レベル1の俺が死んだらレベル999の最強チート美少女も死ぬらしい~異世界スローライフしたい俺と、帰りたい彼女の命がけバディ生活~

古池ケロ太

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第35話 新たな一歩

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 翌朝。

 目を覚ますと、すぐ隣で太刀川が静かな寝息を立てていた。

 昨日はあたりがすっかり暗くなり、さすがに出発はできず、仕方なく、森の中にぽつんと建っていた狩猟用らしき無人の小屋で夜を明かすことにしたのだった。

 俺も太刀川も疲れ切っていて、小屋の中にベッドを見つけた途端、まるで糸が切れたように倒れ込み、そのまま眠ってしまった。

 というわけで何もなかったのだが、それにしても、これはだいぶスゴいシチュエーションじゃないか?

 顔を少し動かせば触れてしまいそうな距離に、太刀川の寝顔がある。

 戦っているときの鋭さは微塵もなく、その顔は、信じられないほど無防備だった。

 まつ毛は長く、肌は透けるように白い。小さな唇が微かに動き、整った鼻先がすうすうと規則的な呼吸を刻んでいる。

 こっちの世界の住人たちが、よくコイツを「可愛い」と評していたが、正直ピンと来なかった。
 だが今は――少しだけ分かる気がする。

 ……って、おいおい、俺よ。

 なにを朝っぱらからときめいてんだ?
 まさか、赤面してたりしてないだろうな?

「ん……」

 太刀川の唇から、吐息まじりの声が漏れる。
 思わず顔をそらした。

 おい、やめろ、俺の心臓。勝手に高鳴るな。
 こいつが目覚めたら、何話せばいいか分からなくなるだろうが。

「う~ん……」

 太刀川が寝返りを打ち、気持ちよさそうに伸びをする。
 その伸びた腕が、ベッドの脇の壁に軽く触れた。

 バガァッ!

 轟音が響き、小屋の壁が大穴を開けて崩れ落ちた。

「……」
「ん、あれ……?」

 太刀川が寝ぼけ眼でゆっくりと起き上がる。
 そして俺と目が合うと、途端に頬を赤く染め、

「お、おはよう……」

 可憐な乙女の顔でそう言った。

「あ、あはは……な、なんか、一緒に寝ちゃった、ね……」
「……」
「ア、アタシ、変なことしなかったかな? 寝相悪かったらゴメンね」
「……」
「えっと……やだ、どうしよ。なに話したらいいか分かんないや」
「……」
「……? どうしたの? 星野君。顔が真っ青だけど」 
「いや、何でもない」

 お前はラブコメブレイカーか?

 今の一撃が直撃してたら、確実に俺は死んでたし、魂の鎖のせいで、お前も道連れになってたぞ。

「明日からは絶対離れて寝ような……」
「えっ!? なになに、アタシなんかしちゃった? どういうことー?」


※※※


 小屋を出て森を抜けると、朝焼けに染まった草原がどこまでも広がっていた。
 異世界に初めて来たときに見た、あの光景と同じだ。

 地図を広げて確かめると、目指す魔導図書館は王都の東――遥か遠くにあった。
 しかも。

「これ、島じゃねぇか?」 
「ホントだ。海を渡らないと行けないんだね……」

 図書館は、今いる大陸から少し離れた、小さな島の中心にあった。

 おいおい、ラウラさん。そういう大事なことは、先に手紙に書いといてくれよ。
 絆がどうとか言ってる場合じゃないだろ……。

「ってことは船か。まずは港を探して……でも、この地図だとそこまで行くのも結構遠そうだな……」

 俺が渋い顔をしていると、太刀川が何かを思いついたように、ぱっと声を弾ませた。

「そうだ、いいこと思いついた!」
 「……ほう?」 
「飛行機に乗ればいいんだよ! 近くに空港があれば、一気に飛んでいけるでしょ!」

 俺はこれでもかというほど深いため息をついた。

「一瞬でもお前のアイデアに期待した俺の脳みそを、電子レンジで煮詰めてやりたい」
 「な、なんでよ!」

 図書館がある東の方角へと顔を向ける。
 昇ったばかりの太陽が、まぶしく空を染めていた。

 道のりは遠く、険しい。
 海を渡らなきゃいけないし。
 王家の追っ手からは逃げなきゃいけないし。
 キンダーガルテンもまた、黒の書を狙ってくるだろう。
 しかも、相棒は筋金入りの異世界オンチときた。

「前途多難だな」 
「う……だ、大丈夫かな……」

 不安げな太刀川の顔。
 それを見ていたら、なぜか急におかしくなって、肩の力が抜けた。
 これがラウラさんの言ってた、絆ってやつなのかね。

「ま、なんとかなるさ。約束しただろ?」 
「え……?」

 俺は笑って、あの日と同じ言葉をもう一度口にした。

「帰る方法が見つかるまでは、つきあってやる、って」

 太刀川は目を丸くし、それからふっと優しく笑った。

「……だね。頼りにしてる」

 そして、言った。
 あの時と同じように、イケメンな笑顔で。

「そのかわり――星野君は、アタシが絶対に守るから」

 俺たちは顔を見合わせ、笑い合った。

 一陣の風が草原を渡り、柔らかな草の波が揺れる。
 朝露がキラキラと光を弾き、俺たちを東へといざなう。
 まるで道しるべのようなその流れに向かって――

「ほら、行こうぜ」
「うん!」

 俺たちは、新たな一歩を踏み出した。





――――――――――
【あとがき】
 ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

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