レベル1の俺が死んだらレベル999の最強チート美少女も死ぬらしい~異世界スローライフしたい俺と、帰りたい彼女の命がけバディ生活~

古池ケロ太

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第36話 本物の証明(1)

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 拝啓、お父さん、お母さん。

 お元気ですか。

 俺はなぜか、まだクラスメイトの女子・Tさんと一緒に異世界にいます。
 まぁ、クラスメイトっていうよりは、もう少しだけ深い関係になった……ような、なってないような。そんな今日このごろです。

 俺たちは、黒の書の呪いを解くため、魔導図書館とかいう場所に向かうことになりました。
 ところが図書館はアホみたいに遠くて、ずっと東へ進んだ先の港町から海を渡って、島まで行かなきゃいけないそうです。
 スローライフを目指してたのに、何で俺はこんな長編RPGみたいな旅をしてるんでしょうね。

 ……まぁ、Tさんのために、もう少しだけ頑張ってみますけど。
 
 ではまた。

※※※

 というわけで、王都を出てから最初の村にたどり着いた。
 草原を貫く川に沿って、赤い屋根の家々がぽつりぽつりと並び、畑がのどかに広がっている。典型的な田舎の農村風景だ。
 
「それで、この村で何するの? 星野君」

 隣の黒髪ポニーテール少女、太刀川たちかわ じゅんが尋ねてくる。
 いつものチャイナドレス風の武闘着じゃなく、生成りのブラウスに色あせた麻のベスト、カーキの膝丈スカート――どこにでもいそうな普通の町娘の出で立ちだ。
 俺たちがお尋ね者だとバレないようにと、ヤンさんが気を利かせて用意してくれたのだ。

「まずは馬を調達だ。車も電車もない世界で徒歩オンリーは無理すぎる」
「え。星野君、馬、乗れるの?」
「おう、任せろ。ラノベで乗り方はバッチリマスター済みだ」
「……ラノベ……で?」
「なんだその顔は? 『異世界スローライフはまず乗馬から! ~姫騎士と始める馬暮らし~』にウソが書いてあるとでも?」
「いや、ウソとかじゃなくて……。もう不安しかない……」

 失礼なヤツだ。
 ラノベには人生のすべてが詰まってるんだぞ。

 そんなやり取りをしていると、近くから馬のいななきが聞こえた。
 見ると、村の入口すぐの小さな厩舎に数頭の馬と荷台が置かれている。

「ほら見ろ、さっそく見つかった」
「何がほら見ろなのよ……。え、ちょっと、勝手に借りる気? 絶対ダメだよ」
「分かってるって。とにかく持ち主を探そうぜ」

 幸い、ヤンさんからは結構な額のお金を預かっている。
 馬を借りるくらいは問題ないはずだ。

「にしても、この村、やけに静かだな……」
「たしかに……外に誰もいないね」

 真っ昼間だってのに、通りには人っ子ひとり見当たらない。
 民家の煙突から煙が出てるところを見ると、家の中にはいるみたいだが……
 村人全員インドア派なのか?

 ジャリッ。

 背後で小石が踏まれる音がした。
 振り返った瞬間。

「このぉおおっ!」

 ガツンッ!

「おぐぇらぁっ!?」

 脳天に強烈な衝撃が来た。

 文字通り目から火花が散って、視界がチカチカと弾ける。
 悶絶してうずくまる俺の頭上から、甲高い怒鳴り声が落ちてきた。

「このヤロー! 今度はオイラんちの馬を盗るつもりかよ! 黒の書の契約者だからって、好き勝手すんじゃねー!」
「な、な……なんっ……?」

 涙目で見上げた先にいたのは、十歳くらいの男の子だった。
 こげ茶色のクセっ毛に、同じく茶色の強気そうな瞳。 
 手にした棒切れは、怒りのためか、ふるふると震えていた。

「い、いったぁ……え、なに、子供?」

 太刀川が頭を押さえてよろよろと立ち上がる。
 こいつは殴られてないが、黒の書の呪いで俺とダメージを共有しているせいで、とばっちりを食らったのだ。なんか、すまん……

