レベル1の俺が死んだらレベル999の最強チート美少女も死ぬらしい~異世界スローライフしたい俺と、帰りたい彼女の命がけバディ生活~

古池ケロ太

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第10話 守銭奴ぶりっ子魔法少女(2)

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 ということで、古代遺跡にやってきた。
 ロキシィいわく、ここは古代の王の墓らしい。

 ピラミッドっぽい遺構の中に入ってずいぶん歩いたが、ここまでモンスターには一匹も遭遇していない。前回の探索でロキシィが全部一人で倒してしまったんだとか。Aクラスは伊達じゃないってことか。

「あのっ、ロキシィさん」
「ロキシィでいいよぉ。同い年だし、敬語もいらないから」
「そ、それじゃ、ロキシィ……。あのね、ちょっと、くっつきすぎじゃないかな」

 はい、おっしゃるとおり。
 ピンク髪さんは、俺の腕にしがみつくように体をくっつけて歩いております。
 肘に当たる柔らかい感触がうんたらかんたら(思考停止中)
 童顔で背も低いけど、たいそう立派なものをお持ちでなんたらかんたら(錯乱中)
 
「だってぇ、タクミはわたしが守るって言ったじゃなーい♪」

 そしていつの間にか、俺も呼び捨てにされている。

「いや、もうモンスターはいないんだよね? 守るも何も………」
「うるさいなぁ~。あなたは息抜きに来たんでしょ? タクミはわたしに任せて、そのへんの石の数でも数えてたらぁ?」
「お、おい、あんまり煽るなよ……」
「タクミだって、こんなゴリラ女より、わたしに守ってもらったほうが嬉しいよねぇ?」
「ゴ……ゴリラ、女…………?」
「やぁ~ん、こわ~い! タクミぃ、ゴリラ女が怒ったゴリラみたいな顔でにらんでくるぅ~♪」
「……星野君。ちょっとその子から離れてくれる……?」

 なんだ、このストレスしかない展開は。
 Aクラス女とSクラス女が、俺をはさんで戦争をはじめようとしている。
 死ぬのか? 俺は今ここで死ぬのか? この墓は俺の墓になるのか?
 
「あ、あ、あっ! 見ろ! あれが例の扉なんじゃないか?」

 天の助けか。広い通路の突き当たりに、石の扉があった。
 話よ、逸れろ!
 
「あ、そうそうコレコレ~♪ それじゃあさっそく、解読お願い♪」

 ようやくロキシィから解放されて、扉の前に出る。
 よかった、まだ生きられるんだ………。

 何百年も時を重ねていそうな重厚な扉には、さっきの図形のような文字が何行かにわたって記されていた。

「ええと……『秘められし部屋の鍵、ここに記す。次の呪文を読み上げよ』だと」
「きゃー! 思ったとおり! さぁ、読んで読んで読んで、読んで♪」

 飲み会のコールみたいなノリでパンパン手を叩くロキシィ。
 俺はしぶしぶ続きを読み上げた。

「『エルド・ナヴィア・ゼルカム・ラティアーナ』」

 ゴゴゴゴゴゴ……

 石の扉がこちらに向かって開き始めた。

「きゃーっ! やったやったぁ! お宝の部屋、オープ――ン!」

 ロキシィは俺をどーん! と押しのけて、まだ開きかけの扉の中に体をねじ込んだ。

 おいおい……分かりやすすぎるだろ。

「キャ――ッ! キャ――ッ! すごいすごい! 信じられない! 見てこのお宝の山っ!」

 続いて入った扉の先は、学校の教室くらいの広さの石造りの部屋だった。
 キンキラの壺、宝石がちりばめられた冠、見たこともない文様のついた宝箱……。
 とにかく金銀財宝が、部屋いっぱいにこれでもかと敷き詰められている。

「おお……すげぇな」
「でしょでしょ! これだけあれば一生遊んで暮らせるわ!」
「それで、黒の書の手がかりはどこなの?」
「ハァ? そんなもん、自分で探せばァ? あっ、言っとくけどわたしのお宝には指一本触んないでよね!」
「……星野君。この子、アレしていいかな」

