11 / 53
第一章
11、少年がキュンを知った日 ※オーティス視点
しおりを挟む
(フィル様……眠ってしまわれたのか)
『そういう事しても平気になるよう手伝ってよ』
『触ったり』
『キスしたり』
突然の提案だった。
(あれが睦事なのか……)
フィル様を独り占めしているような特別な時間だった。
貴方の表情、言葉、行動。その一つ一つにいつだって私の心が大きく揺さぶられているのをご存じだろうか。
互いの体を綺麗に拭いて、起こさないよう新しい寝衣とベッドシーツに取り替えていく。
なんて愛らしい人なんだろう……と、ほのかに残る熱に浸りあどけない寝顔に見惚れていると唐突に自分の間違いに気が付いた。
早く生霊を捕らえなかったせいでフィル様がつらい思いをしているのだ。脳天気に浮かれてる場合ではない。しかし触る事もキスする事も貴方に許された身であると思うと、やはり浮かれずにはいられない。
どこまでを求めていらっしゃるのだろう。どこまでなら許されるのだろうか。
それにフィル様はあの日のプロポーズを覚えていらっしゃった。ということは、私にもまだ望みがあると考えていいのだろうか。
静かに寝息を立てる貴方の柔らかな髪と頬をそっと撫でてみる。当然だがもうあの頃のようなぷにぷにの頬ではない。あの頬を常に触っていたくて作り出したのが使い魔ポックスとポミィ。
フィル様との出会いは、私が十二歳の時。きっかけはセガール王子がドヤ顔で言い放った「オーティスってさ、一度も『胸キュン』したことないだろう?」だった。
◇◇◇
キュュュ~ン!!
「ぅはっ!!」
「初キュンおめでとう。オーティス君、気持ちは分かるよ。だが、まずは呼吸を整えたまえ」
いとも簡単に胸キュンした。
細く柔らかなハニーブロンドの髪。こぼれ落ちそうな大きくて丸い目はブルーサファイアのように深みがあり、教会の天井に描かれていたフレスコ画の天使そのものだった。
そして私の肩に手を置き「あっはっはっは」と満足げに高笑いするセガール王子ととてもよく似ている……けど全然違う。
友人の二面性を知っているからか、令嬢たちを騒がせるセガール王子をどこか冷めた目で見てきたのだが、純朴に私を見上げるこのぷにぷにほっぺの第七王子は愛でたくて仕方がない。その頬の感触が知りたくてスッと手を伸ばした。
「私の弟に……」
「ダメだよー。僕の弟なんだから」
『僕の』という言葉をやけに強調したセガール王子をじとっと見る。それならばと、欲望に忠実な私はこの日を境に離宮へ足繁く通うことにしたのだった。
そうして足繁く通った結果、父は私に外出禁止令を発令。フィル様に会いにいく時間を習い事をサボって捻出したのだから当然の罰だ。
だが、私はめげなかった。
フィル様がいかに素晴らしいかを両親に熱烈にプレゼン。
「そんなに弟が欲しいなら、なぁお前」
「ねぇ、貴方」
と頬を赤らめる両親に猛反発。
「フィル様が良い!」と言い続ける私のあまりのしつこさと熱意に負けた彼らは、定期的にフィル様と会えるよう国王陛下に願い出てくれた。
正式に許可を得た私は習い事や勉強を疎かにしないと約束して、ゆっくりフィル様との親交を深めていったのだ。私たちの絆は深まった、そう思っていたのに……。
「セガール兄上ー!!」
フィル様が兄であるセガール様を呼ぶ姿を目にすると、やはり本物の兄弟の絆には敵わない。そんな思いが胸の奥底で燻るのだった。
『そういう事しても平気になるよう手伝ってよ』
『触ったり』
『キスしたり』
突然の提案だった。
(あれが睦事なのか……)
フィル様を独り占めしているような特別な時間だった。
貴方の表情、言葉、行動。その一つ一つにいつだって私の心が大きく揺さぶられているのをご存じだろうか。
互いの体を綺麗に拭いて、起こさないよう新しい寝衣とベッドシーツに取り替えていく。
なんて愛らしい人なんだろう……と、ほのかに残る熱に浸りあどけない寝顔に見惚れていると唐突に自分の間違いに気が付いた。
早く生霊を捕らえなかったせいでフィル様がつらい思いをしているのだ。脳天気に浮かれてる場合ではない。しかし触る事もキスする事も貴方に許された身であると思うと、やはり浮かれずにはいられない。
どこまでを求めていらっしゃるのだろう。どこまでなら許されるのだろうか。
それにフィル様はあの日のプロポーズを覚えていらっしゃった。ということは、私にもまだ望みがあると考えていいのだろうか。
静かに寝息を立てる貴方の柔らかな髪と頬をそっと撫でてみる。当然だがもうあの頃のようなぷにぷにの頬ではない。あの頬を常に触っていたくて作り出したのが使い魔ポックスとポミィ。
フィル様との出会いは、私が十二歳の時。きっかけはセガール王子がドヤ顔で言い放った「オーティスってさ、一度も『胸キュン』したことないだろう?」だった。
◇◇◇
キュュュ~ン!!
