不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ

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第一章

11、少年がキュンを知った日 ※オーティス視点

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(フィル様……眠ってしまわれたのか)

『そういう事しても平気になるよう手伝ってよ』
『触ったり』
『キスしたり』

 突然の提案だった。

(あれが睦事なのか……)

 フィル様を独り占めしているような特別な時間だった。
 貴方の表情、言葉、行動。その一つ一つにいつだって私の心が大きく揺さぶられているのをご存じだろうか。

 互いの体を綺麗に拭いて、起こさないよう新しい寝衣とベッドシーツに取り替えていく。
 なんて愛らしい人なんだろう……と、ほのかに残る熱に浸りあどけない寝顔に見惚れていると唐突に自分の間違いに気が付いた。

 早く生霊を捕らえなかったせいでフィル様がつらい思いをしているのだ。脳天気に浮かれてる場合ではない。しかし触る事もキスする事も貴方に許された身であると思うと、やはり浮かれずにはいられない。

 どこまでを求めていらっしゃるのだろう。どこまでなら許されるのだろうか。

 それにフィル様はあの日のプロポーズを覚えていらっしゃった。ということは、私にもまだ望みがあると考えていいのだろうか。

 静かに寝息を立てる貴方の柔らかな髪と頬をそっと撫でてみる。当然だがもうあの頃のようなぷにぷにの頬ではない。あの頬を常に触っていたくて作り出したのが使い魔ポックスとポミィ。

 フィル様との出会いは、私が十二歳の時。きっかけはセガール王子がドヤ顔で言い放った「オーティスってさ、一度も『胸キュン』したことないだろう?」だった。


 ◇◇◇

 キュュュ~ン!!

「ぅはっ!!」
「初キュンおめでとう。オーティス君、気持ちは分かるよ。だが、まずは呼吸を整えたまえ」

 いとも簡単に胸キュンした。
 細く柔らかなハニーブロンドの髪。こぼれ落ちそうな大きくて丸い目はブルーサファイアのように深みがあり、教会の天井に描かれていたフレスコ画の天使そのものだった。

 そして私の肩に手を置き「あっはっはっは」と満足げに高笑いするセガール王子ととてもよく似ている……けど全然違う。

 友人の二面性を知っているからか、令嬢たちを騒がせるセガール王子をどこか冷めた目で見てきたのだが、純朴に私を見上げるこのぷにぷにほっぺの第七王子は愛でたくて仕方がない。その頬の感触が知りたくてスッと手を伸ばした。

「私の弟に……」
「ダメだよー。弟なんだから」

『僕の』という言葉をやけに強調したセガール王子をじとっと見る。それならばと、欲望に忠実な私はこの日を境に離宮へ足繁く通うことにしたのだった。

 そうして足繁く通った結果、父は私に外出禁止令を発令。フィル様に会いにいく時間を習い事をサボって捻出したのだから当然の罰だ。

 だが、私はめげなかった。
 フィル様がいかに素晴らしいかを両親に熱烈にプレゼン。

「そんなに弟が欲しいなら、なぁお前」
「ねぇ、貴方」
 と頬を赤らめる両親に猛反発。

「フィル様が良い!」と言い続ける私のあまりのしつこさと熱意に負けた彼らは、定期的にフィル様と会えるよう国王陛下に願い出てくれた。
 正式に許可を得た私は習い事や勉強を疎かにしないと約束して、ゆっくりフィル様との親交を深めていったのだ。私たちの絆は深まった、そう思っていたのに……。

「セガール兄上ー!!」

 フィル様が兄であるセガール様を呼ぶ姿を目にすると、やはり本物の兄弟の絆には敵わない。そんな思いが胸の奥底で燻るのだった。
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