レベル1の俺が死んだらレベル999の最強チート美少女も死ぬらしい~異世界スローライフしたい俺と、帰りたい彼女の命がけバディ生活~

古池ケロ太

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第21話 俺とメイドの監禁生活

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 泥みたいな眠りから、意識がゆっくり浮かび上がる。

 うっすらとまぶたを開けると、灰色の天井が目に入った。
 首をめぐらせて、ぼんやりと周囲を見回す。

 無愛想な石造りの四角い部屋だ。
 家具は、机と椅子が一つずつ。
 俺が寝かされていた寝台は、木枠に薄くて硬いマットが一枚。毛布も最低限だ。

「……なんだ、ここ」

 体を起こそうとして、ふと気づいた。
 貫かれたはずの脚が痛くない。
 見れば、きれいさっぱり傷が消えていた。

(治ってる……? あんな大ケガが……)

「お目覚めですか」
「うおっ!?」

 至近距離からの声に、心臓が止まりかけた。

 ベッド脇に、女が立っていた。
 それも、エプロン姿のメイドさんだ。
 年齢は20歳過ぎくらいだろうか。
 黒髪のボブカットの下で、これまた黒い切れ長の瞳が、こちらを射抜くように見下ろしていた。

「まずは生存、おめでとうございます。外傷は治癒術師ヒーラーに治療させました。しぶとく生き延びた今のお気持ちはいかがですか?」

 ……なんだ、このトゲトゲしい口ぶりのメイドは?

「あんた、誰だ……?」
「王家直属ギルド監査局のリンと申します。貴方の身の回りの世話と、監視を仰せつかっております」
「王家? 監視? え、どういうこと?」

 リンと名乗ったメイドは、長いまつ毛を伏せてため息をついた。

「では、ド低脳の貴方にも理解できるよう、順を追って説明いたしますね」
「……おい」
「ギルド監査局は、あなたたちがギルドに加入して以来、ずっと黒の書を危険視してきました。王家の管理下に置かねば、いつか大きな災厄を招く――そう再三、警告したにも関わらず、貴方たちのギルド長はまともに取り合いませんでした」

 監査官……ああ、ラピダス村に行く前にラウラさんに詰め寄ってた、あの小太りのおっさんか。

「そしてこの度、ラピダス村で黒の書が暴走。村が半壊する事態に至り、ついに王家は貴方たち黒の書の契約者を拘束する決断を下しました」
「なんだとぉ……?」

 契約者ってことは、俺と、太刀川もか?

「いや、待てよ。あの時、俺たちだって殺されかけたんだぞ。他にどうしろってんだよ」
「言い訳ですね。無関係な人々を巻き込んだ理由にはなりません」
「くっ……」

 言いたいことは山ほどある。
 が、それより何より確認しなきゃいけないことがあった。

「村は……ラピダス村の人たちは、無事なのか?」
「奇跡的に死者は出ませんでした。アイギスという騎士が住民を避難させるよう指示したのが、奏功したようです」

 心の奥底から、安堵の息が漏れた。

「そっか……アイギスさんが……よかった……」
「変な人ですね。自分で村を壊しておいて、住人の心配ですか」

 うるせー、俺だってやりたくてやったわけじゃねぇんだよ。

「それで、俺の他の仲間は? どうなったんだ?」

 太刀川は、俺がこうして無事でいるからには大丈夫だろう。
 けど、ロキシィは腹を刺されたんだぞ。ほっといたら致命傷だ。

「その質問に答える義務はありません」
「……あ~、そうですか」

 俺は鼻息を吹かしてベッドから立ち上がった。

「どちらへ?」
「あいつらのところに決まってんだろ。教えてくれねーんなら、自分の足で探しに行くだけだ」

 メイドの脇をすり抜けようとした、そのときだ。
 ヒュン、と風を切る音とともに、目の前でピタリと何かが止まった。

「どあっ?」

 リンがアイスピック――この世界で言うと切り通しか?
 とにかく先の尖った針を俺の鼻先に突きつけていた。

「言ったでしょう、私の仕事は貴方の監視だと。裁判までは、ここから一歩も出られないと思ってください」
「裁判だぁ?」
「ええ、貴方の罪状を裁くための。ただ、貴方のような危険人物がまともな裁判を受けられると思わないことです。有罪前提で、あとは殺処分されるのを待つのみでしょう」
「さ、殺処分!?」

 野良犬じゃねーんだぞ、おい!

「待て待て、俺のどこが危険人物だよ! スローライフと盆栽を愛するキュートでコミカルな男子高校生ですよ!」
「ちょっと何を言っているのか分かりません。その舌、刺して黙らせてあげましょうか」
「猟奇! 猟奇的すぎる!」

 こりゃヤバい、と部屋の中を見回す。
 部屋の奥に一つだけ、陽光の射し込む窓があった。

(しゃーねぇ。こうなったら隙を見て、あそこから――)

「もし窓から脱出などと考えているなら、やめておいた方がいいですよ、浅知恵のおサルさん」
「……」

 見透かしたように言い放つと、リンは俺の横を通り過ぎ、自ら窓を開け放った。
 手招きされるまま、窓の外を覗いてみる。
 途端、足がすくんだ。

「うおっ? た、高ぁっ!」
 
 はるか眼下に、箱庭みたいな街並みが見える。
 赤い屋根の家々はミニチュアかってくらいに小さくて、市街地を囲む巨大な城壁も、俺の足元よりずっと低い位置にある。

 俺はどうやら、高さ100メートル以上はある、石造りの塔の上にいるらしい。

「眺めがいいでしょう? 罪を犯した王族や上級貴族のための特別な牢獄ですからね」
「俺は王族扱いか?」
「その貧乏くさい顔でよく言いますね」
「いやもう、さっきからアンタさぁ……」
「貴方のような危険人物を閉じ込めるには、これくらいの施設が必要だということです」

 たしかに、この高さじゃ逃げようがないし、鳥でもなけりゃ助けに来れない。
 しかも見たところ、塔への出入り口は1箇所だけ。カンペキな牢獄だ。

「ちなみに、貴方がここにいることは、ギルド側の誰も知りません。無駄な希望は捨てて、大人しく処刑を待ってください」

 冷血メイドは扉の前に戻ると、そのまま彫像のように動きを止め、監視モードに入った。

 ……こりゃ本気でヤバいことになったな。

 黒の書は手元にない。当たり前だが回収されたんだろう。
 となれば、自力で脱出は不可能。
 誰かに助けに来てもらうしかない――が、この状況でどうやって自分の居場所を伝えればいい?

(異世界にもGPS欲しいわ、マジで……)
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