12 / 53
第一章
12、執着男の努力・焦り・奇行・そして愛! ※オーティス視点
しおりを挟む
そして幼いフィル様と親しくなって暫く経った頃。
試験のために一月ほど会いに来れないとお伝えした日のことである。
「そうなんだ……うん、分かった。試験頑張ってね。終わったら必ず会いに来てね!」
聞き分け良く返事をしたフィル様は、今にも泣きそうな顔で笑っていた。その顔が忘れられないまま一月。試験を無事に終えて久しぶりに会いに行くと、彼は私を見た途端、顔をくしゃくしゃにして激しく泣きだしてしまったのだ。
びっくりした。
オロオロと狼狽えつつ、なるべく落ち着いた口調を心掛けながら「ど、どうなさったのですか?」と声をかけてみる。
どうやらアンドレアス王子や他の者に「試験なんて嘘に決まってるだろう? お前が嫌いだから会いに来ないんだよ」と言われたようだった。
「……良かっ……また会いにきてくれた。僕はみんなに嫌われてるから……オーティスも僕を嫌いになったんだって……。会いたかったの……もう一度オーティスに会いたかったの……」
「……そんなに……私に会いたかったですか?」
小さな体を震わせながらこくっと頷く仕草に胸の辺りが騒がしくなる。
この時感じた達成感や高揚感は次第に彼の全てを私一人で埋めたいという欲望に形を変え、それを実現するためにどうしたらいいのか私は必死に考えた。そしてある答えにたどり着く。
この国では同性婚が正式に認められている。どういう組み合わせになろうとも結婚するにあたって性別は自由。
『家族になれば全ての願いが叶うのでは?』
そうだ、願望を実現するためにはこれしかない。結婚すればいいのかと腑に落ちた。
そうして少年だった私はフィル様を自分だけのものにするために『私が必ずここから連れ出します。約束します』とプロポーズしたのである。
◇◇◇
それからの私は少しでも箔を付けようと学業に打ち込んだ。主席でアカデミーを卒業。その後は大魔法師になるために必死で働き、フィル様と会う機会が徐々に減っていっても私たちの未来のために必要なことだと割り切った。
いつも頭の中に思い浮かぶのは、あの頃の小さなフィル様。守ってあげたくなる可愛らしい弟のフィル様。そう思っていたのに、アカデミーの入学式で久しぶりに彼を見た時、私はとんでもない衝撃を受けた。
なぜなら、元々天使のようだったあの方は少し見ないうちに更に美しく絶句するほどの美男子へと成長を遂げていたからだ。
表舞台へ出てこないフィル様は貴族たちから「醜い顔をしているらしい」などと散々な噂を立てられていたが、その噂も一瞬にして払拭された。
右を見ても左を見ても、愛らしさを残しながら美しく精悍な顔付きのフィル様に男も女も見惚れている。あれほど悪口を垂れ流してきた貴族たちがだ。
セガール様のような余裕さはないものの、少し尖った様子から繊細で壊れてしまいそうな脆さも垣間見え、隠しきれないほどの熱い視線が彼に向けられている。
そして、それは私とて例外ではなかった。昔から知っているのに初めて会ったかのような不思議な気持ち。ふわふわしながらも鼓動は早く、貴方から一秒も目が離せない。
突然不安になった。
あのプロポーズは今でも有効だろうか。
次男坊の私が一国の王子に結婚を申し込むために大魔法師を目指してきた。けれど、いつになったらその大魔法師とやらになれるのだろう。
焦燥感に駆られた私は王都にフィル様と住むための屋敷を建てるという奇行に走り家族を不安にさせた。
仕事は以前にも増してどんな危険な場所へも赴き、人がやりたがらない仕事も引き受けた。血眼になって腕を磨き、ある時たまたま霊の類を退治したことが認められ、ついに念願の大魔法師の称号を手にいれたのだ。
やっと貴方を迎えにいくための準備が整った。そんな矢先に舞い込んだ生霊事件。
これまでフィル様をとても愛しく思ってきたが、正直性の対象として見たことは一度もなかった。
なのに……生霊に体を弄ばれて上気した貴方の顔、引き結んだ口から漏れる掠れた喘ぎ声。あの映像が私の中の全てをひっくり返した。
人生で初めて欲情したのだ。
生霊を退治することすら忘れて必死に乱れる貴方の姿を目に焼き付けた。昨夜貴方を使って自分を慰めたなど絶対に知られてはいけない。
「……オーティ……ス……」
「もっと名前を呼んでください……貴方は誰にも渡しませんから」
寝息を立てる愛しい人の髪にそっと口付けた。
試験のために一月ほど会いに来れないとお伝えした日のことである。
