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TS病

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 肉体的異性化突発性症候群、通称TS病。
 これが突然、全世界で同時に観測された突発的な肉体的異性化現象に名付けられた名前である。
 時は2025年。
 インドでさえも合計特殊出生率が2を切り、本格的に人類はいずれ少子化で滅びると言われるようになった時代において、急に世界中の男性たちが突然女性化してしまったのである。
 この突然の事態に世界中がてんやわんや。
 生理に関する情報不足で発狂する男性諸君に供給が全然足りない女性用の品々。
 世界中で混乱と動揺が広がっている。
 だが、だが、だが……だっ!
 このTS病が齎した影響の中で、最も大きな衝撃を受けているの僕に違いないっ!

「……す、すまない。その、俺も女になっちゃって」

「……ぼ、僕もでぇ」

「お、おぉう……」

 つい、昨日まで普通に男友達として楽しく会話していた二人の姿は何処へやら。
 自分の前にいるのはこれまでの僕の記憶とはまったく照合されない可愛らしい女子が二人。

「お、お前も女体化したのか」

「そ、そうなんだよなぁ……にしても、そうかぁ」

「……うぅん」

 それだけではない。
 僕が際立って仲の良かった友達二人だけではない。
 自分の周りにいるクラスメートたちもすべて、むさ苦しかった男子から誰もが目を奪われるほどの美少女へと変貌している。
 いや、これでも否だっ!
 僕のクラスどころかうちの高校の生徒たちは学年クラス関係なく自分を除いてすべてTS化し、美少女へとっ!
 何ならこれでも否っ!
 生徒たちどころか昨日までは確かに禿ていた加齢臭のキツイおっさん先生がロリ化するなど、すべての男性教員が女子化っ!
 これでは終わらないっ!事務局の人たちはもちろん、清掃や売店の人まで全員TS化っ!普段は学校に来ることのない理事長までTS化しているらしいっ!

「「……」」

「確率、おかしくない?」

「……そう、だな」

「……お前だけだもの」

「なんか急にすさまじい場近い感と疎外感を感じるのだけど」

「……い、いや!ここは男子校。お前がいても何もおかしくっ!ない、ともぉ……」

「うぅ……」

「僕以外に今ッ!この学校で男の奴がいないねんけどぉぉぉぉおおおおおおおお!!!」
 
 自分の前でもごもごと言葉を告げる友人二人の前で僕は吠える。

「どうなっているんっ!?TSするか確立って確か一万人に一人だよなっ!?間違っていないよな!?かなりの数の男性が女性になったが、それでも普通に男性はいるよなっ!二人に一人が女性化したなんていうとんでも減少ではないないよなっ!?あれ?僕ってば間違えていないよな?」

 浮かべるのは至極当然の疑問。

「なんで僕を除くうちの学校の生徒数1000人が全員TSするんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
 
 そして、不条理かつ意味不明なこの世界全体に対する咆哮であった。
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