どこまでも真っ直ぐ見つめてくる。緊張から声が出せなくなってしまった俺はぶるぶると頭を左右に振った。

「では、これは?」

 オーティスの唇が軽くおでこに触れ、先程と同じように怖くないと頭を振って伝える。

「そうですか」
 瞼、頬、耳と続くキス。「大丈夫ですか?」と耳元で囁かれ、かかる吐息に体がぞわっと震える。俺はキュッと目を閉じてなんとか声を出した。

「大……丈夫」

 オーティスは耳たぶを舐めたり甘噛みする傍らで、引き結んだ俺の唇の上を指先で何度もなぞる。

「力を抜いてください」

 その言葉に素直に従って閉じた目と口元から力を抜くと、柔らかくなった唇を指先がふにっと押した。その時何を思ったのか、俺はその指をペロリと舐めてしまったのだ。

 オーティスもまさか舐められるとは思っていなかったのだろう。素早く手を引っ込め、耳元から顔を離して俺と目を合わせた。

(キスしたい……)

 やめろと突き飛ばされるかもしれない。しかし、そんなこともは何も考えず頭を持ち上げて彼の唇に自分の唇を重ねていた。

「――!?」

 オーティスの体が強張った。その様子が見たくて薄く瞼を開き、目の前で揺れる紫の瞳をぼんやりと眺める。

(唇ってこんな感触なんだ。気持ち良い……もっとしたい……)

 チュッ、チュッと啄むようなキスを何度か重ねた後、息継ぎをしようと開いた口の中にぬるりとオーティスの舌が入ってきた。持ち上げていた頭を枕に落として、彼の首に腕を回し見よう見まねで舌を絡め合う。分厚い舌がグッと奥まで差し込まれ、唇の端から混ざり合った涎がいやらしく垂れた。

「オーティス……苦し……」
「すみません」

 パッと唇が離れる。

(ああ……ここまでか)
 夢のような行為が終わってしまう。熱く火照った体にどっと寂しさが押し寄せてくる。もっと触れ合いたかった――名残惜しい気持ちを押し隠して俺を見下ろすオーティスの服を指先でちょんと摘むと、彼の目に再び熱が宿ったような気がした。

「体を触ってもよろしいですか?」
「え? ……あ、うん」

 胸の高鳴りがすぐさま疼きを呼び戻す。薄々のガウンの結び目が解かれ開かれる胸元。首を撫でる大きな手はすーっと胸の中心を通って下半身へと流れ、すでに立ち上がったモノを避けるようにお腹や太ももを撫でる。そして一度下がった手は再び胸元へと運ばれ、固くなった二つの突起のうち一つを指先で掠めた。

「あっ!!」

 なんとか我慢していたのに、思わず声が出てしまった。オーティスは手を止めたが、その目は俺の許可を待ち続けている。

 やめないで……と刺激を欲しる体が勝手に疼き、続きが欲しいと恥ずかしさより性欲が勝った。

「オーティスもっと触って!」

 薄明かりの中で彼の目が血走った……そう思った時にはもう誰にも彼を止められそうになかった。オーティスは俺に唇を押し当て、深いキスと同時に荒々しく両胸を揉んでくる。小さな突起は指先で何度も刺激され、理性が崩壊するのにそう時間はかからなかった。

「あっ……あっ!!」と喘ぎ、こっちも触って欲しいと大きく腰を揺らす。それを察したオーティスが手のひらで俺の反り立ったモノを包み込んだ。

「っああ!!」

 ビクッと跳ねた腰は押さえつけられ、欲望の塊が力強く扱かれる。舌で胸を舐められながらの同時責めは自分でする時とは比べものにならないほど快感だった。

「気持ち良いですか」
 涙目になりながら、うんうんと一生懸命頷く。

「凄く……気持ち……いっ!! 俺、もう……イっちゃう……」

 限界手前で「も……やめて……」と細く訴えたのだが、オーティスは見たこともない淫靡な笑みを浮かべ一縷の望みも打ち消した。


「イってください。このまま私の手の中で」

 う、嘘だろ? オーティスの手の中で?
 ここまでしといて今更だけど、それはさすがに恥ずかしすぎる。オーティスの手だけじゃなくて布団だって汚れちゃうかもしれないよ。お願いオーティス……。