 太刀川は据わった目でグッと拳を握った。
 アレが何かは知らないけど、やめてください。

「お、なんだこのでかい箱は」

 部屋の中央に、細長い石の箱がどっしりと構えていた。

「このお墓に埋葬されてる王の棺でしょ! たいしたお金にならなさそうだし、後回し後回し!」

 たしかにその棺には金属の装飾ひとつなく、地味な石材で作られている。
  ロキシィは目もくれず、せっせと壁際の宝箱をひっくり返していく。

 そのときだ。
 ズズズズ……と、異様な音が棺から響いた。

「……?」

 気のせいか――いや、違う。

 棺のフタが少しずつずれてゆく。
 そしてその隙間から、黒いもやのようなものが、じわりと立ち昇ってきた。
 その煙は濃さを増し、天井近くまで広がっていく。

 俺も太刀川も、息をのんだまま動けなかった。

 もやが渦巻き、やがて一体の人影をかたどる。
 その手の爪が鋭く冷たく光を放ち――無防備に宝箱をあさるロキシィの背に向けられた。

「ヴォアアアアアアアア!!」

 咆哮とともに、人影が襲いかかった。

「あぶねぇ!」「えっ?」

 反射的にロキシィに飛びついて、そのまま床に倒れ込んだ。
 間一髪、黒い影が風を巻いて、俺たちの頭上を吹き過ぎた。

「……な、何こいつ!?」

 天井を見上げると、全長5メートルはありそうなバケモノが黒い瘴気をまとい浮かんでいた。

「――我が眠りを妨げしは、汝らであるかるかるかるか」
「わっ、しゃべった!」

  エコーみたいなぼやけた声。
  その姿は、漆黒の布きれで身を覆うガイコツだ。
  頭に円筒形の王冠みたいなのをかぶってるのを見ると――

「この墓の王様の亡霊ってとこか……!」

 ぽっかり空いた眼窩に青白い炎がやどり、俺たちを見下ろしてきた。

「王の墓所は神聖なりなりなりなり。汚すものには死を死を死を死を」

 突き刺すような冷気と、明確な殺意。
 やっべーな、こりゃ。

「亡霊だか王様だか知らないけど……襲ってくるなら容赦しないから!」

 太刀川がジャンプ一番、空中の亡霊に向かって、飛び蹴りを放つ。

 ――が、必殺の蹴りはスカッと空を切った。

「なっ……!?」

 外したんじゃない。すり抜けたんだ。

「ばーか! ゴースト系に物理攻撃が効くわけないでしょ! ここはこの天才魔法使い・ロキシィちゃんに任せなさいよ!」

 ぶりっ子魔法使いは、本性出しまくりの声で吠えると、手にした杖を槍のように相手に向けて構えた。
 杖の先端に赤い光が集約していく。

「行っくわよォ――!」
 
 天井から亡霊が襲いかかってくる。
 それを迎え撃つように、

「クリムゾン・スクィーズ!」

 ドォッ!
 と、杖先から螺旋状の爆炎が放たれた。

 発射の反動でロキシィ自身の体が一瞬後方へ弾けるほどの凄まじい衝撃。

 巨大な火炎の渦は、轟音とともに亡霊へと襲いかかると、圧倒的な熱量でその巨体を呑み込んだ。
 瞬く間に天井と壁までもが灼熱の業火で埋め尽くされる。

「うおっ!」

 あまりの光と熱に、思わず腕を上げて顔をかばう。
 距離をとっていたはずなのに、肌が焦げそうなほどの熱波が俺の頬を容赦なく叩いた。

 す、すげぇ……これがAクラスの魔法かよ。

「ヴ……ヴァアアアアアアア!」

 悲鳴を上げてのたうつ亡霊。
 黒布は焼け落ち、体の半分近くが溶けている。
 
 効いてる!

「トドメだ、やっちまえロキシィ!」
「言われなくたって!」

 ロキシィは息まいて再び杖を構え――ハッとその顔が強張った。
 杖を構えたまま、蒼白な顔でその場に立ち尽くす。

「どうした?」
「だ、ダメ……できない……!」
「は?」
「あいつ……わたしのお宝を持ってる……!」

 ロキシィが震える指で示す先。
 亡霊の半透明の体内に、ネックレスやら指輪やらがあちこち埋まっていた。
 浮上したときに、床にあった宝物を巻き込んだんだろう。

「………だから?」
「だからァ? このまま攻撃したら、お宝ごと燃えちゃうじゃないのよ!」

 おまっ……。

「アホかぁ! そんなん言ってる場合じゃねーだろ!」
「言ってる場合よ! 何のためにこんなホコリ臭いとこに来たと思ってんのよ!」
「殺されたら元も子もねーだろ! アイツにはお前の魔法しか効かねーんだぞ!」
「あんたたち、黒の書の使い手サマなんでしょ! 自力でなんとかしなさいよ!」
「2人とも上見て上っ!」

 太刀川の声に顔を上げる――と。

「ヴォアアアアア!」
「ひきゃあっ!」「どあっ!」

 亡霊の爪が再び俺たちの頭をかすめた。
 ダメだ、言い合ってる場合じゃねぇ。

「おい、風の魔法かなんかで宝物だけ吹き飛ばせねぇのか!?」
「ロキシィちゃんは炎系魔法専門なのッ!」

 ぬおおっ、ストレス……!

「そ、そうだわ! 今のうちに残りのお宝を回収しとけば、最小限の被害で済むはず!」

 守銭奴魔法使いが、コスいアイデアを口にする。
 途端、床に散らばっていた大事な大事な財宝が、磁石に吸い寄せられるごとく、亡霊の体内に吸い込まれていった。

「ええっ? ちょ、ちょっと待って待って? やめてぇ!」
「欲深き者よ者よ者よ者よ……これで、攻撃できまいまいまいまい……」
「いやぁぁぁぁぁぁぁ――――っ!」

 亡霊に煩悩を見透かされてんじゃねーよ………。
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