23 / 49
第23話 いざ反撃!
しおりを挟む
「ラウラさ~~んっ!」
監査局の別室に入った途端、中にいた魔法衣の少女・ロキシィさんが涙ながらにギルド長に抱きつきました。
「遅くなってごめんね、ロキシィちゃん。大変な目に遭ったわね」
「うえぇ~、痛かったよぉ、怖かったよぉ~」
「よしよし。ケガは大丈夫?」
「それが聞いてよぉ~……。監査局のヤツら、わたしたちのことは治療しないとか言ってさぁ~。わたし、大枚はたいてポーション買うハメになったんだからぁ~~」
「はいはい、それは経費で落としてあげる。――アイギスちゃんもありがとう。貴方のおかげで村の人は助かったそうね」
「い、いえっ。騎士として当然の働きをしたまでです!」
アイギスさんは直立不動で答えました。
彼女もケガをしていたそうですが、ロキシィさんのポーションで治療できたのでしょう。
「それよりラウラさん、タクミとジュンがぁ~」
「心配しないで。あの子たちは必ず取り戻すから」
「しかし、二人がどこに捕まっているかも分からないのですよ。黒の書も奪われてしまいましたし……」
「いえ」
と、私はローブの隙間から一冊の本を取り出しました。
漆黒の表紙に古代文字が描かれた、あの本です。
「黒の書なら、ここにあります」
「「……は?」」
ロキシィさんとアイギスさんがポカンと口を開け放ちます。
あっけにとられる、とはこのことでしょうか。
少しだけ気持ちがいいですね。
「この建物に入ったついでに、用意してきた偽物とすり替えてきました」
「すり替えたって……ど、どこにあったの?」
「それはまぁ、秘密ということで。今ここに本物があるというだけで十分でしょう」
「ヤン君、さっすがぁ~! 手クセの悪さは世界一ね!」
ギルド長が満面の笑みで手を叩きます。
それ、褒めてますか?
「ただ、置いてきた本が偽物だとバレるのは時間の問題です。それまでにジュンさんとタクミさんを助けなければ」
「でも、実際どこにいるか分からないことにはねぇ………。ヤン君、思い当たるところはある?」
「ジュンさんの居場所なら」
私は黒の書を懐に戻し、静かに告げました。
「この国において、レベル999の人間を拘束できる場所など、一つしかありませんから」
「ああ……なるほど」
さすがギルド長、すぐに察したようです。
「え? それってどこなの? ヤンさん……わっ?」
ギルド長は突然、ロキシィさん、そしてアイギスさんの肩に手を回し、自分の方に引き寄せました。
「二人とも、病み上がりところ悪いけど、もうひと働きしてもらうわよ」
「え、えっ?」
ギルド長は鼻息荒く、獰猛に笑いました。
この人の秘書を務める私には分かります。
これは、楽しんでいます。
「見てなさいよ、タヌキ爺! 今に吠え面かかせてやるから!」
監査局の別室に入った途端、中にいた魔法衣の少女・ロキシィさんが涙ながらにギルド長に抱きつきました。
「遅くなってごめんね、ロキシィちゃん。大変な目に遭ったわね」
「うえぇ~、痛かったよぉ、怖かったよぉ~」
「よしよし。ケガは大丈夫?」
「それが聞いてよぉ~……。監査局のヤツら、わたしたちのことは治療しないとか言ってさぁ~。わたし、大枚はたいてポーション買うハメになったんだからぁ~~」
「はいはい、それは経費で落としてあげる。――アイギスちゃんもありがとう。貴方のおかげで村の人は助かったそうね」
「い、いえっ。騎士として当然の働きをしたまでです!」
アイギスさんは直立不動で答えました。
彼女もケガをしていたそうですが、ロキシィさんのポーションで治療できたのでしょう。
「それよりラウラさん、タクミとジュンがぁ~」
「心配しないで。あの子たちは必ず取り戻すから」
「しかし、二人がどこに捕まっているかも分からないのですよ。黒の書も奪われてしまいましたし……」
「いえ」
と、私はローブの隙間から一冊の本を取り出しました。
漆黒の表紙に古代文字が描かれた、あの本です。
「黒の書なら、ここにあります」
「「……は?」」
ロキシィさんとアイギスさんがポカンと口を開け放ちます。
あっけにとられる、とはこのことでしょうか。
少しだけ気持ちがいいですね。
「この建物に入ったついでに、用意してきた偽物とすり替えてきました」
「すり替えたって……ど、どこにあったの?」
「それはまぁ、秘密ということで。今ここに本物があるというだけで十分でしょう」
「ヤン君、さっすがぁ~! 手クセの悪さは世界一ね!」
ギルド長が満面の笑みで手を叩きます。
それ、褒めてますか?
「ただ、置いてきた本が偽物だとバレるのは時間の問題です。それまでにジュンさんとタクミさんを助けなければ」
「でも、実際どこにいるか分からないことにはねぇ………。ヤン君、思い当たるところはある?」
「ジュンさんの居場所なら」
私は黒の書を懐に戻し、静かに告げました。
「この国において、レベル999の人間を拘束できる場所など、一つしかありませんから」
「ああ……なるほど」
さすがギルド長、すぐに察したようです。
「え? それってどこなの? ヤンさん……わっ?」
ギルド長は突然、ロキシィさん、そしてアイギスさんの肩に手を回し、自分の方に引き寄せました。
「二人とも、病み上がりところ悪いけど、もうひと働きしてもらうわよ」
「え、えっ?」
ギルド長は鼻息荒く、獰猛に笑いました。
この人の秘書を務める私には分かります。
これは、楽しんでいます。
「見てなさいよ、タヌキ爺! 今に吠え面かかせてやるから!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる