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第7話 決戦! 女騎士対オーク!(1)
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「ミッション?」
俺がそう聞くと、ラウラさんは執務室の豪奢な机の向こうでうなずいた。
「うちのギルドは歩合制。達成したミッションの難度に応じて、報酬が支払われるの。逆に、最低限のミッションポイントを稼がないと、除名処分になってしまう。貴方たちも例外じゃないわ」
「つまりノルマってことっスね」
「ごめんね~。貴方たちは免除させてあげたかったんだけど、ギルド長の権限でもそれは無理なの」
ラウラさんが申し訳なさそうに言う。
と、隣の元カタブツ委員長が前のめりで答えた。
「いえ、無料でごはんとかお部屋を提供してもらうのは心苦しかったので、ぜひやらせてください!」
こら、余計なことを言うな。
ノルマなんて、ストレスフリーな人生の天敵だぞ。
「それで、具体的には何をすればいいんですか?」
「モンスター退治よ。最近、近郊の洞窟にモンスターが住みついてね。近くの住人に被害が出ているの」
「分かりました。でも、洞窟の場所とかは……」
「それは先輩メンバーに同行してもらうから安心して」
と、コンコンと扉をノックする音がした。
「ちょうど来たわね。入って」
扉が開き、ノックの主が入ってくる。
「わ。かっこいい人……」
と太刀川が思わず漏らす。
金色の長髪を背中で編み込んだ、凛とした顔立ちの女性だった。
背中に負ったでっかい両手剣。
白銀の胸のプレートに手甲、膝当てという出で立ち。
なのに不自然なくらい短いスカート。
ビックリするくらいテンプレな女騎士だ。
騎士さんはズンズンと大股で俺たちに近づいてくると、
「貴殿らがジュン殿、そしてタクミ殿か!」
「は、はいっ?」
声でかっ。
「お初にお目にかかる! わが名はアイギス! ラウラ殿から話は聞いているぞ! この度のモンスター退治、私が来たからには心配無用! どんな相手でも切り倒してみせよう!」
キスできそうな距離からすごい勢いで言い切られて、太刀川は「お、おっ……」と人形みたいに固まっている。
えっと、何この人?
「アイギスちゃ~ん……。あのね、この子たちは黒の書の契約者で、つまりすっごく強いから、貴方には倒すとかじゃなく、案内だけお願いしたいんだけど……」
「ご冗談を、ラウラ殿! このような普通の少女たちが伝説の黒の書の使い手なわけがないでしょう!」
「でも、こないだバッシュ君を倒したっていう事実がね……」
「あいにくこのアイギス、自分の目で見たものしか信じません! ハッハッハ!」
何がおかしいのか高笑いする女騎士。
人の話聞かない系の武人か。
これまたテンプレだな。
「貴殿らが何者かは知らぬが、私にとっては可愛い後輩! 騎士の名にかけて守ってみせよう!」
「は、はぁ……」
「特にジュン殿は私のそばから離れぬように! なにしろこの度のモンスターは、人間の女性に対して異常な執着を持つらしいからな!」
え?
なんか嫌な予感がするんだが……。
「あの、退治するモンスターって、まさか……」
おそるおそる尋ねる俺に、テンプレ女騎士はきっぱりと答えた。
「オークだ!」
おいおいおいおいおいおいおい。
※※※
ということで、洞窟に来てしまった。
薄暗く湿った岩壁に囲まれた通路を、俺たちはアイギスさんを先頭にして進んでいく。
ちなみに太刀川は先日買った中華風の武闘家の服装。
なんだかんだで気に入ったらしく、普段からその姿でいることが増えた。
俺?
描写するのもアホらしいくらい、普通の布の服です。
男キャラなんてそんなもんだよね。
「あの~、アイギスさん。この洞窟には来たことあるんスか?」
「もちろん! 見回りで何度か探索したからな!」
「オーク退治は?」
「それは初めてだな! だが問題あるまい!」
いや、問題しかないんだが……。
「星野君、さっきから浮かない顔してるけど、どうしたの?」
「いや、女騎士にオークっつったら、お前……」
「? なんなの?」
アカン、こいつそういう方面はまったく無知だったわ。
なんとかオブラートに包みながら説明せねば。
「つまりだな、薄い本によく書かれるパターンで……」
「薄い本? それって……」
太刀川がハッと目を開く。
えっ、知ってるの?
「もしかして黒の書に関係ある話? 詳しく教えて!」
「教えられるか!」
変な方向から食いついてくるんじゃねぇ!
「オォ――――クゥ! オクオク、オック!」
「どあっ?」
突然、野太い雄叫びが洞窟に響いた。
正面の暗がりから姿を現したのは、ブタ面にでっぷり肥えた腹の、これまたテンプレ的なオークだ。
「出たな、醜悪な怪物め! 私の後輩たちには指一本触れさせんぞ!」
アイギスさんが意気揚々と両手剣を構える。
あ~あ、エンカウントしちゃったよ……。
「オンオン、オンッナ! ニンゲン、ニンゲンノオンッナ! ダイ、ダイ、ダイコウブッツ!」
ブタ面はよだれを垂らしながら、嬉々として巨大な棍棒を振り上げる。
それにしても、この世界のオーク語(?)は、えらくクセが強いな。
「いざっ!」
と、アイギスさんは勢いよく斬りかかり、
「オクッ」
「きゃんっ」
ぺちこーん! と吹っ飛ばされて、気絶した。
よわっ! 予想の10倍くらい弱いな!
って呆れてる場合じゃねぇ。次の展開に進むのを防がないと。
「太刀川、今のうちだ! やっつけちまえ!」
「でも、こんな狭いところじゃ……」
通路の幅が狭すぎて、気絶したアイギスさんが太刀川の進路をふさいでいる。これじゃ攻撃できない。
――ええい、しゃーない。
あたりを見回すと、ちょうど脇道があった。
「太刀川、こっちだ! アイギスさん抱えて来い!」
「わ、わかった!」
オークが追ってくる足音を置き去りに、俺たちは逃げ出した。
まったく、何やってんだろな。
俺がそう聞くと、ラウラさんは執務室の豪奢な机の向こうでうなずいた。
「うちのギルドは歩合制。達成したミッションの難度に応じて、報酬が支払われるの。逆に、最低限のミッションポイントを稼がないと、除名処分になってしまう。貴方たちも例外じゃないわ」
「つまりノルマってことっスね」
「ごめんね~。貴方たちは免除させてあげたかったんだけど、ギルド長の権限でもそれは無理なの」
ラウラさんが申し訳なさそうに言う。
と、隣の元カタブツ委員長が前のめりで答えた。
「いえ、無料でごはんとかお部屋を提供してもらうのは心苦しかったので、ぜひやらせてください!」
こら、余計なことを言うな。
ノルマなんて、ストレスフリーな人生の天敵だぞ。
「それで、具体的には何をすればいいんですか?」
「モンスター退治よ。最近、近郊の洞窟にモンスターが住みついてね。近くの住人に被害が出ているの」
「分かりました。でも、洞窟の場所とかは……」
「それは先輩メンバーに同行してもらうから安心して」
と、コンコンと扉をノックする音がした。
「ちょうど来たわね。入って」
扉が開き、ノックの主が入ってくる。
「わ。かっこいい人……」
と太刀川が思わず漏らす。
金色の長髪を背中で編み込んだ、凛とした顔立ちの女性だった。
背中に負ったでっかい両手剣。
白銀の胸のプレートに手甲、膝当てという出で立ち。
なのに不自然なくらい短いスカート。
ビックリするくらいテンプレな女騎士だ。
騎士さんはズンズンと大股で俺たちに近づいてくると、
「貴殿らがジュン殿、そしてタクミ殿か!」
「は、はいっ?」
声でかっ。
「お初にお目にかかる! わが名はアイギス! ラウラ殿から話は聞いているぞ! この度のモンスター退治、私が来たからには心配無用! どんな相手でも切り倒してみせよう!」
キスできそうな距離からすごい勢いで言い切られて、太刀川は「お、おっ……」と人形みたいに固まっている。
えっと、何この人?