「そうなんだ……うん、分かった。試験頑張ってね。終わったら必ず会いに来てね!」
聞き分け良く返事をしたフィル様は、今にも泣きそうな顔で笑っていた。その顔が忘れられないまま一月。試験を無事に終えて久しぶりに会いに行くと、彼は私を見た途端、顔をくしゃくしゃにして激しく泣きだしてしまったのだ。
びっくりした。
オロオロと狼狽えつつ、なるべく落ち着いた口調を心掛けながら「ど、どうなさったのですか?」と声をかけてみる。
どうやらアンドレアス王子や他の者に「試験なんて嘘に決まってるだろう? お前が嫌いだから会いに来ないんだよ」と言われたようだった。
「……良かっ……また会いにきてくれた。僕はみんなに嫌われてるから……オーティスも僕を嫌いになったんだって……。会いたかったの……もう一度オーティスに会いたかったの……」
「……そんなに……私に会いたかったですか?」
小さな体を震わせながらこくっと頷く仕草に胸の辺りが騒がしくなる。
この時感じた達成感や高揚感は次第に彼の全てを私一人で埋めたいという欲望に形を変え、それを実現するためにどうしたらいいのか私は必死に考えた。そしてある答えにたどり着く。
この国では同性婚が正式に認められている。どういう組み合わせになろうとも結婚するにあたって性別は自由。
『家族になれば全ての願いが叶うのでは?』
そうだ、願望を実現するためにはこれしかない。結婚すればいいのかと腑に落ちた。
そうして少年だった私はフィル様を自分だけのものにするために『私が必ずここから連れ出します。約束します』とプロポーズしたのである。
◇◇◇
それからの私は少しでも箔を付けようと学業に打ち込んだ。主席でアカデミーを卒業。その後は大魔法師になるために必死で働き、フィル様と会う機会が徐々に減っていっても私たちの未来のために必要なことだと割り切った。
いつも頭の中に思い浮かぶのは、あの頃の小さなフィル様。守ってあげたくなる可愛らしい弟のフィル様。そう思っていたのに、アカデミーの入学式で久しぶりに彼を見た時、私はとんでもない衝撃を受けた。
なぜなら、元々天使のようだったあの方は少し見ないうちに更に美しく絶句するほどの美男子へと成長を遂げていたからだ。
表舞台へ出てこないフィル様は貴族たちから「醜い顔をしているらしい」などと散々な噂を立てられていたが、その噂も一瞬にして払拭された。
右を見ても左を見ても、愛らしさを残しながら美しく精悍な顔付きのフィル様に男も女も見惚れている。あれほど悪口を垂れ流してきた貴族たちがだ。
セガール様のような余裕さはないものの、少し尖った様子から繊細で壊れてしまいそうな脆さも垣間見え、隠しきれないほどの熱い視線が彼に向けられている。
そして、それは私とて例外ではなかった。昔から知っているのに初めて会ったかのような不思議な気持ち。ふわふわしながらも鼓動は早く、貴方から一秒も目が離せない。
突然不安になった。
あのプロポーズは今でも有効だろうか。
次男坊の私が一国の王子に結婚を申し込むために大魔法師を目指してきた。けれど、いつになったらその大魔法師とやらになれるのだろう。
焦燥感に駆られた私は王都にフィル様と住むための屋敷を建てるという奇行に走り家族を不安にさせた。
仕事は以前にも増してどんな危険な場所へも赴き、人がやりたがらない仕事も引き受けた。血眼になって腕を磨き、ある時たまたま霊の類を退治したことが認められ、ついに念願の大魔法師の称号を手にいれたのだ。
やっと貴方を迎えにいくための準備が整った。そんな矢先に舞い込んだ生霊事件。
これまでフィル様をとても愛しく思ってきたが、正直性の対象として見たことは一度もなかった。
なのに……生霊に体を弄ばれて上気した貴方の顔、引き結んだ口から漏れる掠れた喘ぎ声。あの映像が私の中の全てをひっくり返した。
人生で初めて欲情したのだ。
生霊を退治することすら忘れて必死に乱れる貴方の姿を目に焼き付けた。昨夜貴方を使って自分を慰めたなど絶対に知られてはいけない。
「……オーティ……ス……」
「もっと名前を呼んでください……貴方は誰にも渡しませんから」
寝息を立てる愛しい人の髪にそっと口付けた。
333
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された俺の農業異世界生活
深山恐竜
BL
「もう一度婚約してくれ」
冤罪で婚約破棄された俺の中身は、異世界転生した農学専攻の大学生!