「ぅはっ!!」
「初キュンおめでとう。オーティス君、気持ちは分かるよ。だが、まずは呼吸を整えたまえ」
いとも簡単に胸キュンした。
細く柔らかなハニーブロンドの髪。こぼれ落ちそうな大きくて丸い目はブルーサファイアのように深みがあり、教会の天井に描かれていたフレスコ画の天使そのものだった。
そして私の肩に手を置き「あっはっはっは」と満足げに高笑いするセガール王子ととてもよく似ている……けど全然違う。
友人の二面性を知っているからか、令嬢たちを騒がせるセガール王子をどこか冷めた目で見てきたのだが、純朴に私を見上げるこのぷにぷにほっぺの第七王子は愛でたくて仕方がない。その頬の感触が知りたくてスッと手を伸ばした。
「私の弟に……」
「ダメだよー。僕の弟なんだから」
『僕の』という言葉をやけに強調したセガール王子をじとっと見る。それならばと、欲望に忠実な私はこの日を境に離宮へ足繁く通うことにしたのだった。
そうして足繁く通った結果、父は私に外出禁止令を発令。フィル様に会いにいく時間を習い事をサボって捻出したのだから当然の罰だ。
だが、私はめげなかった。
フィル様がいかに素晴らしいかを両親に熱烈にプレゼン。
「そんなに弟が欲しいなら、なぁお前」
「ねぇ、貴方」
と頬を赤らめる両親に猛反発。
「フィル様が良い!」と言い続ける私のあまりのしつこさと熱意に負けた彼らは、定期的にフィル様と会えるよう国王陛下に願い出てくれた。
正式に許可を得た私は習い事や勉強を疎かにしないと約束して、ゆっくりフィル様との親交を深めていったのだ。私たちの絆は深まった、そう思っていたのに……。
「セガール兄上ー!!」
フィル様が兄であるセガール様を呼ぶ姿を目にすると、やはり本物の兄弟の絆には敵わない。そんな思いが胸の奥底で燻るのだった。
313
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された俺の農業異世界生活
深山恐竜
BL
「もう一度婚約してくれ」
冤罪で婚約破棄された俺の中身は、異世界転生した農学専攻の大学生!
庶民になって好きなだけ農業に勤しんでいたら、いつの間にか「畑の賢者」と呼ばれていた。
そこに皇子からの迎えが来て復縁を求められる。
皇子の魔の手から逃げ回ってると、幼馴染みの神官が‥。
(ムーンライトノベルズ様、fujossy様にも掲載中)
(第四回fujossy小説大賞エントリー中)
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。
村松砂音(抹茶砂糖)
BL
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました!
ありがとうございました!!
いつも不機嫌そうな美形の騎士×特異体質の不憫な騎士見習い
<あらすじ>
魔力欠乏体質者との性行為は、死ぬほど気持ちがいい。そんな噂が流れている「魔力欠乏体質」であるリュカは、父の命令で第二王子を誘惑するために見習い騎士として騎士団に入る。
見習い騎士には、側仕えとして先輩騎士と宿舎で同室となり、身の回りの世話をするという規則があり、リュカは隊長を務めるアレックスの側仕えとなった。
いつも不機嫌そうな態度とちぐはぐなアレックスのやさしさに触れていくにつれて、アレックスに惹かれていくリュカ。
ある日、リュカの前に第二王子のウィルフリッドが現れ、衝撃の事実を告げてきて……。
親のいいなりで生きてきた不憫な青年が、恋をして、しあわせをもらう物語。
※性描写が多めの作品になっていますのでご注意ください。
└性描写が含まれる話のサブタイトルには※をつけています。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しました。
完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?
七角
BL
第12回BL大賞奨励賞をいただきました♡第二王子のユーリィは、美しい兄と違って国を統べる使命もなく、兄の婚約者・エドゥアルド公爵に十年間叶わぬ片想いをしている。
その公爵が今日、亡くなった。と思いきや、禁忌の蘇生魔法で悪魔的な美貌を復活させた上、ユーリィを抱き締め、「君は一年以内に死ぬが、私が守る」と囁いてー?
十二個もあるユーリィの「死亡ふらぐ」を壊していく中で、この世界が「びいえるげえむ」の舞台であり、公爵は「テンセイシャ」だと判明していく。
転生者と登場人物ゆえのすれ違い、ゲームで割り振られた役割と人格のギャップ、世界の強制力に知らず翻弄されるうち、ユーリィは知る。自分が最悪の「カクシきゃら」だと。そして公爵の中の"創真"が、ユーリィを救うため十二回死んでまでやり直していることを。
どんでん返しからの甘々ハピエンです。
【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました
ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。
タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。
大魔法使いに生まれ変わったので森に引きこもります
かとらり。
BL
前世でやっていたRPGの中ボスの大魔法使いに生まれ変わった僕。
勇者に倒されるのは嫌なので、大人しくアイテムを渡して帰ってもらい、塔に引きこもってセカンドライフを楽しむことにした。
風の噂で勇者が魔王を倒したことを聞いて安心していたら、森の中に小さな男の子が転がり込んでくる。
どうやらその子どもは勇者の子供らしく…
憧れのスローライフは計画的に
朝顔
BL
2022/09/14
後日談追加しました。
BLゲームの世界の悪役令息に憑依してしまった俺。
役目を全うして、婚約破棄から追放エンドを迎えた。
全て計画通りで、憧れのスローライフを手に入れたはずだった。
誰にも邪魔されない田舎暮らしで、孤独に生きていこうとしていたが、謎の男との出会いが全てを変えていく……。
◇ハッピーエンドを迎えた世界で、悪役令息だった主人公のその後のお話。
◇謎のイケメン神父様×恋に後ろ向きな元悪役令息
◇他サイトで投稿あり。
【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!
天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。
なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____
過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定
要所要所シリアスが入ります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる