レベル1の俺が死んだらレベル999の最強チート美少女も死ぬらしい~異世界スローライフしたい俺と、帰りたい彼女の命がけバディ生活~

古池ケロ太

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第9話 守銭奴ぶりっ子魔法少女(1)

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「みぃつけた♪」

 その女が声をかけてきたのは、俺と太刀川が図書棟でカビ臭い本たちとにらめっこしていたときだった。

「ねぇ、キミが黒の書の契約者ぁ?」

 ピンク色の髪をお下げの三つ編みにした、俺たちと同年代くらいの女だ。
 向かい合って座る俺たちの横から、机に身を乗り出すようにして顔を近づけてくる。
 口の中でサトウキビ栽培してる? ってくらい甘ったるい声。

「……どちらさん?」
「あは♪ 自己紹介が遅れてごめんねぇ。わたし、ロキシィっていうの。ギルドのメンバーで、職業ジョブは……」
「魔法使いか?」
「えぇ――っ? すっごぉ~い! なんでわかるのぉ?」

 口元をおおって大げさに驚いてみせる女。
 いや、その格好見れば誰でも分かるだろ。
 
 つばの広いとんがり帽子に、深緑のドレス風魔法衣。ウネウネして先がくるりんした木製の杖(伝われ)。
 これで「わたし、狂戦士バーサーカーです」なんて言われたら、そっちのほうがビックリするわ。

「あいにく、俺は黒の書コンビの添え物のほうだ。お目当ての強いほうは、この人ね」

 正面を指さすと、太刀川は「そういう言い方やめてよね」と口をとがらせた。
 そうは言っても、中庭クレーターの件以来、こうやって声かけてくるのは、全員お前をアイドル扱いで寄ってくるヤツらばっかりだぞ。

「あいにく、わたしの目当てはキミなのよね、タクミくん♪」
「え?」

 ロキシィとかいう女は琥珀色の目を細めて、1枚の紙を差し出してきた。

「ね、これ読んでみて?」

 紙にはメモ書きのように、1行だけ何かの文が記されている。
 少なくともラブレターじゃない。
 いや、別に期待とかしてなかったですよ?

「読めって……なんで?」
「いいからぁ♪ お願い♪」

 ええい、クネクネするな。

「ええと……『秘められし部屋の鍵、ここに記す』。これがどうした?」
「えっ?」

 と驚いた声を出したのは、なぜか一緒に紙を見ていた太刀川だった。

「なんだよ」
「星野君、なんで読めるの?」
「なんでも何も、普通に読めるだろ」
「アタシには、うにゃうにゃした絵にしか見えないんだけど……」
「え?」

 俺は改めてその文字を見返した。

 いや、そう言われれば、たしかにそうだ。
 この文字は日本語とも、図書室でさんざん目にしてきたこの世界の文字とも違う。
 まがりくねった線と円で組まれた図形のように見える。
 でも、なんでだ。
 最初から知っていたかのように読めてしまう。

 ロキシィがチェシャ猫っぽくニンマリ笑い、

「やっぱり♪ キミのスキルはホンモノみたいね」
「俺のスキル?」
「『古代文字解読』。ギルドのメンバー情報に書いてたのを見せてもらったの♪」
「あ~……」

 あったな、そういうのも。
 あまりにも出番がなさすぎて忘れてたわ。
 古代文字って、コレのことなのか。

「それでね? ひとつお願いがあるのぉ♪」

 ピンク髪の魔法使いは、両手を合わせて頬の横に沿えるおねだりスタイルで、俺の顔を見つめてくる。

「わたし、今のミッションで、ある古代遺跡を探索しててね? あらかた終わったんだけど、一つだけどうしても開かない部屋があるんだぁ」
「はぁ……」
「開ける方法は部屋の扉に書かれてるんだけどぉ、古代文字だから解読できなくってぇ……」
「それで、俺に解読してほしいってことか?」
「さっすが話が早ぁい♪ ね、お願い? そこはすっごい秘宝が眠っているってウワサなのぉ♪ 手に入ったら山分けするから、一緒についてきてぇ♪」

 目を潤ませ、俺の手をにぎにぎしてくるロキシィ。

 こりゃまた分かりやすい。
 お宝目当てのぶりっ子ちゃんってわけか。

「ちょ、ちょっと待ってください!」
「なぁにぃ、Sクラスちゃん? あなたに用は無いんだけどぉ?」
「アタシたちは今、黒の書の調査で忙しいんです。悪いけど、その遺跡とかに行ってる時間はありませんっ」
「知ってるよぉ。でも、その部屋に黒の書の秘密があるかもしれないって言ったら、どうするぅ?」
「え?」
「黒の書は古代文明の遺物だって説があるのは知ってるよね? その古代文明の遺跡に、開かずの間があるんだよ? 興味わかない?」

 太刀川は「あ……う……」と返事に詰まった。
 たしかにその説は聞いたことがある。
 ロキシィの理屈はちょっと強引だが、このまま本に埋もれてるよりは希望があるかもしれない。

「でもまぁ、調査も大事だもんね♪ それじゃ、こうしよ。Sクラスちゃんはここで調査続行。タクミくんはわたしと一緒に遺跡。それでいいよね?」
「だ、だめ! 知ってると思うけど、この人が死んだらアタシも死んじゃうの! 知らない人と危ないところに行かせるわけにはいきません!」

 お母さんかな?

「大丈夫だよお。あなたほどじゃないけど、わたしも強いの。このギルドで5人しかいないAクラスなんだから。しかも最年少♪」
 
 ロキシィはAクラスの印が記された身分証を見せてきた。

「ということで、彼はわたしが守るから安心して?」
「で、でも……」
「まだ何かあるのぉ? ……あっ、もしかしてぇ……」

 突然、俺の顔に頬を寄せてきた。
 おいおい、近い近い近い!

「彼とわたしがふたりっきりになるのが……嫌だったりして?」
「………!」

 太刀川の顔が真っ赤に染まった。
 え、何その反応? そんな顔はじめて見たんだが。

 そして元マジメ委員長は、唇を噛んだり天井を見上げたり、10種類くらい変顔を披露したあと、絞り出すように、

「あ、アタシも一緒に行きますっ……」
「へ~え? どうしてぇ?」  
「い……」
「い?」

 目をそらしながら、机の上の本をぱたんと閉じ、ひと言。
 
「息抜き、デス」
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