「アイギスちゃ~ん……。あのね、この子たちは黒の書の契約者で、つまりすっごく強いから、貴方には倒すとかじゃなく、案内だけお願いしたいんだけど……」
「ご冗談を、ラウラ殿! このような普通の少女たちが伝説の黒の書の使い手なわけがないでしょう!」
「でも、こないだバッシュ君を倒したっていう事実がね……」
「あいにくこのアイギス、自分の目で見たものしか信じません! ハッハッハ!」
何がおかしいのか高笑いする女騎士。
人の話聞かない系の武人か。
これまたテンプレだな。
「貴殿らが何者かは知らぬが、私にとっては可愛い後輩! 騎士の名にかけて守ってみせよう!」
「は、はぁ……」
「特にジュン殿は私のそばから離れぬように! なにしろこの度のモンスターは、人間の女性に対して異常な執着を持つらしいからな!」
え?
なんか嫌な予感がするんだが……。
「あの、退治するモンスターって、まさか……」
おそるおそる尋ねる俺に、テンプレ女騎士はきっぱりと答えた。
「オークだ!」
おいおいおいおいおいおいおい。
※※※
ということで、洞窟に来てしまった。
薄暗く湿った岩壁に囲まれた通路を、俺たちはアイギスさんを先頭にして進んでいく。
ちなみに太刀川は先日買った中華風の武闘家の服装。
なんだかんだで気に入ったらしく、普段からその姿でいることが増えた。
俺?
描写するのもアホらしいくらい、普通の布の服です。
男キャラなんてそんなもんだよね。
「あの~、アイギスさん。この洞窟には来たことあるんスか?」
「もちろん! 見回りで何度か探索したからな!」
「オーク退治は?」
「それは初めてだな! だが問題あるまい!」
いや、問題しかないんだが……。
「星野君、さっきから浮かない顔してるけど、どうしたの?」
「いや、女騎士にオークっつったら、お前……」
「? なんなの?」
アカン、こいつそういう方面はまったく無知だったわ。
なんとかオブラートに包みながら説明せねば。
「つまりだな、薄い本によく書かれるパターンで……」
「薄い本? それって……」
太刀川がハッと目を開く。
えっ、知ってるの?
「もしかして黒の書に関係ある話? 詳しく教えて!」
「教えられるか!」
変な方向から食いついてくるんじゃねぇ!
「オォ――――クゥ! オクオク、オック!」
「どあっ?」
突然、野太い雄叫びが洞窟に響いた。
正面の暗がりから姿を現したのは、ブタ面にでっぷり肥えた腹の、これまたテンプレ的なオークだ。
「出たな、醜悪な怪物め! 私の後輩たちには指一本触れさせんぞ!」
アイギスさんが意気揚々と両手剣を構える。
あ~あ、エンカウントしちゃったよ……。
「オンオン、オンッナ! ニンゲン、ニンゲンノオンッナ! ダイ、ダイ、ダイコウブッツ!」
ブタ面はよだれを垂らしながら、嬉々として巨大な棍棒を振り上げる。
それにしても、この世界のオーク語(?)は、えらくクセが強いな。
「いざっ!」
と、アイギスさんは勢いよく斬りかかり、
「オクッ」
「きゃんっ」
ぺちこーん! と吹っ飛ばされて、気絶した。
よわっ! 予想の10倍くらい弱いな!
って呆れてる場合じゃねぇ。次の展開に進むのを防がないと。
「太刀川、今のうちだ! やっつけちまえ!」
「でも、こんな狭いところじゃ……」
通路の幅が狭すぎて、気絶したアイギスさんが太刀川の進路をふさいでいる。これじゃ攻撃できない。
――ええい、しゃーない。
あたりを見回すと、ちょうど脇道があった。
「太刀川、こっちだ! アイギスさん抱えて来い!」
「わ、わかった!」
オークが追ってくる足音を置き去りに、俺たちは逃げ出した。
まったく、何やってんだろな。
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