ゲームの悪役貴族に転生した僕は悪役らしく女を囲い、貴族の強権で好き放題したいと思います。でも、断罪は嫌なので主人公陣営からは距離を取りつつ…

リヒト

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第三章

第十七話

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 主人公不在というイレギュラー。
 どれだけ探そうとも彼の存在を見つけることは出来ず、恥を承知で他の貴族へと彼を知っているか知っていないかを聞いて回り、記録を漁っても出生記録すら出てこなかった主人公。
 
 ここまで手を尽くしてもなお主人公は影も形もなかった。
 もはや認めるしかないだろう。この世界に主人公はいない、と。

「……最悪だ」
 
 自分の思い描いていた人生設計が崩れ去ったことを理解した僕は自室で一人項垂れていた。
 僕は歴史に名を残すような人間にならず、裏で主人公を支援しながら貴族としての職務を果たし、公爵としての幸せを掴んで安らかな眠りにつくはずだったというのに。

 僕だって原作とは違うルートに進むことは承知の上だった。
 それでもなお自分に降りかかる火の手を裂け、自分の周りを守るだけの実力と智謀が己にあると自負していた。

「僕は、主人公じゃないんだぞ……ッ」

 だが、魔王を相手に人類の先頭に戦えるほどの器であるという自信を僕は持ち合わせていなかった。
 原作知識があろうとも、幼少期からのアドバンデージがあろうとも根っこのところはただの高校生でしかないのだ……僕は。貴族ですらない。

「どうする?」

 人類とて一枚岩ではない。
 そんな人類をまとめ上げて上に立つほどのカリスマもなく、時代を読み取る嗅覚も僕にはない。
 
「どうすればいい……手札は幾つ。手を伸ばせる範囲はどこまでだ?もはや僕に自由はない。初日にちょっと学校を抜けた程度で大騒ぎになるのだ。自由に手を伸ばすことは出来ない。裏の者を使おうにも限界がある。誰が、どこが優先だ。いや、そもそも魔王はいる……だろうなぁ。でなければ魔族はこうも活発に動いていないだろう。主人公の他は誰がいないだろうか。両陣営共にどこまでの戦力になれるのか……宗教問題に領土問題はどこまで……人種問題もあるのか。ここら辺の諸問題を主人公はどう片付けて人類をまとめ上げたんだ?どれだけカリスマ性がカンストしているんだよ……あぁ、クソ。何もかもが中途半端だな、僕」
 
 僕は一人でぶつぶつ独り言をつぶやきながら考えをまとめていく。

「……主人公は、誰だ?」
 
 実にくだらない言葉を僕がぽつりとこぼしたタイミングで自室の扉がノックされる。

「入って良いよ、シャルル」

「失礼、します……」

 部屋の中へと入ってきたシャルルを見て僕は思考を中断し、意識を彼女の方へと向けた。
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