神に愛された子

鈴木 カタル

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♛ 閑話

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『 学園側の出来事 』




とある日、ここテールレア学園の学園長と筆頭に、教師達は集まっていた。



「 どうしたもんかな... 」

「 またあの国王様のお孫様ですか… 」

「 今度入る方は、あの国王様の溺愛なさっているお孫様なのだよ… 」

飛び級で入学予定のリーンオルゴットの件だ。
数々の問題を起こした経歴のある、あの国王様のお孫様が 入学する事に決まった。他にも入学してる孫は居るのだが、その他の孫の件でも頭を悩ませているのに、そこへ溺愛されている孫が加わる事になる。そしてリーンオルゴットが受けたテストにも問題があった。


「 まさかの全問正解っすかー 」

「 あれを全問正解するなんて... 」

リーンオルゴットが受けたテスト。それは、高等部の''卒業試験''にしていた問題を出していたのだった。これも偏に、あの国王様の件があり、入学を拒否したかったのが本音。それなのに、答案には全問に丸が付く状態となり、その知識の高さに教師達も頭を抱えた。

「 やはり入学させるしかありませんよねぇ… 」

「 俺達に教える事あんの…ですか? 」

「 この...魔法陣の答案なんですが…現在魔術師団の研究所で 新しく発見した、魔法陣の変質について、の答えが...正解してます 」

「 この算術で出した問題も、完璧です...いえ、完璧過ぎます!こんな計算の仕方、見た事ありませんわ! 」

「 おいおい、それを言ったら俺の─── 」

教師達はそれぞれが出した難問の答えが書かれた答案用紙を片手に、討論から 口論まで発展している。

話し合う教師達を眺めつつ、学園長は ''どう扱うか'' を考えていた。
他の孫達は、それぞれ個性的ではあるが今の所問題ない。それに、国王の関心は1人の孫に集中しているらしい。そんな孫の扱いに、教師達含め学園長迄もが困惑している。

粗相があったらどうしよう
何かやらかしたら どう叱ればいいんだろう
そもそも叱ってもいいんだろうか
あの国王様に溺愛される孫なんて、今まで聞いたこと無い。彼は特別な様だ。

軽い噂程度の事ならば、耳に入っていた。あのお孫様の偉業の事は。

数々のスイーツを生み出し、それを広め、料理に新しい魔法を使い、それを広め。また、問題なのが、自身で作った''ポーション''の件もある。薬効の高いポーションがルーナ領から出回っているのだった。


「 人柄は良さそうみたいですよ? 」

「 あぁ、俺も聞いた。天使の様に愛らしいらしい 」

「 美形なのは、やはりあの国王様の血を受け継いでいるからなのでしょうかね 」

「 9歳にしては、こんな文章書けない...と、思いますが...書いてありますね…国王様も頭脳明晰との事ですし… 」

あの国王にして、このお孫様なのか。と、感嘆と興味と困惑の混ざる教師達。結論が出ない学園長。

「 もしも、...もしも ですが、何かあったら…学園内で揉み消す...とかは... 」

「 本人は国王様に溺愛されてんだろ?そんなの自分から報告するじゃねえのか 」

「 いっその事、教師として来てくれないかしら?色々とお話してみたい気もしますのよね 」



────バン!

机を叩く音が響き、その音の原因へと視線が集まる


「 私が担当すれば良い。何かあっても私なら、鍛えた体術もある 」

1人の女性が声を上げた。
その女性に続いて、もう1人申し出た。

「 でしたら、私の補佐をお願いします。中等部を見るのは初めてですが、元々高等部を担当してましたから、私ならば大丈夫かと思います 」

「 あぁ、それでも構わない。グダグダ話をしているのならば、こちらで面倒を見る 」


しんっと静まる教師達は、他に声を上げない。責任を負いたくないと言うのが 全員の本音なのだから。自ら申し出る事自体が、異常とも言える状態なのだ。


「 ふはっ 面白そうっすねー。俺っちも補佐の補佐しましょっかー?」

「 補佐の補佐は、最早補佐では無いだろう 」

「 そうですね。私達で大丈夫でしょう 」

「 あららーん。じゃあ何かあったら、俺っちも参加しやーす 」

若干1名 軽く見ているけれど、学園長は申し出た2名に任せる事を決める。

「 では、ソフィーさんと エヴェリーナさんに 彼を任せるとしますかな 」

「「 承ります(承る) 」」


こうしてリーンオルゴットの入学は中等部に決まり、領主への手紙と国王様への手紙を、それぞれに送る事になった。






学園長は入学式典にて、リーンオルゴット本人を見て、その愛らしい姿にホッとするのはもう少し先となる。

担当を受けた2名の教師は、彼の謙虚な自己紹介を聞くまで、眠れない夜を過ごした。




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