庶民になって好きなだけ農業に勤しんでいたら、いつの間にか「畑の賢者」と呼ばれていた。
そこに皇子からの迎えが来て復縁を求められる。
皇子の魔の手から逃げ回ってると、幼馴染みの神官が‥。
(ムーンライトノベルズ様、fujossy様にも掲載中)
(第四回fujossy小説大賞エントリー中)
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?
七角
BL
第12回BL大賞奨励賞をいただきました♡第二王子のユーリィは、美しい兄と違って国を統べる使命もなく、兄の婚約者・エドゥアルド公爵に十年間叶わぬ片想いをしている。
その公爵が今日、亡くなった。と思いきや、禁忌の蘇生魔法で悪魔的な美貌を復活させた上、ユーリィを抱き締め、「君は一年以内に死ぬが、私が守る」と囁いてー?
十二個もあるユーリィの「死亡ふらぐ」を壊していく中で、この世界が「びいえるげえむ」の舞台であり、公爵は「テンセイシャ」だと判明していく。
転生者と登場人物ゆえのすれ違い、ゲームで割り振られた役割と人格のギャップ、世界の強制力に知らず翻弄されるうち、ユーリィは知る。自分が最悪の「カクシきゃら」だと。そして公爵の中の"創真"が、ユーリィを救うため十二回死んでまでやり直していることを。
どんでん返しからの甘々ハピエンです。
囚われの聖女様を救いに行っただけなのに、なぜこうなったのかわかりません。
なつか
BL
史上最悪の王に囚われてしまった聖女を救うため、王宮に忍び込んだグレン。
いざ見つけた聖女には逃走防止用に魔法が籠められた魔道具の足輪が付けられていた。
それを壊すためには魔力を聖女に受け渡してもらう必要があるという。
ではその方法は?
「僕を抱けばいい」
そんな感じで型破りな聖女様(♂)に振り回される男の話。
【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました
ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。
タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。
ゲーム世界の貴族A(=俺)
猫宮乾
BL
妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。
憧れのスローライフは計画的に
朝顔
BL
2022/09/14
後日談追加しました。
BLゲームの世界の悪役令息に憑依してしまった俺。
役目を全うして、婚約破棄から追放エンドを迎えた。
全て計画通りで、憧れのスローライフを手に入れたはずだった。
誰にも邪魔されない田舎暮らしで、孤独に生きていこうとしていたが、謎の男との出会いが全てを変えていく……。
◇ハッピーエンドを迎えた世界で、悪役令息だった主人公のその後のお話。
◇謎のイケメン神父様×恋に後ろ向きな元悪役令息
◇他サイトで投稿あり。
BLゲームのモブに転生したので壁になろうと思います
雪
BL
前世の記憶を持ったまま異世界に転生!
しかも転生先が前世で死ぬ直前に買ったBLゲームの世界で....!?
モブだったので安心して壁になろうとしたのだが....?
ゆっくり更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる