―海神様伝説―

あおい たまき

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四章 衝動の行く末

戸惑い

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 *何如した……どうした


 幹太の目に飛び込んできたのは、紗英の紅潮した顔、泣き出しそうな目と、困惑した眉間みけんの山……紗英の様子がおかしいことに、幹太はこの時はじめて気がついた。

「紗英……何如なんじょしたや」
 ふう、ふう、と呼吸を整えながら、やっとのことで我にかえった紗英は、しりもちをついた幹太に駆け寄る。

「ご、ごめ」
 紗英は制服が汚れるのも構わずに、幹太の側へ膝をついた。幹太の服をたたき、紗英は土埃を落としていく。

「ほんとにごめんね、かんちゃん」
 うっすらと涙が浮かぶ。
「紗英……嫌だったがいや?」
 幹太の悲しそうな声に、勢いよく首を左右に振った。嫌などと、思うはずがない。幹太が好きでたまらない。もっと、もっと一緒にいたい。


 最近ではもう体が二つあることに、違和感を覚えるほどに、ひとつになりたいと強く思う。勘違いをさせてしまったことが悲しい。涙は、はたはたと地面を濡らした。

「なして泣くっちゃ」
「わかんね」
 幹太は、泣きじゃくる紗英をそっと抱き寄せる。
「かんちゃん」
 吐息のように紗英は幹太を呼んだ。

「ん」
 心地よく低い声が、紗英の耳に響く。紗英は深呼吸をするように、息を大きく吸い込むと一思いに告げた。


「私……かんちゃんのこと、好きすぎておかしくなっちまったのかも」
「おかしくなったのは、紗英ばりでねえよ。オレもおめえに溺れてる」

 幹太は紗英を重んじたのだろう。優しい言葉が紗英の心を弾ませる……しかし、紗英は譲れなかった。こんなの絶対におかしい、首を左右に振った。

「んでも、かんちゃんは……私に噛みつきたいとなんて思わねえべ」
 紗英は幹太に、そう……告げた。
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