「ほんとに……出ちゃうから……汚しちゃう」
「いいからこのまま」

 泣きそうな俺を責め立てるようにオーティスの手の動きが速くなる。

「んぁっ!! ……っ!!」

 体がビクビクッと数回震え熱い欲望を思いきり吐き出した。オーティスは残りの一滴まで絞り出すかのようにゆっくり手を動かし、俺は大きく胸を起伏させながら涙目でその様子をじっと見つめた。

「……俺だけ? オーティスは?」
「私はいいんです。体を拭きましょう」
「待って……俺もオーティスの触りたい」
「え?」

 仰向けのまま手を伸ばして、服の上から硬さの残るそれをさわさわと優しく撫でてやる。目を細めて「んっ……」と小さな声を漏らす姿がたまらなく可愛い。

「オーティスの大きいな……それに太くて硬い」
「フィル……様……」
 眉を寄せてつらそうに息を吐く彼に追い打ちをかける。今度はオーティスの番だ。

「俺もイクとこが見たい」
「そんなこと……」
「オーティス……凄く色っぽいよ……」
 先程熱を放ったばかりだというのに、俺のあそこが再び疼きだす。

 ごくっと唾を飲み込んだオーティスは「フィル様、すみません!」と下着ごとズボンを脱いで、自分と俺の手を重ねて上下に動かし始めた。

「すぐに…済ませます……」

 艶っぽく切なげな目。俺を見つめるその顔をずっと見ていたい。

 俺は向かい合うように座り直すと、たまらず空いている手で再び熱を持った自分のモノを扱き始めた。俺の手にオーティスの片手が添えられ、二人で必死に両手を動かし続ける。

「オーティスと一緒にイキたい」

 つらそうな顔でこくんと頷いたオーティスが愛しくて胸の奥がキュッとなる。暫くしてオーティスがすがるように俺を見た。

「フィル様……イキそう……です」
「俺……も……一緒に」
「はい……イ……クっ!!」

 同時に腰が震えた。一生懸命息を吸う。軽くキスをして、そのまま二人でぐったりとベッドに倒れ込んだ。暫く向かい合って互いの顔を見ていたけれど、心音が落ち着くにつれてだんだん瞼が重くなってきた。

(オーティス……好き……)
 甘い余韻に浸りながら、俺はいつの間にか寝てしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された俺の農業異世界生活

深山恐竜
BL
「もう一度婚約してくれ」 冤罪で婚約破棄された俺の中身は、異世界転生した農学専攻の大学生! 庶民になって好きなだけ農業に勤しんでいたら、いつの間にか「畑の賢者」と呼ばれていた。 そこに皇子からの迎えが来て復縁を求められる。 皇子の魔の手から逃げ回ってると、幼馴染みの神官が‥。 (ムーンライトノベルズ様、fujossy様にも掲載中) (第四回fujossy小説大賞エントリー中)

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。

村松砂音(抹茶砂糖)
BL
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました! ありがとうございました!! いつも不機嫌そうな美形の騎士×特異体質の不憫な騎士見習い <あらすじ> 魔力欠乏体質者との性行為は、死ぬほど気持ちがいい。そんな噂が流れている「魔力欠乏体質」であるリュカは、父の命令で第二王子を誘惑するために見習い騎士として騎士団に入る。 見習い騎士には、側仕えとして先輩騎士と宿舎で同室となり、身の回りの世話をするという規則があり、リュカは隊長を務めるアレックスの側仕えとなった。 いつも不機嫌そうな態度とちぐはぐなアレックスのやさしさに触れていくにつれて、アレックスに惹かれていくリュカ。 ある日、リュカの前に第二王子のウィルフリッドが現れ、衝撃の事実を告げてきて……。 親のいいなりで生きてきた不憫な青年が、恋をして、しあわせをもらう物語。 ※性描写が多めの作品になっていますのでご注意ください。 └性描写が含まれる話のサブタイトルには※をつけています。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しました。

囚われの聖女様を救いに行っただけなのに、なぜこうなったのかわかりません。

なつか
BL
史上最悪の王に囚われてしまった聖女を救うため、王宮に忍び込んだグレン。 いざ見つけた聖女には逃走防止用に魔法が籠められた魔道具の足輪が付けられていた。 それを壊すためには魔力を聖女に受け渡してもらう必要があるという。 ではその方法は? 「僕を抱けばいい」 そんな感じで型破りな聖女様(♂)に振り回される男の話。

完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?

