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第16話 黒魔導士奪還
しおりを挟む「ル、ルアード様がやられた!!」
「まさか、ルアード様がやられるなんて!」
喚き叫び、運んでいた者たちが次々に離れて行く。
二丁の拳銃を持つ殺し屋が、そんなに恐ろしいか?
モンスターに変えられたであろう人間も、互いに体を寄せ合い、俺を見てか震えている。
安心しろ。
俺は何もしない。
辺りを見回しながらローサを探す。
「聞きたいことはある」
そう言って、下半身が蛇のモンスター、ラミアの女に話しかける。
「あなたも、また、私に酷いことするの?」
だめだ。
話が通じていない。
よほど、怖い目にあったのだろう。
「何もしない。ただ、1人の黒魔導士を探していてだな」
「……黒魔導士? 分からないけど、杖を持った女の子ならあの工場の中で見たわ」
恐らく、ローサだろう。
「恩にきるよ」
「あなたは!?」
工場に行こうとしたら呼び止められた。
「殺し屋。騒ぎが収まるまで何処かに隠れていろ」
そうラミアの女に言い残し、俺は工場へ急いだ。
ドラゴンのルアードによって破壊された壁から入った。
散乱する破壊された木箱を跨ぎながら奥にあった扉を開く。
「此処で作っているのか」
そこには、白い正方形の巨大な石が幾つも置いてある。
まだ、加工前で、これがマメルの町中で見た彫刻になるとは到底思えない。
色や材質が同じことから、彫刻前の石で間違いないだろう。
小さい物でも、俺の背丈より大きい。
それが何個くらいか。
ずらりと並んでいる。
一際目立つ大きい石はこれからどんな彫刻に姿を変えるのだろう。
巨大な白い正方形の石を見上げながら進む。
……何か、音が聞こえた。
「ーー!」
また……
集中し、耳を傾ける。
「バカ殺し屋~! 早く来い~!」
とても、失礼な叫びが聞こえた。
あの声は間違いなくローサだ。
向かって行くたびに思う。
やはり俺は、大陸一の魔導士にとんでもない馬鹿な黒魔導士を押し付けられたのではないかと。
ローサの声だ。
小さい声で、誰かと話している。
誰だ?
また、闘わなければならないのか?
扉を。
ゆっくりと開いた。
「……お前は、何で此処に」
ローサの直ぐ隣に居た男。
眼鏡姿で高身長、黒い短髪。
男は、俺がローサと初めて出会った時に現れた、魔導士育成学園の人間だった。
「見違えるように成長したね。びっくりしたよ」
子竜の姿だった時に会った男だ。
何が成長しただ。
「質問に答えろ」
“バレットサイレンス”の銃口を向ける。
「おいおい! それは閉まってくれないか? 別に敵意は感じないだろう?」
「……」
目的が分からない。
何故、こんな場所に。
まさか、半獣の子を運んでいた1人の男が言っていたボスとやらか?
まだ、銃口を外さないからか、眼鏡の男ははぁっと溜め息を漏らす。
「君、言ってくれないか? 彼に」
「うん! でも、その前にこの縄を解いて?」
眼鏡の男はローサを縛っていた縄を解く。
現状の理解に頭が追いつかない。
一体、どういう状況なんだ?
「ふぅ! あぁあ! 解放感!」
「おい!」
何? といった表情で俺の方を向く。
「あ、説明ね説明!」
俺は頷く。
俺が納得出来ない内容ならば、俺はこの眼鏡の男をーー
◯
「……そうだったのか」
ローサから説明を聞いて納得した。
「そうなのよ! だから、グラス先生は私を匿ってくれていたの! 先生! ありがとね!」
「大したことじゃないよ」
そう言って、申し訳なさそうに微笑する。
俺がローサと逸れた後の話を聞いて、グラスには感謝の念しかなかった。
ローサは、人間を『フェイクモンスター』にしていた闇の組織『クリミナル』に捕まった後、俺が工場に来る前に既にいたグラスに助けられたと言う。
『クリミナル』のボスはグラスによって倒され、同じく来ていた保安官によって連行されたそうだ。
グラスは応援が来るまで、しばらくは様子を見る為に『クリミナル』のボスに変身してローサと共に居たのだが、俺が工場に向かっているのを知って騒ぎを起こしてもらおうと考えたわけだ。
要するに応援が来るまでの時間稼ぎ。
つまり、俺は利用された。
まあ、結果的にローサを助けられたから許してやる。
前々から、グラスは『クリミナル』の動向を探っていたようで、まさか、こんな近くの町に潜伏していたのは驚いたようだ。
それは俺も全く同感だ。
『クリミナル』は、技術を悪用して製造した薬によって、適当な人間を捕えモンスターに変えるという悪業を行なって来た。
それは、つい最近のことのだったようで、こうして終止符がうたれたことには、本当に良かったとグラスは言う。
ローサを救い出した後、工場内部に居た全てのモンスターに変えられた人間を救い出し、間も無く工場は閉鎖した。
そして、工場内にあった人間に戻る薬、『リターンH』をモンスターに変えられた全ての人間が飲んだ。
皆、人間に戻ったことを喜んだ。
涙する者、互いに体を抱きしめ合う者。
そして皆口を揃えてこう言う。
『ありがとう』と。
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