不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ

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第一章

13、友達を作ってみては?

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 翌朝目を覚ますと、オーティスはもう隣にいなかった。そしていつの間にか綺麗にされた俺の体と寝具。うっす薄のあのガウンは上質なシルクの寝衣に変えられていた。

(俺、オーティスと……)

 重ねた唇の感触。オーティスの色っぽく紅潮した顔。耳に残る吐息。押し寄せる快感。昨夜のことを思い出して一人でうんうん唸りジタバタする。布団にくるまって、ほのかに残るオーティスの香りを胸一杯吸い込んだ。

(アカデミー行きたくないなぁ……)

 二度寝の体勢に入ろうとした時、扉がノックされた。入ってきたのは朝からハイテンションの丸っこいの。オーティスの使い魔で見習い使用人ポルとポムだ。ん~この二体、見た目だけじゃまったく区別がつかない。

「フィル様おはようございます!」
「お食事の支度が整ってます!」

「おはよう。食事の用意ありがとう。ポルとポム、ちょっとおいで」

 体を起こした俺は、軽く手招きしてから顔の前で『ここ』と下を指し示す。顔を見合わせたポルとポムはすすす~っと目の前までやってきた。

「捕まえたっ!!」
 両手をがばっと広げて彼らをぎゅう~っと抱き締める。
(うわぁ~人をダメにするふわふわボディ)

「フィル様っ!?」
「フィル様ぁ~!」

(おっ! 同じ「フィル様」だけど反応が違う。ハニカムぽよに喜ぶぽよ。どっちがどっちだ?)

「ポル?」
「はぁい!」

「ポム?」
「はい……」

 なるほど、ポルは生粋の元気っ子。ポムは少し照れ屋なようだ。

「俺、着替えは一人でできるから二人は先に行ってて」
「はい! ご主人様もお待ちしてます」
「オーティスが?」

「はいっ、ご機嫌でお待ちですー!」
 ニカっと笑って親指を立てている。早くもどっちがポルなのか分かってきた気がするぞ。

「すぐ行くよ」
 俺もニッと歯を見せて笑うとポルとポムはぺこりとお辞儀をして部屋を出ていった。オーティス待っててくれよ、マッハで準備するから!



 ◇◇◇

 食堂に入ると「よく眠れましたか?」とオーティスが穏やかに出迎えてくれた。昨夜のディナー時と同じように、立ち上がってわざわざ俺のために椅子を引いてくれる。

 ここに来るまではウッキウキで話したいことがいっぱいあったのに、オーティスを見た途端俺は静かな良い子ちゃんになってしまった。
 ドキドキして落ち着かない俺とは対照的にいつもと変わらないオーティス。本当にポルたちが言うようにご機嫌なのだろうか。疑いの眼差しで様子を窺っていると、一瞬目を伏せた彼の口元が微かに綻んだ。

(昔遊んでもらった時に何度も見たやつだ)

 幼心にもオーティスがこの顔をする時は機嫌が良さそうだなと思ってた。

 ――『ご機嫌でお待ちです!』

 勝手な思い込みかと思っていたけど、やっぱりそうだったんだ。

 ポルたち使い魔はオーティスの魔力によって作られているから、主であるオーティスの感情も分かるらしい。言わば、使い魔たちの言葉はオーティスの言葉。
 ……というのは言い過ぎだとしても、昨夜の俺とのアレが悪くはなかった。ってことでいいんだよね?

 オーティスは普段自分の気持ちを言わないから、彼がどう思ってるのか知れて嬉しい。へへっ、ご機嫌なんだぁ。

 緊張が解けてほっこりすると急にお腹が空いてきた。用意された朝食を上機嫌でもぐもぐ頬張っていると、ふいにオーティスから話しかけられた。

「アカデミーはどうですか?」

「アカデミー? 別に普通だよ」
「ご友人は?」
「友達なんていないけど」

 昨年まで一つ歳上の異母兄が二人も通っていたんだ。陰口や嫌がらせは日常茶飯事。やられまいと常に気を張っていたし、誰かに気を許すなんてできなかった。兄たちが卒業して今はだいぶ落ち着いたけど、俺と仲良くしたい奴なんていないと思う。

「卒業まで残り数ヶ月ですし、気が合いそうな御令息がいらしたら話をしてみるのもいいかもしれません。私は内向的でしたので、学生時代にもう少し友人を作れば良かったと考える時があります」

「別に俺は……一人は慣れてるし」

 俺の返事にオーティスの眉尻がぐっと下がった。

 確かに友人がいたら楽しいと思うよ。昔は憧れたりもした。このまま一生一匹狼でいるのも寂しいし、今なら同じ騎士科の中に普通に接してくれる奴もいるっちゃいる。友人か……。

「分かったよ。機会があれば話しかけてみる」

 オーティスは「無理のない範囲で構いません」と微笑んだ。しかし彼は自分のこの発言を後に後悔することになる――。
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