殺し屋と行く、見習い黒魔導士が弱過ぎる件

幻月日

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第3話 大魔導士がいる森

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「殺される殺される!! 殺されちゃうううううう!!」

そう叫び始めた少女は、もの凄い勢いで俺から離れた。

「黙れ! 落ち着け!」

少女は俺が話を聞いている間は落ち着いていたのだが、職業を言った瞬間に血相を変えた。
そして今、少女が俺を見る目は恐怖そのものである。
殺し屋をしていると、何度もそういう目を見て来た。

少女を落ち着かせようと少しずつ近づいて行く。

「来ないでっ! そ、それ以上近づいたら……」

少女は杖を取り出して俺に向ける。

「待て! よく聞くんだ! 俺はお前を殺さないし、何もしない。殺し屋っていうのは嘘!」

今の俺にはそう言うしかなかった。
少女を納得させる為にごちゃごちゃというより、そう言う方がもう手っ取り早い状況。

「それこそ嘘よ! そんな野蛮な目つきしちゃって、心の中では殺すチャンスをうかがっているんでしょ!? 上手いこと言って私を家に入れて……許さない!!」

少女は杖を両手で持ち引き構えて、ぶつぶつと何かを唱え始める。
すると杖の先端から火の粉が吹き出し、俺に向けた途端小さな火の玉が杖の先端から放たれた。

少女は「よし!」と小さくガッツポーズをする。

「……ふっ」

だが、その威力は絶望的に無く、俺の息であっさりと消え去った。

これは、先程の広場で金髪の女たちとの騒ぎの中出そうとしていた|火の玉(ファイアーボール)なのだろう。

「$&%#&%$&!&!」

言葉にならないほど恥ずかしかった少女は赤面してしまい、両手で顔を覆い隠してその場にへたり込んだ。

「どんまい」

少女にそう声をかけると、泣き出しそうな顔をして睨む。

「私を殺すのね!? いいわ! でも絶対に忘れないからね!」

「……いや、だから俺は何もしないって」

漸く理性を取り戻したであろう少女は、きょとんとした顔で俺を見る。

「……へ? ほんと?」

こくりと俺は頷く。

「はぁ~。な~んだ、私の勘違いだったのね!」

パンパンとスカートを払い、少女は腰をあげる。
少女の表情はけろりとかわり、勘違い前の状態に戻っているようだ。

「ところで、あなたは一体何者なの? 家に住んでるモンスターなんて聞いたことないし、しかも喋って……」

少女はまた俺を奇怪な目で見る。

やれやれ、とんだ天然少女だ。

「よし分かった、俺が悪かったな。そうだな……まずは、自己紹介といこう」

改めて自身の名前と職業、そして小竜になってしまった経緯を包み隠さず少女話したーー



「そんなことがあったのね。ごめんなさい! 私てっきりモンスターだと……」

「分かってくれれば構わないさ」

少女は純粋にその目で見て聞いたことを信じてしまうタイプだったようだ。
今時、珍しい。
広場で俺を庇ってくれたことや、話を最後まで聞いてくれる。
本当に珍しい。
早とちりしてしまうところもあるが。

「でも、そんな悪い奴等がいたなんて……」

「まあ、これは俺の失態さ。ただ、こんな姿じゃあ|《しごと》殺し屋は暫く休業だな」

そう言ったが、内心は困り果てていた。
自身をこんな子竜の姿にした奴等をぶん殴ってやりたいし、
元の姿に戻してもらわないと困る。
特に金欠というわけでもなかったのがせめてもの救いだった。

「あ、あのさ! 良かったらなんだけど、私のお師匠様に会ってみない?」

「お前の師匠?」

「ええ! もしかしたらあなたを元に戻す方法、何か知っているかも。私のお師匠様だもの、きっと何かすごい解決策を言ってくれる!」

俺は不安だった。
というのは、いくら師匠と言われていても、そう言うのが少女だったからだ。
俺が軽く吹いた程度の息で消えてしまう火の玉を使う少女ーー説得力に欠ける。

「なら、会ってみようか、その師匠とやらに」

しかし、何もしないよりかはいい。
藁をもすがる思いで少女にそう言った。

「任せてよ!」

そうして、少女が言うお師匠様がいる森へ向かった。



上手く人にばれずに森に入ることが出来た。
少女の指示の元、隠れながら向かったからだ。

「そう言えば私、名前言っていなかったわ。ローサ=レイアンよ、よろしくね!」

「ああ、宜しくな」

森へ向かう途中、少女は自身のことを話していた。
黒魔導士、それがローサだ。

未だ見ぬ特効薬の発明と、黒魔術を世に広めることが彼女は使命だと言う。

「ローサ、こんな森に本当に人が住んでいるのか?」

「いるよ! 私のお師匠様、セフ婆様がね!」

「……まさかとは思うが、お前の言うセフ婆様ってのは、あの大魔導士のことか?」

その名は聞いたことがあった。

大魔導士セフ、その名を知らない者を探す方が難しい。
大魔導士の称号を持つ者は他にもいるが、セフは大陸一と言われている。
だが、大魔導士セフは世間からは既に死んでしまったと囁かれていた。

この辺境の地に大魔導士セフがいるはずがない。

俺はローサの言葉が信じられなかった。

「決まってる! セフ婆様は私の命の恩人よ! 強くて優しくて、私が1番憧れる人!」

そうローサは言うのだが、まだ信じられない。

「……証拠はあるのか?」

疑い深く、そう問う。

「ふぅ! 殺し屋って面倒くさいわね! 行けば分かるってそんなこと!」

「……まずは会ってみようか」

大陸一の魔導士と呼ばれるセフ婆。
俺は内心会いたくはなかった。
それは、セフ婆だからではない。
魔導士と名乗っているからだ。

ローサは……仕方あるまい。大丈夫だろう。

俺は過去の|暗殺(しごと)で、こっ酷く魔導士に返り討ちにされたことがある。
殺し屋にとって魔導士はいわば天敵だからだ。
ターゲットが魔導士を雇っていることもあり、もしくはターゲット自身が魔導士なんてこともある。

単なる鉄の玉程度、魔導士にとっては何ら問題はない。
全ての魔導士がそうではないが、多くの魔導士は物理防壁魔法くらいなんなく使える。

ただ、最近になって物理防壁魔法を突破出来る銃も開発された。
もちろん、俺も持ってはいるが、セフ婆ほどの大魔導にとってはまるで意味をなさない。

そうした背景があって、俺はセフ婆に会いたくなかった。


しかしそうも言っていられない。
今の俺には、隣で歩いているローサの言う大魔導に会うしか選択肢はなかった。

俺を子竜の姿に変えたルアードの元に行っても、それこそ返り討ちにされるかもしれない。

早く元の姿に戻る為、さらに森の奥へと歩みを進めて行った。
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