「お、おい待てガキんちょ。何を勘違いしてんのか知らんけど、俺たちは馬泥棒じゃないぞ」
「うそつけ! 隣の家の牛も向かいのニワトリも、ブン盗っていっただろ!」
「はぁ?」
「……ねぇ、キミ。落ち着いて話を聞かせてくれるかな?」
「うるせー! いいから出てけ! この悪人ども!」
 
 ガキは怒り心頭の様子で、とりつく島もない。
 太刀川と顔を見合わせて困っていると、少年の背後から焦った様子の女性が駆けてきた。

「す、すみません、旅のお方! 息子が大変なことを!」

 ガキんちょと同じ、茶色の髪と目のおばさんだ。

「コーディ! あなたも謝りなさい! この人たちは契約者じゃないわよ!」
「か、母ちゃん……」

 ぺこぺこと頭を下げ、ガキんちょの頭を押さえつける。

「えっと……どういうこと、星野君?」
「俺に聞くなよ……」

 俺たちはもう一度、顔を見合わせた。



※※※

 というわけで、謝り倒すおばさんに無理やり引っ張られるようにして、家の中にお邪魔した。

 なんかヌメヌメした塗り薬(薬草らしい)を頭のてっぺんに塗ってもらうと、なんとか痛みはひいた。

 ほとんど物のない質素な、というか寂しい家の中は親子二人しかいないようだった。

「ごめんよ、兄ちゃん……オイラ、兄ちゃんたちが黒の書の契約者かと思って……」

 少年――コーディはしゅんとして肩を落とし、小さくなって謝ってきた。
 いや、もういいんだけどさ……。

「ねぇ、コーディ君。よかったら、事情を話してくれない?」

 太刀川が穏やかに問いかけると、コーディの母親が気まずそうに視線を落として代わりに答えた。

「黒の書というのは、契約した者の力を格段に引き上げると言われる伝説のアイテムです。ご存知でしょうか?」
「あ、えっと、まぁ……少しは」

 俺は思わずテーブルに置かれたナップザックを横目で見た。
 知ってるも何も、実物がこの中にあるわけだが。

「その黒の書と契約したという者が最近現れて……」
「あ、それってアタシたちのこと……もがっ?」

 俺は慌てて太刀川の口をふさいだ。

(な、何よ?)
(バカ、だまってろ。ラウラさんの手紙、忘れたのか? 王家の追手にバレたら面倒くさいことになるって)
(あ、そっか……ごめん)

 もちろん太刀川なら追手なんぞ余裕で蹴散らせるだろうが、そしたらもっと大人数で追われるだけだ。下手に波風立てないほうがいい。

「どうしました?」
「いえいえ、なんでもないっス。で、その契約者がどうかしたんスか?」
「はい。数日前に、この村に現れたのです」
「「へ?」」

 数日前?
 俺たち、さっき着いたばっかりなんですけど?

「その契約者たち――男女の二人組ですが……黒の書の力を使って、村の作物を奪ったり、家畜を勝手に取っていったりと、とにかく好き放題で……もちろん、村の者も抵抗したのですが、誰もかなわず、なされるがままなのです」
「はぁ……」

 沈んだ声で語る母親に、俺と太刀川は呆けた相槌を打つしかない。

 コーディは唇を噛み、小さな拳を握りしめた。

「村のみんなは怖がって家から出られなくなっちまった。このままだと村は全部取られちまう。母ちゃんが一生懸命育てた野菜も、全部……だから、オイラがやっつけてやろうと思って……」
「コーディ……」

 母親は涙目で、怒りに震える息子を抱きしめた。

「星野君、これって……」
「ああ……」

 俺たちのニセモノが現れた――ってことか?

 と、そこへ。

「オラァ! 田舎者ども! 出てこいやぁ!」

 家の外から、乱暴なダミ声が響いた。

「とっとと出迎えろ! 黒の書の契約者サマのお出ましだぞォ!」
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