七角
BL
第12回BL大賞奨励賞をいただきました♡第二王子のユーリィは、美しい兄と違って国を統べる使命もなく、兄の婚約者・エドゥアルド公爵に十年間叶わぬ片想いをしている。 その公爵が今日、亡くなった。と思いきや、禁忌の蘇生魔法で悪魔的な美貌を復活させた上、ユーリィを抱き締め、「君は一年以内に死ぬが、私が守る」と囁いてー? 十二個もあるユーリィの「死亡ふらぐ」を壊していく中で、この世界が「びいえるげえむ」の舞台であり、公爵は「テンセイシャ」だと判明していく。 転生者と登場人物ゆえのすれ違い、ゲームで割り振られた役割と人格のギャップ、世界の強制力に知らず翻弄されるうち、ユーリィは知る。自分が最悪の「カクシきゃら」だと。そして公爵の中の"創真"が、ユーリィを救うため十二回死んでまでやり直していることを。 どんでん返しからの甘々ハピエンです。

【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました

ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。 タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。

嫌われた暴虐な僕と喧嘩をしに来たはずの王子は、僕を甘くみているようだ。手を握って迫ってくるし、聞いてることもやってることもおかしいだろ!

迷路を跳ぶ狐
BL
 悪逆の限りを尽くした公爵令息を断罪しろ! そんな貴族たちの声が高まった頃、僕の元に、冷酷と恐れられる王子がやって来た。  その男は、かつて貴族たちに疎まれ、王城から遠ざけられた王子だ。昔はよく城の雑用を言いつけられては、魔法使いの僕の元を度々訪れていた。  ひどく無愛想な王子で、僕が挨拶した時も最初は睨むだけだったのに、今は優しく微笑んで、まるで別人だ。  出会ったばかりの頃は、僕の従者まで怯えるような残酷ぶりで、鞭を振り回したこともあったじゃないか。それでも度々僕のところを訪れるたびに、少しずつ、打ち解けたような気がしていた。彼が民を思い、この国を守ろうとしていることは分かっていたし、応援したいと思ったこともある。  しかし、あいつはすでに王位を継がないことが決まっていて、次第に僕の元に来るのはあいつの従者になった。  あいつが僕のもとを訪れなくなってから、貴族たちの噂で聞いた。殿下は、王城で兄たちと協力し、立派に治世に携わっていると。  嬉しかったが、王都の貴族は僕を遠ざけたクズばかり。無事にやっているのかと、少し心配だった。  そんなある日、知らせが来た。僕の屋敷はすでに取り壊されることが決まっていて、僕がしていた結界の魔法の管理は、他の貴族が受け継ぐのだと。  は? 一方的にも程がある。  その直後、あの王子は僕の前に現れた。何と思えば、僕を王城に連れて行くと言う。王族の会議で決まったらしい。  舐めるな。そんな話、勝手に進めるな。  貴族たちの間では、みくびられたら終わりだ。  腕を組んでその男を睨みつける僕は、近づいてくる王子のことが憎らしい反面、見違えるほど楽しそうで、従者からも敬われていて、こんな時だと言うのに、嬉しかった。  だが、それとこれとは話が別だ! 僕を甘く見るなよ。僕にはこれから、やりたいことがたくさんある。  僕は、屋敷で働いてくれていたみんなを知り合いの魔法使いに預け、王族と、それに纏わり付いて甘い汁を吸う貴族たちと戦うことを決意した。  手始めに……  王族など、僕が追い返してやろう!  そう思って対峙したはずなのに、僕を連れ出した王子は、なんだか様子がおかしい。「この馬車は気に入ってもらえなかったか?」だの、「酒は何が好きだ?」だの……それは今、関係ないだろう……それに、少し距離が近すぎるぞ。そうか、喧嘩がしたいのか。おい、待て。なぜ手を握るんだ? あまり近づくな!! 僕は距離を詰められるのがどうしようもなく嫌いなんだぞ!

ゲーム世界の貴族A(=俺)

猫宮乾
BL
 妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

処理中です...