奥州あおば学園~戦だ!祭りだ!色恋だ!~

あおい たまき

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二章 伊達政宗

第一五話 ファーストキス

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「え」
「好きだよ、理子」
 政宗は理子を解放して起き上がり、その顔を眺める。驚いてまんまるになった瞳が、政宗を見つめていた。その表情に愛しさが込み上げる。
 政宗は、理子を引き寄せると、優しく抱き直した。理子は錯乱状態で悲鳴をあげる。


「ちょちょちょちょ、ちょっとま、って。や、やぁ、し、心臓、とまっちゃう、はなはなはな離し」
「やだ」
 理子の懇願も、こどものようにすり抜けて、政宗は言うのだ。


「目が見えなくなったら、理子のこといっぱい泣かせるだろうし、傷つけるかもしんない。それで理子とバイバイすることになったら、俺も再起不能なくらい傷つくと思う。だから理子のこと諦めようと思った。けど……無理」
 と、
「どうしようもないくらい天然で、どうしようもないくらい吃り症で、すぐに赤くなって、チョー素直で、こんな俺を想ってくれて、病気のこと知っても好きだって言ってくれる理子が大好きだ」
と、
「お前を想って傷つくならそれでもいい」
心の中にくすぶる大切な想いをひとつひとつ。


 そう告げたあとで、理子を見やる政宗は、耳まで赤い。母性をくすぐられて理子は、政宗を心底、愛らしいと想う。

「傷つけたりなんか、しないよ」
 理子は笑う。
「見えなくなったら捨ててもいいよ」
 政宗は苦笑う。


 どう伝えたら、政宗の心の痛みは和らぐのだろう。考えるより先に唇が紡ぐ音。

「例え……見えなくなったとしても、それだけでしょ」
「それだけ?」
「そうだよ、それだけ。政宗くんがそこにいてくれるなら私は……へーき」

 そうだ。理子の目に映る世界に、政宗がいてくれれば、他には何も要らない。そんなの最初から決まっていたことだ。理子は政宗を力強く見つめた。
「そんなこと言ったの……理子がはじめてだ」


 政宗は嬉しそうに微笑んで、理子の頬に優しく触れる。解放された窓から、ふっと気持ちのいい風が医務室に入ると、カーテンがなびいた。透けるレースに包まれた二人は見つめ合う。くすぐったくて理子は、目を伏せた。


「理子、目、そらさないで。俺を見て」
「む、むむむ無理……なんだかすごく、恥ずかしい」
「な、理子。俺に顔見せて。頼むよ」
 政宗は理子の頬を両手で優しく包んだ。もう逃れられない。



 いつ、その目に光を映せなくなるのか。いつ盲目になるのかわからない。いつ来るとも知れないその日に政宗は激しく怯え、病の足音に耳を塞いだ。

 そうなれば人にひどく迷惑をかけながら生きていくことになるだろう。その時の事を思えば、どんな言葉を借りても片付けられない感情の渦が、政宗を奈落まで引きずり込む。

 果たして生きる意味はあるのか。
日々笑って過ごすことを目標にしているが、ふとそんな想いに苛まれることもある。成実や片倉に囲まれているときも、ふいに感じる孤独。



 独りはいやだ。



 いつか暗闇の中に落ちるのなら光が見える今は皆と時を共に生きたい。理子と、一緒に笑いたい。目が見えなくなっても側にいたいと言ってくれた理子と。



「理子……いいか」
「え、何……」
 ふいに政宗の唇が、理子のそれと重なる。拙い、ファーストキス。理子の胸は瞬時に、壊れんばかりに叩かれた。顔はみるみる紅潮していく。


 重ね合わせた唇から伝わる互いの心。
競り上がる愛しさと激しい恥じらい。

「んっ」
 いつ、息を吸っていいのかわからずに理子は、ただ息を止めて唇の端から端まで政宗を感じた。重ね合わせて、わずかに離して息を継ぎ、またどちらからともなく口づける。



 夢中でついばむように繰り返す。政宗の熱が理子をとろけさせる。存在ごと溶けて蒸発してしまうのではないかと思う程、内側に熱が溜まっていく。


「政……宗くん、も、やっ」
 得体の知れぬ感覚に、我が身がどうなるか。そんなことすらわからない。理子は途端に怖くなって、息継ぎの合間に政宗に伝えた。政宗は理子と額をくっつけて、荒々しい呼吸を整えながら、潤む理子の瞳を見つめる。


 体が二つあることがもどかしい。繋いだ手のひらから、重なる唇から。一つになれたらいいのに。政宗は、ますます内に秘めた激しさを口づけにぶつける。



 その時だった。


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